第8話 討伐作戦②
「くそっ、斎藤、先生、深山、樋口、お前ら…くそっ」
「今頃五十嵐君はクラスメイトを倒すか、倒さないか、葛藤を抱いていると思うわ。あはははは、あー面白い」
「委員長、なんで…信じていたのに…」
すると委員長は持っていた刀を構えて言う。
「なんでってそれは…楽しいからでしょ?」
委員長のその踏み込みはまさに、一流だった。
素人であればきっと見えなかっただろう。しかし俺のジョブは
俺も虚空から刀を取り出し、打ち合いを始める。
「斎藤のジョブは…剣士だったけど、それもいい。佐藤くん…私はあなたが好き♡強いし、かっこいいし、ああ、そのジョブを私のものにしてみたい…」
打ち合いで、頭の中で無詠唱で魔力槍を放つ。もちろん、剣で簡単に薙ぎ払われるも…ボディが一気にがら空きになる。そこに踏み込み、委員長の肉を切り裂く。
「いったいわね!なら私も!」
そうして、委員長は緋色のエンチャントを剣に再びまとわせ、しかも今度はリーチが伸びる。
「なら…俺も…」
無詠唱魔術よりも詠唱魔術のほうが、魔術の威力は段違いに高くなる。だから、俺は少し中二くさくて恥ずかしいけど、詠唱する。
「悪魔よ、我にこの外道を殺す力を与えたまえ、
そして、俺の血液から小さい剣の陣のようなものが作られ、頭の上に浮遊する。
「あはは…それって…血、だよね?」
「ああ、じゃあ、飲んでみるか?」
音速を超えた速さの
ーーーー
「おい、みんな?みんな?目を覚ませよ!先生までどうしたんだよ!」
五十嵐が二人のあとをつけている最中、斎藤に後ろから奇襲されるも、五感が鋭かった五十嵐はそれに気づき、とっさに対応をする。最も、斎藤だけではなく、ぞろぞろと全員で四人くらいやってくる。
「くそっ!これも委員長の仕業か…は?深山?それに樋口も?」
五十嵐は、いつも献身的で優しい、深山のことが大好きだった。
「楓(五十嵐)くん、どうしたの?また喧嘩?」
「うっせーよ、深山には関係ねえことだろ」
「もう、楓くんったら、そんなに強がらなくていいの」
小学校、中学校、と一緒に過ごしていくうちに五十嵐はこれが恋心なのだと気づく。そして、高校も一緒であったが、五十嵐はその好意をいつも伝えられずにいた。
「五十嵐くん、ここ教えてくれる?」
「そんなんもわかんねーのかよ、この馬鹿女」
「あー、それはひどいー私泣いちゃう」
「勝手に泣いとけ」
そして、昨日、深山、斎藤と三人でグループを作り、町を散策した。
そこでも深山は町の貧しい人々を見つけると、自分が何か役に立てないかと必死だった。
「なのに…どうしてだよ、深山…」
うつろな目をしている深山、そして深山の手に持っているのは手鎌。
それで、五十嵐を襲う。
先生は魔術を使い、斎藤は剣を振り、樋口(オタク)は魔獣を召喚する。
つまりは、これらのジョブを委員長は…大丈夫かよ佐藤…
斎藤と鍔攻り合いになり、金属音が草原に響く。そして、深山が手鎌で横やりを入れ、避けたところで、先生や樋口が魔術を撃ち、魔獣で攻撃してくる。
幸いなことはまだ全員が低レベルなこと。低レベルなことというか、そういうようにしかできない…?まあ、考えても仕方が…くっ、
深山の手鎌が俺のほほを掠める。くそっ、なんとか、この状況を…
ーーーー
「向こうは楽しそうだねー深山さん、自分の愛する人を殺しちゃいそうになるんだもの。でもあいつらは、今や私の下僕、佐藤くんもそうなるのでしょう…?」
委員長は血に濡れた手を頬に持ってきて、そう言う。
「私今、すごく興奮してるの。だって、だって、異世界に来てから、こんなに楽しいことが続いて、ほんと最高だよ…」
「…見損なったよ、ただのカスだったのか!俺たちの尊敬した・信用した委員長は!?」
すると委員長はまた強烈な踏み込みをする。
「知らねえよ!第一、勝手に信用っしたのはお前らだろうがよ!」
「くそっ、力が…強い…」
そして、俺と委員長は鍔迫り合いで拮抗状態になるも、強烈な力で押され、俺はわき腹を一気に切られた。
「あれぇ?もしかしてぇ、これってぇ、佐藤くんの血ぃ?」
刀にべっとりとついた俺の血、ということは、俺は大きな傷を負って、委員長にいつ血を吸われる=ジョブを奪われてもおかしくない状況にあるってことか…最早、ここまでか…
【遅くなってすいません、佐藤様、私、ステラがやってきました】
「あ、ありがとう、ステラ…」
ステラは俺の傷を一瞬で完治してくれる。
「ふ、ふん!この刀についた血を舐めれば…」
【
「あ!?」
そのステラの一言で刀は消える。
【刀はどこにもありませんよ、異空間にすら。私の主を傷つけたお礼です…】
「上等よ、面白くなってきたわ」
そう言って二人はまた打ち合いを始めた。
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