#017

歯を食い縛りながらも、メディスンは言葉を返す。


「だからといって、こんなやり方で良いのかッ!? 武力による制裁に意味がないことなど、君にもわかっているはずだッ!」


力で押さえつけるやり方は、ノピアが批判する連合国と同じだと、メディスンは怒鳴り上げた。


するとノピアは、フフと肩を揺らして穏やかな笑みをメディスンに返す。


《まったくもってその通りだ。私は自分がもっとも嫌うことをしている……》


「君はッ!? わかっていてやっているのかッ!?」


《すまんな、メディスン。私には時間がない。君ならこの戦場を必ず生き残ると信じ、ここで去らせてもらうとする》


「待ってノピアッ!」


《また会おう、友よ。次に言葉を交わすそのときこそ、私たちが直接戦うときだ》


「ノピアッ!!」


メディスンの叫びも空しく。


ノピアはジェットパックを起動させ、ファルコンヘッドの包囲を抜けてムーグツー内へと侵入していった。


だが、メディスンは彼を追撃しようとする兵らを止め、今はコロニーの外の守備に徹した。


「今は彼が虐殺などしないことを信じよう……。それよりも、これ以上やらせるわけにはいかん。 各ファルコンヘッドのメンバーに告ぐ! ベクトル艦隊を救助しつつ、帝国の連中をムーグツーへ近づけるなッ!」


――ノピアがメディスンの前から去り、ムーグツー内に侵入したとき。


アンは子供たちと共に避難場所へと到着していた。


もしものときのために造られた避難場所のシェルターには、先ほどまで祭りで騒いでいたすべての人間たちが押し込められている。


「もう大丈夫だ。あとはメディスンやエヌエーたちがなんとかしてくれる」


アンが何度も宥めていたのもあり、子供たちも落ち着きを取り戻していた。


そして、アン自身もようやくホッと胸を撫で下ろしていると――。


「誰かッ! あの子を、ミントを見なかったですかッ!」


悲鳴のような男の声が聞こえてきた。


どうやら男は、避難場所に辿り着く前にミントという人物とはぐれてしまったようだ。


(ミントというと、さっき放送していた娘か。となると、あの男がパロット·エンチャンテッド)


アンがそう思いながら娘を探すパロット見ていると、子供たちが彼女のことを見つめていた。


「うん? どうしたんだお前たち? あぁ……なんだ、そういうことか……」


それに気が付いたアンは、子供たちが何を言いたいのかを察する。


「……はぁ、お前たちの人の良さはブレシング譲りだな。わかったよ。私も手伝ってくる。だから大人しくここにいるんだぞ」


アンがそう言うと――。


子供たちは、去っていく彼女の背中を笑顔で見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る