#006
《何をしていた?》
エヌエーから連絡を受けたメディスンは、彼女へ静かに訊ねた。
その声にはかなりの威圧感があり、彼が苛立っていることが伝わるものだった。
「ごめ~んッ! ちょっと街でアンたちに会っちゃってそれでッ!」
ホログラム映像で見えるメディスンの姿に頭を下げながら事情を説明するエヌエー。
メディスンとの出発前にまだ時間があったため、祭りで賑わう街の様子を見に行ったところ。
偶然アンたちと出くわし、気が付けば出発の時間を過ぎてしまっていた。
おまけに自分の身分証明書――IDカードを連合国軍の施設に忘れ、ニコが来てくれたおかげで中に入り、こうやってメディスンに連絡しているのだと。
エヌエーは平謝りしながら何度も頭を下げていた。
そんな彼女の姿に、メディスンは呆れながらもその神経質そうな顔で言う。
《まあ、幸いなことに港でトラブルがあったようだ。おかげで出発が遅れてる。今からでも間に合うから急いでこっちへ来い》
「了解ッ! じゃあ、今すぐ行くね」
メディスンにとエヌエーのやり取りを見てたニコが、本日二度目のため息をついていると、突然その身体をガバッと掴まれる。
そしてニコが気が付くと、先ほどと同じようにエヌエーの脇に抱えられていた。
「さあ、行くよニコッ!」
そう言って走り出すエヌエーに向かって、ニコは「なんだ私までッ!?」と大声で鳴いたが。
エヌエーの耳には入っていないようだ。
施設を飛び出し、途中で見つけた自動運転車を止めてメディスンのいる港へと向かう。
こうしてニコは、一度メディスンを見送った場所へまた行く羽目になってしまった。
「いやいや、間に合わないかと思ったけど。なんとかなりそうでよかった。これもニコとワタシの日頃の行いのおかげだね」
自動運転車の車内でホッと胸を撫で下ろしているエヌエーの隣では、ニコが乾いた笑みを浮かべていた。
ニコは自分が浮かべた笑みに気が付き、そのことに対して「まあ、こんなもんだよね……ハハハ」という言葉と、古い友人のことを思い出していた。
すると、その乾いた笑みは嬉しそうな顔をへと変わっていく。
「うん? なんか嬉しそうだねニコ?」
そんなニコの様子にエヌエーが小首を傾げると、電撃羊は「なんでもない」とばかりにその短い手を振って鳴いて返した。
――その頃。
港で足止めを食っていたメディスンは、信じられないものを目にしていた。
「なんだこれはッ!? 一体どこからの攻撃だッ!?」
それは、このスペースコロニーであるムーグツーの周りにあった連合国軍の大艦隊が、次々に落とされていく光景だった。
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