邪神の領主さま

いちごはニガテ

第1話 降臨   1

 その異質な男は、自由都市バビロニアにある雑多な人々が多数行き交うの大通りに、突然ふわっと現れた。


「あっ、あんた今、何処から??それにその出で立ち」

 長年大通りに店を構えている果物屋のオヤジが問いかける。


 


「偉大なる守護神イブル様、少々目立ちすぎでございます」

 全てが凍り付いた世界の中、放漫に辺りを値踏みする男に対し、明らかに魔族と思われる優男がふいに現れ尊大な男に声をかけた。


「わたくしめが申したのは、この辺りの地方都市なら程よく異人種が混じり合い、イブル様のような御方でも紛れてしまえばワーデンの手の者どもから隠れることができると述べたにすぎませぬ。過去の天上界での争いが元で、人界に魔素が溢れ出て数百年ほどたちますが、人族の中には転移を行えるものなど今でも数えるほどしかおりませぬ」


 その言葉を鼻で笑った男は、たしなめるように口を開いた。


「スネイクよ、ならばこうしよう」

 男の言葉に、世界のことわりが書き換えられ、再び動き始める。



「あっ、あんた…じゃない。領主さま!いつもお世話になっております。本日はどのようなご用で??」


「我が主は本日、執務の息抜きがてらに街を視察なされることにされたのだ」

 執事服を着た優男が其れに応える。

 其れに応えるかのように立派な着衣の威厳ある男が頷く。


「忙しい執務の間の僅かな時間だ。主人の脚を止めるのはこれまでだ」


「ごもっともで」

 オヤジは慌てて頭を下げ、立ち去る領主ご一行を見送ったのであった。

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