#012

ブレシングに気が付いた帝国兵は空中で足を止め、その口を開く。


「オレはストリング帝国軍准尉、リョウガ·ワスプホーネットだッ!」


リョウガと名乗った帝国兵の青年は、自前の逆立てたツーブロック髪に手をやって誇らしげに流した。


そして、持っていたインストガンの銃口をブレシングに突きつけながら、相手を小馬鹿するような笑みを浮かべて言葉を続ける。


「こっちは名乗ったんだ。お前も名乗れよ」


「その必要は感じない……。それよりも大人しく投降してくれ。こっちは命までは取るつもりはない」


「なんだ? 初対面の相手が自己紹介したら自分も名乗るのが礼儀だろ? そんなことも知らないのか、お前は?」


「……僕は連合国軍中尉、ブレシング·ダルオレンジだ」


仕方がないと思ったのか。


ブレシングはリョウガがしたように階級と名前を答えた。


それを聞いたリョウガは、自分の右眉毛をつり上げる。


「へえ、オレとそんなに変わんない歳に見えるのに、まさか中尉か。それで、中尉殿の所属は?」


「メディスン大佐の部隊、ファルコンヘッド……」


「ベクトルじゃないんだな。ノピア将軍がずいぶんと認めていたメディスンって奴の部下か……。面白い、試してやる」


「くッ!?」


リョウガはインストガンを発砲。


ブレシングはこれを避け、先ほど帝国兵三人を倒したように武器の破壊を狙う。


ジェットパックをコントロールし、空中で身体を反転。


リョウガの後方へと素早く移動する。


「おッ! 速いなッ!」


何故か嬉しそうなリョウガは振り返ってインストガンを構えた。


だがブレシングは、電磁波を撃たれる前に、彼の持つインストガンを銃剣を突き刺す。


「おまけに手も速いッ!?」


ビリビリと音を立てながらリョウガの手からインストガンが落ちていく。


そしてブレシングは、武器を失ったリョウガにインストガンの銃口を突きつけた。


「武器がなければ戦えない。もう終わりだ。頼むから投降してくれ」


顔をしかめて言うブレシング。


その表情からは、彼がたとえ敵であろうと、無駄に命を奪いたくないと言っているように見えた。


だがしかし、リョウガは投降するどころか、突然肩を揺らし始める。


「お前、ブレシングとか言ったっけ? やるじゃん。さすがはファルコンヘッドのメンバーだけはある」


顔を上げ、ブレシングを見たリョウガが笑っていた。


ブレシングは、すでに武器もない状態で、何故か彼が笑みを浮かべているのかがわからない。


「じゃあ、そろそろこっちも本気を出すとするかッ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る