#055

荷物を準備して間にレジーナから連絡があり、新兵器のテストをする場所を知ったアン。


そこは今いる森からはかなり離れたところのようで、彼女が移動手段を考えていると、ミントがジェット機を手配すると言う。


「その国なら一度行ったことがあります。すぐにでも父に連絡するので安心してください」


「そうか。なら、お願いするとしよう」


ミントは通信用のデバイスを取り出すと、早速父であるパロット··エンチャンテッドに連絡を入れてジェット機を手配。


返信がすぐに来て、明日の朝には迎えが来ることになった。


「どうやら父も新兵器のテストのついて知っていたようですね。今レジーナ女王がアンさんに指定した国にいるようです」


ミントの父パロットはレジーナと同じく連合国上層部の一人。


当然、新兵器のことは知っていてもおかしくないだろう。


アンはそう思うと、ミントとブレシングの食事を用意する。


その後、彼女たちは食事を済ませ、明日のためにもすぐに就寝することに。


子供たちがいないせいか、丸太小屋は静か、いや静か過ぎた。


そのため、アンは逆に落ち着かなかった。


だが強引に眠りにつき、明日の移動と新兵器のテストに備えた。


そして次の日になり、丸太小屋の前に一機の小型ジェットが現れる。


それは、ヘリコプターのように滑走路なしで垂直に上昇が可能な小型ジェット――スクリーミング·バードだった。


連合国が創立する五年前からある、今は亡き世界的大企業――エレクトロ·ハーモニー社製の飛行機だ。


着地したスクリーミング·バードからは、二人の男が降りてきてミントに向かって頭を下げる。


そんな彼らに、彼女も気さくに手を振って返していた。


どうやらミントの彼らへの態度の見るに、操縦者二人はパロットの部下で彼女とも顔見知りのようだ。


「このジェットなら、目的地に数時間で辿り着けるようですよ」


ミントがアンとブレシングにそう言うと、二人は彼女に続いてスクリーミング·バードに乗り込んだ。


二人の男はそのスーツ姿を見るに軍人とは思えなかったが。


アンとブレシングのことを知っているようだった。


名乗ってもいないのに名前を言い当て、慇懃いんぎんに挨拶をしてくる。


二人に向かってアンは無愛想に挨拶し、ブレシングも軽く頭を下げて返す。


そして、アンたちが乗り込むと小型ジェットは地面から上昇。


次第に小さくなっていく丸太小屋。


アンは窓からそれを見下ろしながら思う。


(ミントの父親がいるのなら、レジーナ女王や彼以外にも上層部の人間がいるのか……。新兵器のテストにわざわざ集まるなんて、少し変だな……)


パロットがレジーナの指定した国にいることに違和感を覚えたアンだったが。


自分が気にするようなことではないと、その考えを頭から消した。

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