夢の裁き

天川裕司

夢の裁き

タイトル:(仮)夢の裁き



▼登場人物

●脇東紀子(わきとう のりこ):女性。27歳。独身OL。清楚な振りして実は欲深い。浮気性。

●小野(おの)タケル:男性。27歳。紀子の幼馴染的な彼氏(その後に破局)。

●勝田義行(かつだ よしゆき):男性。30歳。紀子の浮気相手。

●女医:一般的な産婦人科主治医のイメージでお願いします。

●夢野恵美(ゆめの めぐみ):女性。20代。紀子の理想と欲望から生まれた生霊。


▼場所設定

●街中:紀子が働いてる会社やホテル等を含め一般的なイメージでOKです。

●Prisoner of Dreams:お洒落なカクテルバー。恵美の行きつけ。本編では主に「カクテルバー」と記載。

●紀子の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでOKです。


▼アイテム

●Inhabitant of Dreams:恵美が紀子に勧める特製のカクテル。これを飲むと愛したその人が夢の中に自由に登場するようになる(その土台を造る為のもの)。

●Prisoner of Dreams:恵美が紀子に勧める特製の錠剤。これを飲むと「Inhabitant of Dreams」の効果を充分に発揮させる。愛した人が夢の中でいろいろするようになり、その夢の中でした事が現実でも本当に起きてしまう。


NAは脇東紀子でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは浮気性ですか?

もしそうなら、それは何が理由でしょう?

欲望…その欲望にもいろいろありますね。

金銭欲、性欲、向上欲など、

数え上げたらきりがないかもしれません。

それぐらい人の欲望と言うのは凄まじいもの。

今回はその欲望に目がくらみ、

1人の愛すべき人を不幸にしてしまった

ある女性にまつわる不思議なお話。



メインシナリオ〜


私の名前は脇東紀子(わきとう のりこ)。

今、都内で働いている独身OL。


私には1人、昔から愛している人が居た。

彼の名前は小野タケル君と言い、小学校からずっと一緒で、

高校の時から付き合い、今でもその関係は続いている。


タケルはとにかく優しく、私の事を第1に考えてくれ、

自分を犠牲にしてでも私を守ってくれる…

そんな、私には勿体ないぐらいの人だった。


(デート)


タケル「これ、君へのプレゼント」


紀子「わぁ、きれいなネックレス♪あ、もしかしてまた手作りで?」


タケル「ああ♪自分で作ったほうが心を込めてプレゼント出来るし、そのほうが君も喜んでくれるかと思ってね」


紀子「有難う…とっても嬉しいわ」


ある日デートしていた時、タケルはまた私にプレゼントをくれた。


手作りのネックレス。

綺麗な貝殻を綴ったもので、きっとタケルの事だから

朝早くから砂浜に出かけ、そこで自分の手で貝殻を拾い集め、

それを綴ってプレゼント用にしてくれたんだ。


それも私が少し前に、そんなプレゼントが欲しい…

と言ってたから。


ト書き〈トラブル〉


そんな優しくて、私の事をずっと愛してくれていたタケルを、私は裏切った。


(ホテル)


義行「ふう。紀子、よかったぜ♪またちょくちょく会って愛を確かめ合おうや♪」


紀子「うん♪私を満足させてくれるあなた…大好きよ」


提携先の社員だった、勝田義行さんと言う人と私は出会ってしまい、

その人と男女関係を持つようになってから、だんだんタケルが遠のいていった。


(別日)


タケル「最近、連絡くれないね?どうしたの?」


紀子「うん、ごめんね。…ちょっと仕事で疲れてるから」


もうずっとこんな下手な言い訳で逃れてきており、

タケルと会わない日々が続いていった。


そしてある日の事。

義行さんと2人でデートしていた時。

タケルとばったり会ってしまったのだ。


タケル「そ、その人は…?」


紀子「こ、これはその…!」


義行「なんだなんだ、おめぇか?夜の生活に全く役立たない男ってのはwあのなぁ、紀子はよ、おめぇとの性生活にすっかり飽きちまってよ、自分を満足させてくれないそんなちんけな男と一緒に居るのはまっぴらゴメンなんだとさ♪な?紀子♪」


紀子「い、いや、そんな事…」


タケル「そ、そんな、嘘だろ…?紀子、お前、俺と一緒になってくれるってあれだけ…」


義行「ああ〜もううるせぇよオメェは!紀子はもうオメェの事を何とも思ってねぇんだよ!wま、安心しろや♪俺がオメェの代わりに、紀子を充分満足させてやるからよ♪」


タケル「の、紀子…」


義行さんは実は社長の御曹司であり、

金銭的にも将来を約束されていた。


それに彼の言う通り、私はタケルとの愛の営み…

つまり夜の生活にすっかり満足できなくなってしまっており、

タケルには本当に悪いけど、私のこの時の状態は

義行さんが言った通りだった。


そして、

「ここが正念場、私の将来を安定させる為には今、ずっとピュアに愛し合い続けてきたタケルを切り捨て、将来的にも心身的にも満足させてくれるこの義行さんのような人と結婚するのが1番だ」

そう思い込み、タケルの事をあえてバカにして、

心の中からタケルを追い出し、タケルへの未練を断ち切ったのだ。


紀子「はぁ~わかったわ!もう正直に言うわよ!タケル、アタシあんたに飽きちゃったの。ごめんね。彼の言う通り、あなたと居てもつまんなくなっちゃって、私きっと、もっとワイルドな人のほうが自分に合ってると思っちゃったのよね。それで彼と出会ってさ、彼に自分の将来、託す事にしたの」


そしてタケルに貰っていたあのネックレスをバッグから取り出して.


紀子「こ〜んな小学生が作ったようなネックレス、本気で喜ぶ女が居るとでも思ってんの?こんなの今の私には不要なのw」


そう言ってネックレスをタケルの目の前で投げ捨て、

足で踏みにじって「フン!」とそっぽを向いた。


タケル「の…紀子、お前…!ほ、本気でそんな奴と付き合うってのか?…お前が今言った事は本心なのかよ!?」


それからタケルをあとにして、

私と義行さんはその場を颯爽と立ち去った。

タケルはよほどショックだったのか、

ずっと道端に立ち尽くしていた。


紀子「(タケル…ごめんね、本当にごめんね…)」


そんなタケルに、私は立ち去りながら心の中で何度も謝っていた。


ト書き〈カクテルバー〉


それから数日後の夜。

会社帰りに私は1人で飲みに行った。

あれからもうずっとタケルとは連絡してない。


「はぁ…」と溜息をつき、

やり切れない思いで飲み屋街を歩いていた時。


紀子「ん?『Prisoner of Dreams』?」


全く見慣れない一軒のバーが建っているのに気づいた。

変わった名前だが外観は美しく、

中も綺麗で落ち着いていたので、

私はそこに入ってカウンターにつき、とりあえず飲む事にした。


飲んでいても、思い出すのはやっぱりタケルの事ばかり。


紀子「はぁ…。ほんと、私ってどうしようもない女よね…。タケル、ごめん。ホントにごめん」


そんな時、後ろから声がした。


恵美「こんばんは、お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」


見ると結構綺麗な人。

私はそんな感じで落ち込んでおり、

誰かに悩みを聞いて欲しかったのもあって、

とりあえず隣の席をあけて彼女を迎えた。


彼女の名前は夢野恵美さん。

都内で恋愛コーチやスピリチュアルヒーラーのような仕事をしていたそうで、

とても上品で、又どこかに温かさが漂っている。


軽く自己紹介し合いながら喋っている内、

やはり話題は恋愛相談のような事になってしまった。


紀子「私、自分の事ばかり考えちゃって、これまでずっと愛してくれたあの人を、そんな感じでフッちゃったんです。心ではダメだって分かってるけど、どうしても現実的に不満が残ってしまって…」


恵美「なるほど。理想と現実とのギャップ、きっとあなたはそれで悩まれてるんですね。夜の生活…愛の営みに満足できない。これは実は、恋愛破綻の最も多い理由の1つなんです」


紀子「…え?」


恵美「やっぱり女性も、欲望の強い生き物なんでしょうか。恋人から夫婦において不倫が絶えない現状を見ていてもその事がよく分かるでしょう。性生活と言ってもやはり男女にとっては結構大事な事で、それに不満を覚えるようになってしまえば、心と体は外にその不満を埋める為の刺激を欲しがります。それに金銭欲も、女性にとっては大きなものですよね」


タケルの家はもともと貧乏。

一緒になってもずっと共働きで、経済的に幸せになれるかどうか、

そんな事への不安も確かにあった。


その事もこのとき彼女に話していたのもあって、

自分の将来を思う上でタケルを捨てた…

その自分の正直な処も話題の1つにしていた私。


でも彼女はこの時…


恵美「…あなたはやっぱり、そのタケルさんの所へ戻るべきです。その義行さん…ですか?その人はきっとあなたの事を愛していません。お話を聞いているとその事がよく分かり、やはりあなたを本当に愛しているのはタケルさんのほうですよ」


紀子「え…?で、でも…」


恵美「あなたは今、いっときの欲望に目がくらんでいるだけ、本当に大事なものは何なのか?それがよく解っている筈です。それが解っている以上、あなたはその心に忠実に従い、自分の幸せをその上で追い求めるべきでしょう」


彼女と喋っていて、もう1つ不思議に思った。

「なんだか昔から私の事を知ってくれていた人?」

のような気がして、その点で心が和み始め、

彼女になら体裁を繕わず何でも正直に言えてしまう…

そんな自分が出てきたのも本当だった。


紀子「でも私は自分の幸せを思う上で…!」


恵美「いいえ、あなたは自分の幸せを思ってるんじゃありません。今欲しい欲望の事を思ってるだけです。その欲望の傀儡になり、本来守るべき大事なものを捨てているだけ。…きっとタケルさんはまだあなたの事を待っていると思いますよ?もしあなたがその気になって彼の元に戻れば、彼はきっとあなたを快く受け入れ、今回の事を心の成長のバネにした上、更に幸せな未来の生活を送る事ができるでしょう」


私はそれから黙り込み、暫く考えていた。

そうして落ち込んでるような私に…


恵美「まぁあんまり深く考え込まないようにして。景気づけに一杯どうです?こちらをあなたにお勧めします」


そう言って彼女は指をパチンと鳴らし

そこのマスターにカクテルを1つオーダーして、

それを私に勧めてきた。


恵美「それはここの特製のカクテルで、名前を『Inhabitant of Dreams』と言います。気持ちを落ち着かせる成分も含まれてますのでぜひどうぞ♪」


やっぱり彼女は不思議な人。

どんなに気持ちが塞いでいても、

彼女に言われるとその事を信じてしまい、その気になって

彼女の言葉に従ってしまう。


私は勧められたそのカクテルを手に取り、

その場で一気に飲み干していた。


そしてそれを飲み終えた後、彼女は私に言った。


恵美「きっとそのタケルさん、もう1度あなたの前に現れて、寄りを戻そうとしてくれるでしょう。彼のような人は1度でも愛した人ならその人を暫く心に宿し、その人への未練を断ち切るのに時間がかかるもの。その時にこそ、あなたは自分にとって本当に幸せな未来を勝ち取るのです。おそらくそれがタケルさんとの関係を取り戻す最後のチャンスになるでしょう」


紀子「…え?も、もう1回、タケルが私の元に…?」


恵美「ええ、必ず来ます。良いですね?その時にこそ、あなたは自分にとって本当に幸せな未来を手にするのです。そのタケルさんこそ、あなたの幸せな未来そのものですから…」


ト書き〈トラブル2〉


それから数日後。

本当にタケルは私の前にやって来た。


タケル「…俺、あれからずっと考えたんだけど、やっぱりどうしてもお前が本心であんな事したとは思えない。あいつの前だったからお前、心が酔わされるようになっちゃって、わざとあんな事して見せたんじゃないのか?紀子、自分の幸せについて、もう1度よく考えてくれ。あいつと一緒になって、本当に幸せがやってきてくれるって、本気でそう思ってるのかよ?」


紀子「……」


私は暫く、何も言い返せなかった。

タケルがそのとき言った事は、

私が心の奥底で思っていた正直そのものだったから。


でも結局…


紀子「もう来ないでって言ってるでしょ!私はあの人と一緒に幸せになるの!あんたなんかじゃないわよ!あんたなんか…絶対私を幸せになんか出来ないでしょ!」


やっぱり貧乏な生活なんかまっぴらごめんで、

自分の欲望を満たしてくれないこんな男と一緒になったって

絶対そのさき苦労する…後悔する。


そう思ってしまい、タケルを追い返してしまった。


(タケルの自殺)


それから数日後。

タケルは自分のアパートの部屋で首を吊って自ら他界した。


紀子「タ…タケル…」


ト書き〈カクテルバーからオチ〉


私はそれから膨大な罪の意識に苛まれてしまい、

義行さんと居ても一向に落ち着かず、

居ても立っても居られなくなってしまった上、

又あのカクテルバーへ駆け込んでいた。


あの不思議な人…私の事を全部分かってくれてる人…

恵美さんにどうしても会いたくなってしまい、

今のこの気持ち…やり切れない自分を救ってほしい…

その一心で。


店に入ると、前と同じ席で座って飲んでいる恵美さんを見つけた。


紀子「恵美さん…!」


私はすぐ彼女のそばへ駆け寄り、今の心の正直を全部彼女に訴え、

タケルがそうして亡くなった事も彼女に伝えた上で…


紀子「お、お願い!お願いします!私を、私を救って下さい!助けて…!」


タケルをあんな形で殺したのは自分だ…

この思いがどうしても消えずにあったので

私は藁にもすがる思いで彼女にそう言っていた。


彼女は暫く黙って聴いた後、私を軽く嗜め、

仕方がないと言った感じで

私を助ける気になってくれたようだ。


恵美「紀子さん。あれだけ言ったのに、あなたはタケルさんを死に追いやってしまった。自らこの世を去ったのは確かに彼自身の責任だけど、でもその理由があなたと義行さんにある事は、あなたも充分理解していますよね?」


恵美「分かりました。では、今のそんなあなたをなんとか救って差し上げます」


そう言って彼女は持っていたバッグから錠剤のような物を取り出し、

それを私に勧めてこう言った。


恵美「こちらをどうぞ。それはこの前あなたが飲んだカクテル『Inhabitant of Dreams』の効果を持続させる補強剤のようなものでして、名前を『Prisoner of Dreams』と言います。偶然このお店と同じ名前ですが、まぁその辺は気になさらず。それを飲めば、きっと今あなたが感じておられる罪の意識は解消され、あなたなりの罪への償いが出来るようになるでしょう」


「タケルを死に追いやったと言う、自分が犯した罪への償いが出来る」

これを聞いた瞬間、私は彼女の言葉を最後まで聞かず、

その場で錠剤を手に取り一気に飲み干していた。


ト書き〈紀子のその後〉


そして数か月後の夜から、私は夢にうなされるようになったのだ。


私の夢の中には必ずタケルが現れるようになり、

その夢の中でこそ彼との新婚生活を送るようになったのだが、

やはりあんな形でこの世を去ってしまった彼だからか。

私の事を恨んでいたようで、

その夢の中で私は彼からずっと拷問を受け続けていた。


そして夢の中で彼との関係を持って3ヶ月後。


(産婦人科)


女医「ちょうど3ヶ月目に入ったところですね。おめでとうございます」


私は妊娠していた。

この半年、私はもう義行さんとは会っていない。


錠剤を飲むようになってから

数ヶ月後に私はそんな夢を見るようになり、

少し怖くなってしまった私は心の拠り所を求め

義行さんに会おうとしたのだが、

それはもうこの現実では叶わなかった。


なぜなら、あれからすぐ義行さんは事故で亡くなっていたから。


その事故に遭う直前の義行さんの様子も変なもので、

義行さんは目を閉じながらブツブツ呟き、

まるで夢遊病のようにして

駅のプラットホームから線路の上に落ちたらしい。

周りで見ていた人は、

「彼はなんだか眠りながら行動していた?」

そう証言していたとの事。


そして妊娠している事が分かったその翌日の夜から、

私は2度と目覚める事のない、深い眠りについたのだ。


ト書き〈眠り続ける紀子を見ながら〉


恵美「フフ、今日もうなされてるわね。夢の中でタケルから、紀子はどんな事をされてるのかしら?また拷問だったりしてねw」


恵美「私は紀子の理想と欲望から生まれた生霊。その理想のほうだけを叶えてあげようとしたけど、やっぱり彼女の欲望のほうが凄まじかったわね」


恵美「タケルがこの世を去ろうとした時、私は彼の前に現れて、不思議な力を授けておいた。その力は紀子の夢の中に自分の意識をもって登場できるその力。紀子が夢の中でされた事は、この現実でも普通に起きる。だから紀子の体は今傷だらけよね。紀子が妊娠したのもそれが理由」


恵美「そして特別に義行の夢にもタケルが現れるようにしてあげて、義行には眠って貰ったまま、夢の中でさせた行動をそのまま現実にもさせていた。『この恨み、晴らさでおくべきか』タケルに宿ったその怒りの恨みがこんな形で現れるのも、紀子と義行が彼にした事を思えば当然の事」


恵美「今日もなんとか紀子は殺されずに済んでるけど、これからもずっと彼女は夢の中で、タケルに命乞いし続ける事でしょうね。自分のした事を、その夢の中で反省なさい。あの時、私の言葉を軽く聞き流したあなたの責任なんだから…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=LDCtTB7sQh8

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の裁き 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ