第10話 尋問、そして連れ去り
森の奥深くで…
「起きたか、委員長」
「!?」
あの闘いから気を失っていた委員長が目を覚ます。
「ステラが助けてくれた。さあ、みんなに奪ったジョブを返せ」
「くっ…」
委員長は魔力縄で手を拘束され、ステラに「反魔術領域」をかけられている。
あたりには、五十嵐含む五人と俺、ステラがいる。
「反魔術領域」とは、一定時間、その領域にいるすべてのものが魔法を使うことができないというものだ。
「委員長の今のレベルは…?」
【推定ですが、50くらいかと。
「心は…痛まなかったのか?」
「…」
「何か言えよくそ野郎!」
五十嵐が持っている銃で委員長を撃ち殺しそうになるも、ステラがそれを遮り、五十嵐は舌打ちする。
「委員長…なぁ?俺、あんたのこと信じてたんだぜ…」
「ひどいよ…私たちのことを操ってたなんて…」
斎藤と深山も言う。それでも委員長は何も言わない。
「…殺して…殺してよ…」
「あん?あんだけ好き放題やっておいて殺してなんて…虫が…」
【嫌な予感がします…】
「は?」
ステラが突然そう言う。五十嵐が「は?」と言うも、ステラのその嫌な予感は的中してしまう。
気づけば向こうから、魔王軍と思われしき、騎士が馬に乗ってやってきているではないか…くそっ、昨日まであんな遠くにいたはずだろ…
「ステラ、委員長を町のほうに転送させろ!」
【無理です。距離が離れすぎています。それに、反魔術領域内なので…】
「あっははぁー計画通りぃ…」
「
もし仮に委員長を町に転送できたとしても、俺らはどうなる…?
そして、委員長を殺したからと言って問題が解決するわけでもないのに…どうすれば…?
「ここで魔王軍と戦う」
「無茶だ佐藤!俺らは七人なのに対して相手はゆうに百を超えている。それに、四人はジョブを奪われていて、奪われていない俺たちももうボロボロだ」
【私がいれば、必ず勝利します…しかし、皆様の生存確率は0.000000000001パーセントです】
そう葛藤している間も魔王軍がやってくる。くそっ、とりあえず委員長だけでも俺が…
『兵、こいつらを叩きなさい』
「はっ!」
その女性の声とともに、多くの兵が押し寄せる。
王都からの援軍か…?
『遅れてすまない、我の名はヴェロリア。王都騎士団第百六十二代騎士団長。もう、援軍を呼んだから案ずる必要はない。それより状況を聞かせてくれるか…?』
「はい」
事細かに、それでも迅速に状況を伝える。
それをすべて聞きいたヴェロリア団長は、委員長を抱えて森を抜けると言い出す。
『この子は私が王都に持っていく、そして…公正な裁きを受けさせる』
「…は?噓でしょ?そんなの絶対に認めない!」
『一回うるさいから黙って』
「うぐっ」
団長は委員長に手刀をいれ、委員長は気絶する。
『総員撤退!目標は回収した!王都に帰還せよ』
「はっ!」
すごすぎる、これが王都の騎士団か…魔王軍をもろともしな…って?
そこに死んでいる犠牲者の割合が、王都の騎士団と魔王軍で全然違う…
騎士団が十人倒れているとき、魔王軍が一倒れているかいないか…
『まあ、待てよ姉ちゃん。ちょっと戦っていこうや』
『それは…無理だ』
撤退している最中、背後から何者かの声が聞こえる。
まさか…魔王軍のリーダー…?
『じゃあまあ、こっちからふっかけますかっ!』
『くっ!』
「団長…!」
団長は肩に剣で浅いが傷を入れられ、団長が抱えていた委員長が地面に落ちる。
「ステラ…俺たちも団長に加勢しよう…」
【生存確率…0パーセント。ここは撤退するべき…いや、撤退してください…】
「なんで…だよ…」
魔王軍のリーダー(仮)は、その黒い肌に、黒い髪を光らせ、騎士団長を襲う。
騎士団は先に撤退していて、五十嵐たちも先に森を抜けている。
『あまり暴れるな…私たちの回収目標はこの「人間様」だ。回収すれば撤退すればよい』
『しかし、姉様…こいつらはここで殺さないと…』
『もう弱っている。それに向こうの二人は戦う気がないようだ。こちらも少し消耗している、無駄な争いはやめるべきだ』
突如上から空を飛んでくる、この男とは違う、魔物っぽさがない、ただの女性。しかし、白髪で、見た目は俺たちと同じ人間っぽく、年齢的にも俺たちやステラと同じくらいで、こちらを除く瞳は邪悪な紫色をしていた。
『ま、待て…ここでお前たちを必ず殺す…』
その言葉を言ってから、団長は倒れる。血が、出すぎている。
そうして、魔物たちは気絶している委員長を抱きかかえ、転送魔法でどこかに帰る。まさか…そんな…
「くそっ!何も…できなかった…」
あふれる自分の無力感に、ただ、泣き、跪くことしかできなかった。
俺が、俺がもう少し強ければ…
【逆探知で、あの二人は魔王城に向かわれました。委員長が昨日から魔王軍たちと何らかの方法で連絡を取り合っていたものかと思われます】
「…逃げ…られたな…」
そうして、ステラは倒れている団長に治癒魔法をかけ、俺は団長を抱え、ステラと一緒に町に帰る。
ーーーー
「委員長が…攫われた」
「なんだって!?」
五十嵐たちと町に戻ってから合流し、ありのままの出来事を話す。
「…そうか、俺がもう少し、残っていたら…」
「いや、いいんだ。俺たちのレベルじゃあの
そして、斎藤たちからの謝罪も入る。
「すまない、二人とも、俺がお前たちを傷つけてしまって」
「ごめんなさい、私ったら…」
「生徒を傷つけるなんてあるまじきことだよな…本当にすまない…」
「ごめん、二人のこと本当に大事なのにさ…」
委員長に操作されて、やってしまったことなので、仕方がない。
もう…以前のことを考えてくよくよしている場合ではないのだ。
「大丈夫だ。それよりも、委員長を奪還する方法を考えよう…」
「ああ、今は委員長を奪還して、お前らにジョブを返させることが大事だ」
「「「「二人とも…」」」」
そして、俺たちはその日の夜、王城でありのままの出来事をみんなに話す。
みんな信じられないといった表情だったが、俺たちの血だらけの制服を見て、信じてくれたらしい。この世界に来てたった二日というのにいろいろなことが起こりすぎて…
「と、いうわけだ。これからは、
「…」
先生のその会話で、今日のところはいったんお開きにするとのことだった。
まあ、疲れたことだしもう寝…
【主様…添い寝はいかがでしょうか?】
「いや…しねぇよ。絶対」
ーーーー
『魔王様、こいつが例の「人間様」です」
魔王城、その魔王の間で手足を縛られ、口も封じられた委員長が二人によって姿を見せる。委員長は目線で訴えかける。
『ほう、例の召喚された人間か…面白い。そして、ジョブはもちろんあれだよな?』
『はい、事前に我々のほうで確認済みです。ではあの計画をついに実現させますか…』
魔王の大きな笑いがその大きな部屋をこだました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます