勇者になれなかったもの

ピノの一族

第1話 新しい人生

 『この世界はゴミだ。』


僕は、這いつくばりながら呟いた。


僕の名前は、佐藤颯太。高校二年生。特技もなければ、変わったところもなく、友達もいない、なんの変哲もないゲームが好きな陰キャだ。

僕は今、新作ゲームを買いに近所のショッピングモールその帰りに雑誌を買おうと思い、新作ゲームの入った袋を片手にコンビニに立ち寄った。どの雑誌を読もうか悩みながら立ち読みしていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声はどんどん近づいてくる。そして、その声は後ろで止まった。


「おい、そこのお前」


背中に汗がにじむ。ヤバい…絡まれた。

絡んできたやつらは僕と同じ高校のヤンキーの藤島と高田だ。僕は冷静にそして急いでこの場をしのぐ方法を考えた。しばらく考えているとそいつはさらに急かすように続ける。


「無視すんじゃねぇよ、そこのお前にいってんだよ!」


「ひゃ、ひゃい」


我ながら情けない声が出た。恥ずかしいななどと考えていると藤島が


「ブッハハハハハ。ダッセーな」


と案の定僕を馬鹿にしながら大笑いする。恥ずかしいが気が弱く臆病な僕は何も言い返せない。


「やめてやれよ、可哀想だろ。」


と高田が言っているが表情は明らかに笑っている。正直今すぐここから逃げ出したい。

なんでこんな目にあわなきゃいけないんだ。


「今、お金ないからさ〜。お金くれない?」


最悪だ。絡まれただけでなくカツアゲもされるのか。僕が何か悪いことをしただろうか、神に問いかけても返事はない。現実は非情だ。


「す、すみません。今はお金がなくて。」


「チッ、だりぃな〜。しゃーねぇからその袋だけでいいぜ」


それを聞き僕はつい反射的に、


「はぁ、ふざけんなクソ野郎!くたばれ」


と言ってしまった。

言い終わったのと同時に僕は冷や汗が止まらなくなる。

まずい。やらかした。終わったな、僕。

そんなことを考えていると強い衝撃とともに意識がとびそうになった。

殴られたようだ。

意識がはっきりしてきた頃には僕はコンビニの外までひきずられていた。

その後、2対1の喧嘩ともいえない一方的な殴りあいが始まった。

数分後、僕は地を這っていた。

藤島と高田はさっていた。


『この世界はゴミだ』


そう呟き、僕は痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がった。

そして一度、目をつむり深呼吸をした。

そしてゆっくりと目を開けるとそこには先ほどとは全く違う景色が広がっていた。

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