第25話 その名の通り
冷たい空気が淀んでいる路地裏で、
「といっても……推理なんて必要ないんですけどね。だってあまりにも簡単で、単純ですから。これがミステリー小説だとしたら、世界一簡単なミステリーになるでしょうね」
……世界一簡単……?
なんでそんな事を言うのだろう。私が長い時間をかけて一生懸命考えたものなのに。
「事件前日の17時30分過ぎ……あなたは施錠をするために教室に向かった。そのときに、とある生徒と一緒に教室に向かっていますね」
数学の問題を聞いてきた生徒だ。
「その生徒……仮に生徒Aとします。話を聞くと……
「だったら私は犯人じゃないよ。そんな数分で……
いくらバラバラにする相手が
しかし
「あなたは……すでに
「……」
「これなら数分で行えるでしょう? 窓際に置けば、廊下からは見えない。ちょっと机の位置を直すフリでもしていれば、怪しまれることもないでしょう」
……
「……私が……
「はい。ポケットにでも入れてたんじゃないですか? まぁ場所はどこでもいいんですけど……」バレない場所ならどこでも良かった。「そうしてあなたは……クラスに死体をバラまいて、平静を装って教室を施錠した」
「……そんなこと……」
「可能ですよ」
クラスで飼っている亀。それが
だから警察はあっさりと帰ったのだ。殺人ではなく、クラスの亀が殺された事件だったから。たぶん……ただの学校内でのトラブルだと判断したのだろう。
……だとしても、もう少し対応してほしかったものだけれど。
「……
クラスの仲間の
そう聞けば人間を連想する人のほうが多いかもしれない。
「話を戻します。
そうだ。あの悪臭漂う部屋で血の匂いがあっても誰も気が付かない。仮に気がついても『職員室に死体がある。調べよう』とは誰も言い出さないだろう。
「私の推理はこれだけです。いえ……推理と呼ぶほどのものでもありませんね。失礼ながら……こんな計画、バレないと思ったんですか?」
「……こんな計画……?」
「……長い時間……? どれくらいですか?」
ああ……どれくらいだっただろう。私がこの計画を考え始めたのは……たしか……
……
「30年くらい」
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