#020

そして、電磁波を発射。


彼女の動きに合わせてブレシングもジェットパックで動き、インストガンの引き金を引く。


向かって来る二つの電磁波をピックアップブレードで弾いたリョウガは声を張り上げて叫ぶ。


「躊躇なしかッ! いいね、さすがは歴戦の戦士ッ! オレはストリング帝国軍准尉リョウガ·ワスプホーネットッ! よかったら覚えておいてくれよ、エヌエー·オーガニック中佐ッ!」


興奮冷めやらぬリョウガは高々に自らの名を名乗ると、Personal link(パーソナルリンク)通称P-Linkの脳波で回転させながら飛ばすマシーナリーウイルスの適合者専用の武器――RELAY-Gを操作する。


彼の周囲に浮いていた二つの円形のユニットが、光の刃を回転させてエヌエーとブレシングに遅い掛かる。


「これはッ!? 無線式なのッ!?」


「エヌエーさん気を付けてッ! そいつはマシーナリーウイルス保有者の脳波で動くRELAY-Gとかいう帝国の新兵器だ!」


銃剣タイプインストガンで円形のユニットを防ぎながら、エヌエーはブレシングの言葉を聞いて表情を歪める。


二対一という有利な状況となってはいるが。


相手がマシーナリーウイルスの適合者――いや、強制者なら、あまり意味がない。


エヌエーもブレシングも実力は高いとはいえ、二人は特殊能力など持っていないのだ。


「中尉殿もエヌエー中佐もやるねぇ。だが、いつまでRELAY-Gこいつらを避けられるかな」


P-Linkで無線誘導が可能になった円形のユニットの動きは、リョウガの脳波で動くため、通常のホーミング誘導する兵器よりもその動きは不規則だった。


前から来ると思ったら突然軌道を変えて来るユニットに、エヌエーもブレシングも反撃ができずに防戦一方だ。


「このままじゃ……うん? あれは……?」


そのとき、ふと地上のほう――街を見下ろしたエヌエーの目には、明るい緑色の髪をした少女の姿が目に入った。


そこには、避難していた住民たちとはぐれたと思われるミント·エンチャンテッドが、彼女たちのことを見上げている。


「くッ!? 逃げ遅れた人がいたのね……。ブレシングッ! あそこにいる子を回収して避難場所まで連れて行って!」


「ダメだ! エヌエーさん一人でこいつと戦うなんて無茶だよッ!」


「いいから行きなさいッ! 大丈夫だよ、ワタシはそんなヤワじゃないんだからッ!」


「……彼女を移動させたら、すぐに戻ります!」


ブレシングは歯を食い縛りながらも、エヌエーの指示に従った。


彼は離れた位置にいる電気仕掛けの仔羊ニコに頼めばいいとも考えたが。


ニコは身体に内蔵してある反重力装置アンチグラビティで空を自在に飛べでも、ジェットパックの速度には敵わない。


自分に頼んだエヌエーの判断は正しい。


ブレシングはエヌエーを一人置いていくのに引け目を感じつつも、彼女の指示通りに民間人の命を優先した。


「逃がすかよ! ブレシング·ダルオレンジッ!」


それに気が付いたリョウガは、エヌエーを襲っていたRELAY-Gを動かし、地上へと向かうブレシングを追いかけさせる。


そしてブレシングの身体を切り裂こうと、二つの円形ユニットが凄まじい回転をしながら彼の背中に襲い掛かった。


「させないッ!」


そんなブレシングを守ろうとしたエヌエーが飛び込んだいったが。


不規則に動くRELAY-Gによって、その身体を切り裂かれてしまった。


「エヌエーさんッ!?」


ブレシングの声も聞こえていないのか。


エヌエーはそのまま地上へと墜落した。

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