第47話
暗闇の中にクロはいた。
「…ここは明楽の中」
ゆっくりと暗闇の中を歩いた。とても冷たく、悲しみに包まれそうな感覚になった。しばらく歩くと、明楽が見えた。
「明楽…」
しかし、明楽には黒い鎖が巻き付かれていた。明楽の背後にレイがいた。すると、明楽の感情が伝わってきた。冷たく、今にも凍え死ぬ感情だった。クロは明楽に話しかけた。
「明楽。苦しいよな。痛いよな」
明楽は泣いていた。
「私は、お父さんから抜け出せれない。言葉を犠牲に抵抗しても、お父さんに敵わなかった。私はもう死ぬ…」
黒い鎖がかすかに明楽を締めた。クロは明楽に触ろうとしたが、明楽に包まれているバリアーでクロは弾かれた。
「!?」
冷静に着地し、レイを睨んだ。
「お前は、いつまで明楽を縛る気だ。明楽は明楽だろう」
しかしレイは唸るだけ。
「お前に明楽は敵わない」
その言葉にレイは吠えた。また黒い鎖が明楽を締め付けた。
「明楽は俺のものだ。明楽を自由に操り、制覇できる。こんないい物を手放すわけがないだろ!」
その時、明楽は泣き叫んだ。
「もう嫌!私は物じゃない…自由に生きたい!」
しかし、明楽は動けなかった。
「また俺に抵抗か…ふざけるな!」
黒い鎖が明楽をさらに締め付けた。明楽は痛みで叫んだ。
「お前は何もできない。ただ見てるだけだ」
レイはクロに言い放った。
「あぁ…そうだな。明楽に近づくこともできないなら、そうなるよな」
クロは冷静だった。
「明楽。俺と一緒に自由に生きよう」
クロは歌った。
「やめろ…その歌を歌うな!」
レイは吠えた。しかしクロは歌い続けた。すると、黒い鎖が徐々に明楽を解放して行った。
「テメェ…」
レイはクロに手を出そうとしたが、レイの身体が少しづつ消えて行った。
「な…クソ…」
すると、明楽が解放されその場に倒れた。
「チッ…」
レイが完全に消える瞬間、レイは明楽を見た。
「…」
何も言わず、レイは完全に消えた。
「明楽!」
クロが駆け寄り、明楽を抱き抱えた。
「クロ…ごめんね」
明楽はすごく弱っていた。
「謝ることはないよ。明楽…一つお願いがある」
二人はお互いに見つめあった。
「俺の力の一部を、明楽に譲りたい。俺は、明楽のライダーとなって、明楽を守りたい」
拒否されるとクロは思っていた。すると、明楽は笑顔になった。
「クロ。あなたを選んでよかった…」
明楽を抱きしめた。
「明楽。俺を選んでくれて、ありがとう」
クロは明楽の口にキスをした。すると、熱い何かがクロの身体から湧き上がたが、一瞬で引いて行った。
「クロ。これからもよろしくね」
そう明楽が話すと、白い光に包まれ目を閉じてしまった。
「…!」
気がつくと、ライトの所に戻っていた。明楽はいなくなっていた。
「クロ。よくやった」
ライトはクロの肩に手を置いた。ふと右手を見ると、三日月が入っていた。
「叔父さん…これは…明楽は?」
「明楽は大丈夫だ。それと、その証は明楽の完全なライダーになった証だ。クロ。明楽をこれからも大事にするんだぞ」
ライトはクロに熱い視線を送った。
「はい。明楽が幸せになれるように努めます」
クロも決意を持った目でライトに誓った。
「うむ。それと、これだけは話したかった。なぜ、君をここへ連れてきたか」
「…」
「君が知らない間に、私が死んで君が危ない目に遭った時に、一度だけ時を止めて連れてくるように、君に魔法をかけてたんだ」
ライトは舌を出した。
「え…いつのまに…」
「もう忘れたわ!なんせ、君が一人孤独になっていた時だったからな…でも、君が明楽のライダーになれた姿を見て、私はもう満足じゃ」
すると、クロの身体が輝きだした。
「…!」
「もう時間切れかな」
ライトはどこか切ない顔をした。
「叔父さん!」
クロは最後にライトと抱き合った。
「クロ。もう君は立派になった。私の出番はもう無さそうだ。だけど、もう君には会えないが、君をここでずっと見守っている。自慢の息子、クロ。明楽と幸せに生きて」
クロは頷いた。
「それと、城の兵士とウルフもよろしくな」
クロは光に包まれ消えて行った。
「ライト…大丈夫?」
三日月龍はライトの身体に擦り寄った。
「あぁ。大丈夫。ありがとう。シルビア」
シルビアの顔を撫でた。
「シルビア。ナイト。ここで、彼らの事を見守っていこう」
「そうね」
「うん」
ライトは草原の遠くを見つめていた。
目を見開くと、レイが吠えていた。
「二人揃って死ね!」
レイが黒いモヤを放った。
「…!」
クロはバリアーを貼ろうとしたその時、誰かがクロを強く引っ張り黒いモヤを回避した。
「うっ…」
クロは恐怖のあまり、目を閉じたが少し目を開いた。すると、空を飛んでいる。
「?」
クロの体を硬い何かで抱えていた。
「…明楽」
上を見ると、三日月龍の姿になっている明楽の顔が目に入った。
「気づいた?」
クロは明楽に抱き抱えられていたのだ。
「お前…生きていたのか…」
「そうよ?さぁ、私のライダー。私の背中に乗って」
見ると、クロが作った鞍が装備されていた。クロは鞍に跨った。
「明楽。レイを倒そう」
クロは右手を挙げると、明楽は吠えた。すると、黒雲が引き三日月が出てきた。
「なになに…」
兵士とウルフが上空を見上げると、黒雲がない夜空。三日月の近くに青い光が一点輝いていた。
「明楽ちゃん…クロ」
明楽がもう一度吠えた。その鳴き声はとても美しく、心が穏やかになっていった。
「すごい…」
すると、レイが出した黒い何かがもがき苦しみながら消えて行った。
「…私たちの勝利が目前よ。明楽ちゃんとクロを応援しよう!」
ウルフの呼びかけに兵士たちは声を上げた。
「明楽…テメェ…」
レイが牙を剥き出し威嚇した。
「クロ…いくわよ」
明楽の目がサファイア色に輝いた。クロの目もサファイア色に輝いた。レイが勢いよく飛び出した。
「殺す!」
明楽は瞬時にかわした。
「明楽。気をつけろ」
レイの動きがさっきよりも早くなっていた。
「クロ。しっかり捕まってて!」
明楽は体を回転しながらレイの攻撃を避けた。
「動くな!」
レイは黒いモヤを放った。明楽はなんとか避けていった。
「明楽。次接近した時に、俺はレイに攻撃する」
「どうやって?」
「ワイヤーを使う。だが、一旦鞍から離れる」
クロはワイヤーの先端を口に含んだ。
「わかったわ」
明楽は上手くレイとの距離を縮めた。
「接近戦をしたいのか…いいだろう!」
レイが明楽の下にくるように飛行した。
「下から突き上げてやる!」
レイが明楽の下になった時、クロは鞍から飛び降りた。
「ちょっと翼をいじるぜ」
それはレイには見えてなかった。降下中にクロはたくみにワイヤーを広げ、レイの左翼にワイヤーを絡めた。
「な…」
「痛いだろうな!」
降下の勢いでワイヤーをキツく締めた。
「くっ…」
レイは上手く翼を制御できない。明楽はクロが落ちてくるところをキャッチし、クロは鞍に跨った。
「これであいつは上手く飛べない」
しかし、レイは飛び続けた。
「もういい…死ね!」
黒いモヤを広範囲に放った。明楽は速度を上げ、攻撃を避けた。
「明楽。ぶつかるしかないな」
「そうね」
明楽の額の三日月が光った。
「いくわよ」
明楽の口に青白い光が見えた。大きく息を吸い、明楽はそれを解き放った。それは光線となってレイにめがけて一直線だった。
「お前の攻撃は弱いんだよ!」
レイも黒いモヤを解き放った。互いの攻撃がぶつかった。
「死ね!」
レイの黒いモヤが勢いを増した。
「くっ…」
明楽は苦しそうだった。すると、クロは右手を明楽の首に置いた。
「明楽。俺の力を使え!」
そう言うと、クロの右手にある三日月も光った。
「ありがとう」
明楽は青白い光線の勢いを上げた。黒いモヤは一気に押された。
「…」
レイは明楽の青白い光線をモロに受けた。爆発したかのように煙が上がった。
「明楽…」
「…」
すると、煙の中からレイが地面へと落下した。
「俺は…終わった…」
レイの目には、青く光る明楽とクロの姿があった。
「成長…したな…」
地面に着く前に、レイは黒い霧となって消えた。
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