第五話『靴の謎』

——震天冷嵐の靴シンデレラ・シューズ


 ガラス製の右足。

 馬の臀部の革コードバン製の左足。


 サイズ二十六センチ。

 急勾配こうばいのピンヒール。


 その世界に一足しかない靴の存在は、ヤワラカ国国防省の最重要機密事項の一つであり、海外諸国には噂程度でしか認知されていない。


 ある時、

 右の靴は空から、降ってきた。

 左の靴は古代のの墓から出土した。

 ……らしい


 靴に秘められたとてつもないパワーに気づいた国防省は、それを、国土防衛に利用し始めた。

 

 靴の継承者が、国防大学卒業者の中から、不定期に、選ばれる。

 わたし、東雲しののめゆららの一つ前は、国防大臣の舞央爽馬まいおうそうま。彼は、高齢による体力の限界で、十年前に引退した。当時、継承の候補者は何人かいたが、靴がハイヒールということもあり、男性陣は皆、嫌がった。かといって、いかんせん女性が履くにはサイズがでかい。サイズ二十六センチ。わたしはちょうど、足のサイズが……二十六センチ。

 

 わたしに、白羽の矢が立ったのだった。


〈第六話『白馬の王子様』に続く〉

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