【語り部Low】 ある王の話…
@low_wod
第1話 ある王の話
王がいた。王座がある城の中にいた。
この城は広大な土地を持つ国の中にあった。
その国はどこまでも青空が広がる世界にあった。
世界を運営する神は全てを王に与えてどこかへ去っていった。
いま、この世界に王を知るものは居ない。
すでに居ないのだ。
ある日、王が言った。
「退屈だな」
「神が用意したこの王座であるが、座して幾星霜
はじめは選ばれたという自尊心が満たされる幸福感を生じさせたが…」
「もはやそれすら飽きてしまった」
王は眺めた。その眼には世界の果てまで見据える視座がある。
そうして見つけた。
蝶と花が会話しているのだ。
もはやこの世界には自然物しか存在していなかった。
王は思った。
ああ―――自然物以下じゃないかわが生活は。
そうして王は決意した。そして考えた。
この世界を楽しむにはどうするのかを…
そして思いついた。
「そうだ、我を増やせばいいのだ」
数年後、二人になった王の一人を滅ぼすために
自然物を破壊しつくす闘争が終わったのであった。
そうして王は理解した。
「神は我を作るとき、神以上の力は与えなかったのだ!!」
明らかだった。自身を作ろうとして自身より劣るものを作ってしまったのだから。
「やめだ。同じ失敗などせぬ。我は帰るぞ」
そうして王座での再びの安寧を繰り返すのであった。
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