柿本教授の手記4

 喰ひに関して その四


 七月二六日。トレイルカメラについに『喰ひ』が映った。赤外線撮影のため白黒だが、イタチを捕食する動物の形が確かに映っている。

 しかし、これは猿ではない。四つ足をついて歩いている。大きさはツキノワグマほどだが、毛がとても長く、シルエットは犬や狼に近い。

 獲物の頭をくわえて、歯で器用に頭蓋を割って脳をほじくり出し、視神経をすすって食べている。気のせいか、体毛の先端が不規則に持ち上がっている。風の向きに逆らって毛が動いている。

 いや、気のせいだ。そんな動物はいない。

 いないはずだ。

 とにかく新種だ。姿を捉えたのだ。大学に映像を持ち帰って発表する。

 ただ、問題がひとつ。西沢さんが消えた。傷心だったから、家に帰ったのかもしれない。

 まあいい。何はともあれ成功だ。色々あったが、結果は大成功だ。

 こんな大型動物の新種を、それも日本で発見できるなんて。

 なんという名誉だろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る