かげの短歌

嗅土九三九

かげの短歌

もしもの時が来たならばその手を握り悔いなどはないと強がりたい


良き主たり得ぬうちにきみは逝き同じ死因で罰を受けたし


致死量に達することもあるほどに摂り過ぎたならどの親も毒


君のこと幸せにしたいのにごめんそれを成すには細く憎い首


心中を子に持ちかける心中を想うも想いきれるわけもなく


「うちたまに霊居るよね?」と洒落で言い「やっぱりそう?」と洒落でなくなり


慰めてくれた唯一は人でない気付いてはいたけれども無視した


罪のみを喰う怪物を育てればいずれそいつはその罪も喰う


今日だけのために刹那に生きた時明日も生きたくなったなら泣く


いるわけがないといるかもねのはざまそういうところにわたしはいるよ


太ももの裏に覚えのなき痣どこか誰かの容貌かおに似たむらさき、


今ならば応じてしまいそうで唱えるあじゃらかもくれんてけれっつのぱ


フォロワーのフォロワーという遠い人ではあるけれどその死はかなしい


知らぬ名で呼ばれて振り返れば知らぬ顔前世ではどうもと言われ


ビニール袋が白猫に見えた様に人に見えただけだって。きっと。


そうかもう大人になっちゃったんだねえもう遊べないねぼくときみたち


みんなそれぞれに地獄を隠してる釜茹で地獄や針山地獄を


何もかも怖い全部がどこまでも生きて往くことも死んで逝くことも


全部嫌。もうやめようか。なんちゃって。大丈夫。冗談冗談。


もしもの時が来たならばその手を握り楽しかったねと笑いたい

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