第48話 妖宝島での封印

 10分後,水香と桃実を乗せた雲禅13号は,毒瘴峠に着いた。水香は,桃実を抱いて,雲禅13号から降りて,雲禅13号をブレスレットに変えた。

 

 桃実を地面に置いて,彼女の顔を往復ビンタすることで叩き起こした。


 桃実「いててー,え? ここは? 毒瘴峠? 」


 桃実は,周囲を見渡すと,確かに何やら霧のようなモヤがかかっていて,そのモヤには,毒が含まれているのがわかった。


 酔いの気持ち悪さをしばらく我慢して,やっと少し落ち着いてきた。ここが毒瘴峠だと理解した。ということは,,,このモヤは,毒瘴?


 桃実「え? 禅子様は,この毒のモヤを吸ってもなんもないのですか? わたしは,妖蠍族なので,毒には耐性があるから平気ですけど」

 水香「大丈夫です。呼吸しなければいいだけなので」

 桃実「え? 呼吸しなければいいだけって,,,もしかして,禅子様は死人ですか?」

 水香「死人ではないと思いますよ。心臓は動いていますから。肺からきれいな酸素を取り込む代わりに,乳房から精気を取り込めばいいんです。返って元気百倍になりますよ。桃実さんもそうしたら?」

 桃実「・・・」


 水香は,確かに雲禅天女かもしれないが,それ以上に,人知で計り知れない化け物だと,やっと桃実は理解した。


 桃実「まあ,あれですね。できるだけ早くこの毒のモヤを抜けるほうがいいですね。こちら側です。ついて来てください」


 桃実は水香を連れて道案内をした。

  

 歩いて20分もすると,モヤが晴れてきた。毒瘴峠を抜けた。


 ここからは下り坂だ。さらに2時間ほど歩くと,急激な崖が出てきた。その表面は,コケやツタ類で覆われていた。その一角の場所にあるツタ類を横に避けると,岩石で出来たドアが出現した。桃実は,そのドアを力一杯押してドアを開けた。


 桃実「どうぞ,入ってください。ここがご主人様のアジトです」


 桃実は,水香を連れて奥へと入っていった。洞窟内部は,両面一杯にヒカリゴケで覆われているので,あたかも光りの通路を歩いているようだった。


 しばらく行くと,大きな空間が出てきた。壁面全体がヒカリゴケで覆われていて,満月の月明かりほどの明るさがあった。奥の方から,小川が流れるような音が聞こえた。


 簡易テントが5張ほど備え付けられていて,ヒト,または妖蠍の死体らしきものが並べられていた。 


 また,祭壇のような場所があり,そこには陣法が施されていた。


 「あら? お姉ちゃん? 今日は満月だから,大量の血を転送陣法で送るんじゃなかったの? それに,,,どうして,今,ここにいるの?」

 

 そう質問したのは,桃実の妹,桃子だ。彼女は,ヒト型の姿をしていて,水香と同じくらいの年齢のように見えた。


 桃実は,事の顛末をかいつまんで桃子に説明した。ついでに,隣にいる水香を次のように説明した。


 桃実「こちらは禅子様です。2種類のふたつ名があって,1つは,雲禅仙人の継承者,雲禅天女様,もうとつは『大妖怪・水香』様です。でも,,,ほんとうに化け物だから,決して怒らしてはダメよ」

 桃子「え? 雲禅天女様であって,『大妖怪・水香』様? さらに,怒らせてはいけない化け物? なんか,頭がパンクしそう」

 桃実「ともかく,禅子様ってお呼びすればいいのよ」

 桃子「了解で~す。禅子様,わたし,桃子っていいます。よろしくね?」


 桃子は,超かわいく挨拶した。たしかに愛らしい顔つきをしていた。水香は愛らしいというより,エロさを漂わす小悪魔的な美人だ。


 挨拶されたので,水香もそれに答えた。


 水香「禅子です。よろしく」


 それだけだった。それに,水香はほかにすることがあった。この洞窟内の空間には,多くの女性悪霊が漂っていた。水香は,霊力の帯を展開して,それらを包み込んでいって,自分の胸の中に取り込んでいった。その数,20体以上にもなった。取り込まれたヒトや妖蠍の女性悪霊は,水香の乳房の中に存在する『水香式悪霊曼荼羅界』で,下級性奴隷の身分からスタートしなければならない。


 桃子は,ここの施設内を水香に案内することにした。まず,紹介するのは,いまだ意識が戻らない彼女たちの主人,『蠍九郎』様だ。彼は,ヒト型のままで,毛布で覆われて寝かされていた。


 桃子「蠍九郎様は,当時,つまり,3年前ですが,齢13歳にして,気法術でS級後期にまで到達しました。ですが,その優れた資質のためか,兄上たちから疎まれてしまい,美女奸計の罠にはまって,腹部の丹田を破壊されてしまいました。その後,大王様から,用無しと疎まれて,着の身着のまま追放されました。お伴は,わたしたち姉妹だけでした。

 高位の妖獣に何度も襲われて,やっと命かながら,この地に逃げてきました。ですが,蠍九郎様は,妖蝙蝠族の『眠り呪詛』にかかってしまいました。早くて5年,遅くて10年間は眠りっぱなしという恐怖の呪詛です。

 解除方法は,わたしたちでは分かるはずもありません。そこで,妖蝙蝠のひとりを引っ捕らえて,解除方法を聞き出したのです。解除方法は存在しないのですが,乙女の血から抽出した精気を継続的に与えることで,3年までに短縮できることが分かったんです。

 そして,今日がその3年目なんです。姉は,満月転送陣法で,10人以上の乙女の血を献上するって連絡があったのですが,,,禅子様たちによって,阻止されてしまったようです」


 水香「なんで,こんな男を主人だと崇めるの? 丹田も破壊されたのでしょう? 大王さんの言うように用無しよ」

 桃子「小さい頃から仕えているので,今さら,ドライに考えることもできません」

 水香「つまり,彼が変に生きているのが問題なのね?」

 桃子「・・・」


 水香は,霊力の帯を展開して,蠍九郎の体を包んでいった。そして,精力と寿命エネルギーを奪っていった。


 3分後,,,


 蠍九郎は,老人のようになり,さらに,ミイラ状になって死亡した。蠍九郎の霊魂は,転生させることなく,霊力の帯によってくるまれ,無理やり,『水香式悪霊曼荼羅界』に収納された。蠍九郎の霊魂は,ここで下級奴隷身分から始めることとなる。


 悲しいことに,桃子や桃実には,霊力を目視することも感知することもできなかった。


 桃子「えええ? 蠍九郎様がミイラになって死んだ? うそー?!」

 桃実「蠍九郎様ー! なんてお姿に?! これって,呪いの一環なの?」

 桃子「わからないわ。でも,眠り呪詛で,そんな機能があるなんて,聞いたこともないわ」

 桃実「そうか!! もしかして,わたしたち,あの妖蝙蝠のやつに騙されたんだわ。乙女の鮮血から精気を抽出させることで,ミイラにさせる機能を発現させたんだと思う!」

 桃子「なるほど! そうだったのですか! くやしいーー,妖蝙蝠族を皆殺しにしましょう! その勢いで,蠍九郎様を追放した大王様や王子様たちも,殺してやりたいわ」

 桃実「そうね,でも,それには,,,」


 桃実は,水香に向かって土下座した。何かを依頼する時には,この方法が一番いいのはよく知っている。


 桃実「禅子様!禅子様! わたし,禅子様の奴隷でも,性奴隷でもなんでもいいです! 桃子も,禅子様の奴隷で,性奴隷になります! ですから,ですから,どうか,妖蝙蝠族を皆殺しにしてください! その後,妖蠍族の王族をも皆殺しにしてください! そうでないと,死んでも死にきれません!!」

 

 その言葉を受けて,桃子も同じように土下座した。


 桃子「禅子様! 奴隷にでも性奴隷でも,なんでもします!! 姉の依頼のついでに,人間の世界もぐちゃぐちゃにしてください! わたしたちの両親は人間どもに殺されたんです。その恨み,晴らさないで死ぬのは悔しいです!」


 水香は,桃実や桃子の依頼が,美羅琉の依頼と相反しないので,まあいいか,という気持ちになった。だって,水香は頼まれたらイヤとは言えない性格だ。


 水香「わかったわ。わたしに依頼するときは,イメージを念話で送るようにしなさい。できるだけ具体的なイメージにするのよ。あっ,それと,桃実,ヒト型に戻りなさい。その妖蠍の姿は好きではないわ」

 桃実「禅子様,承りました。では,もう妖蠍の姿は封印することにします」


 桃実は人間の姿に戻った。これで,もう,妖蠍の姿に再変身することができなくなってしまった。

 

 その後,桃子と桃実は,イメージを念話で水香に送る練習をした。2時間ほどで,どのようなイメージを送ったらいいのか,だいたい理解できるようになった。


 水香は,イメージのことはどうでもいいのだが,この世界にも,魔法と同じく,転送できる方法があることに,少々,驚きを覚えた。水香は,桃子に転送陣法について聞いた。


 水香「この転送陣法って,人も送れるの?」

 桃子「いえ,物体だけです。人とか動物は送ったことがないのでわかりません」


 その後,桃子は,妖蠍族に伝わる転送陣法の,図案などを示して,詳しく説明していった。しかし,途中で水香は聞くのを諦めた。


 水香「わかったわ。わたしの頭では理解できなってことが」

 桃子「・・・」


 だが,水香の頭の中に,転移陣法のイメージだけは,しっかりと記憶された。


 その日,桃子と桃実が,相談して,妖蝙蝠族を攻め落とす算段をどうするかを相談した。でも,結局,いい案が出なかった。


 桃子「結局,わたしたちが一緒だと,足手まといになってしまう。音波攻撃だって,半端ない威力だし,やつら,空を飛べるし,ここは,禅子様ひとりで,妖蝙蝠族のトップを殺してもらうしかないわ」

 桃実「そうね,わたしたちができるのは,禅子様が凱旋して戻ってくるのを待つくらいだわ」

 

 桃実は,水香に再度,土下座して依頼した。

 

 桃実「禅子様! お一人では,寂しいでしょうが,わたしたちが一緒だと,足手まといになってしまします。すいませんが,お一人で,妖蝙蝠族の王都を訪問して,国王を殺してください! もしくは,殺さなくても,奴隷にすればいいと思います」


 水香は,念話で雲禅13号に念話で聞いたところ,妖蝙蝠族の王都の場所は知っているとのことだった。


 水香「妖蝙蝠族の王都の場所はわかるわ。そこに,金銀財宝はあるの? それか,何か奇跡的な陣法はあるの?」

 

 その言葉を聞いて,桃子は眼を輝かせた。


 桃子「あります!あります! 妖蝙蝠族は人間の血を吸って生きています。だから,人間を彼らの領土に誘導させるため,金銀財宝や,奇跡的な陣法が手に入るウワサを人間界に流してきたんです。船で移動しないといけないような場所ですけど,でも,水先案内人が沿岸にいるはずなので苦労せずに行けるはずです。もちろん,人間や妖獣さえも転移させる奇跡的な陣法を構築できる妖道士だっているはずです!」


 桃子は,真偽の程がさだかでないことを,いかにも本当にあるかのように語った。


 水香は,人を転移させる陣法があることに眼を輝かせた。だって,水香はこの世界の人間ではない。もしかしたら,元も世界に戻れるかもしれない。別に元の世界に戻りたいとも思わないが,戻る方法があるなら,その方法は知っておきたい。


 水香「じゃあ,それを信じましょう。王様なら,金銀財宝や,その陣法の存在だって知っているわね?」

 桃子「もちろんです!禅子様!」

 水香「じゃあ,今から行ってくるわ。じゃーね」


 水香は,人の転移陣法を目的にすることで,雲禅13号に乗って妖蝙蝠族の王都に行くことにした。


 ・・・ ・・・

 桃子と桃実は,この洞窟の中で2人残された。ここでの後始末は,ミイラになった主人を丁重に葬ることぐらいだ。


 桃子は,主人の墓のために地面を掘りながら桃実に聞いた。


 桃子「お姉様,わたし,妖蝙蝠族の王都って行ったことないのよ。大きな河に隔てられているって聞いたことはあるんだけど?」

 桃実「わたしもないわ。大きな河って,海だっていううわさもあるわ。それに,渦巻きが至るところにあって,船で渡るには困難らしいわ」

 桃子「だから妖蝙蝠族の連中がその地を占拠しているのね?」

 桃実「たぶんね。大きな島らしいから,占拠して王都にするにはいい場所だったのかもしれないわ」

 桃子「わたしも空飛べたら,よかったのになぁ~ 妖蠍族って,毒の耐性があるくらいで,ほかに何の得意能力もないわ」

 桃実「フフフ,そう?」


 桃実は,奥に設置してある陣法の陣盤を,別に用意してあるものに取り替えていった。


 桃実「よし,準備はできたわ」

 桃子「え? この陣法って,映像陣法じゃないの?」

 桃実「そうよ。わたしの分体の小蠍子を,こっそりと禅子様の服に貼り付けてやったのよ。彼女,隠密行動できるし,あわよくば,禅子様を精神支配することだって出来るかもしれないわ。動画は無理だけど,小蠍子と連絡がついたら,彼から1日に100画ほどの映像を映し出せることができるわ」

 桃子「それはありがたいわ。禅子様の行動がほぼ理解できるって感じね?」

 桃実「じゃあ,試運転といきましょう」


 桃実は,その陣法を発動させた。


 ブォ~ン


 大きなスクリーンに,映像が出現した。それは,まさに大河とも,海ともつかない場所の上空から映し出された映像だった。


 桃子「うわぁ~,これって海なの? 渦巻きが凄いわ」

 桃実「やっぱりね。これでは水先案内人がいないと,船で移動するのは困難だわ。でもこれで,いつでも禅子様の動向がわかるってものよ」

 桃子「ともかくも,わたしたちの目的は,ご主人様を追いやった妖蠍族の王族たちよ。わたし,ここの整理がついたら,妖蠍族の王都に行って,王城に潜伏する準備をするわ。お姉様はどうするの?」

 桃実「わたしは,ここで禅子様の戻りを待つわ。それに,知っていると思うけど,わたし,『蟲使い』なのよ。この辺一帯の妖蜂を支配下に置くようにするわ。かなり強力な戦力になると思うの」


 桃子と桃実は,主人の埋葬を終えたあと,それぞれがすべきことをしていった。


・・・ ・・・

 水香は,雲禅13号にゆっくり飛ぶように依頼して,雲禅13号が知っている妖蝙蝠族の王都についての情報を語ってもらった。


 雲禅13号『妖蝙蝠族の王都は大きな島の上にあります。昔は,妖蝙蝠族だけでしたが,海の幸に恵まれているせいか,近年,他の妖獣たちもに集まるようになって,他の妖獣たちがそこに遷都しだしています。ある意味,『妖獣王都群』のような状況になっています。

 ほかの妖獣との争いを避けるために,妖獣王都群では,ヒト型に変身するのが原則です。すでに多くの妖獣が元の姿に戻れなくなっているといわれています』

 水香『ふーん,桃実みたいな連中が多いってわけね?』

 雲禅13号『はい,ですが,長い年月を経て,混血が進んできていて,中には,何種類もの妖獣の特異能力を受け継いで,優れた異能を発揮する強者が生まれることもあるようです』

 水香『ということは,敵の能力がわからない以上,迂闊に交戦するのは避けるべきってこと?』

 雲禅13号『はい,勝ちを急がないのであれば,どこかで,仕事をしながら,情報収集するのが無難だと思いますよ』

 水香『仕事ね,,,娼婦しか思いつかないわ』

 雲禅13号『・・・』

 水香『あっ,でも,傘次郎と剣で戦ったとき,彼の剣術を模倣したんだったわ。もしかして,女剣士として軍隊に雇ってくれないかしら? それだったら,敵の強さも分かるし,王様に接近することだって容易かもしれないわ』

 雲禅13号『水香様には,女剣士の姿がお似合いだと思いますよ,はい』


 雲禅13号はおべっかを言った。


 雲禅13号と水香との念話雑談が終わった頃,雲禅13号は,別の誰かの念話を聞いた。


 『フフフ,禅子様へのおべっか,お上手だこと!』


 雲禅13号は,びっくりした。慌てて,その念話の出所を探った。すると,雲形飛行艇の端の方に,雲に隠れて小さなサソリの形状した蟲を発見した。それは,桃実の分体,小蠍子だった。彼女は,水香の着物の表面に付いた後,雲禅13号に移動して身を隠していた。


 雲禅13号『お前,妖蠍族の者か?』

 小蠍子『やっと,わかったわね。そうよ。本体である桃実の分体よ。ほんとうは,禅子様の体に直接接触できればいいんだけど,でも,すぐにバレてしまいそうだったの。だから,雲禅13号,あなたの体に取り憑いたってわけ。フフフ,さすがわ『神器』だけあるわね。あなたの能力,超すごいわ』

 雲禅13号『なに? 俺が神器だって,どうしてわかるんだ? 水香様にもそこまでは言っていないのに!』

 小蠍子『わたし,ヒトや物の体表面に直接接触すれば,数分でそれらの能力を把握できるのよ。もしかして,あなた,自分の能力を全部,禅子様に開示していないわね? フフフ,下僕のあなたが,主人である禅子様にそんなことしていいの?』

 雲禅13号『何を? 貴様だって,水香様の奴隷じゃないか! こっそりと跡をついてきやがって!』

 小蠍子『わたしは,バレたって痛くも痒くもないわ。でも,お前はどうかしら? わたしが,お前の能力を禅子様にバラしたら,フフフ,信用なくしてしまって,とんでもないことになるわよ。試してみる?』

 雲禅13号『・・・』


 雲禅13号は,自分の隠された能力を誰にも知られたくない。あまりに強力な能力だからだ。それがたとえ水香であってもだ。


 雲禅13号『わかった。何が望みだ?』

 小蠍子『フフフ,いい心がけね。わたし,藤雨城では,禅子様にちょっと恨みがあるのよ。大事な役目をじゃまされてしまったわ。だから,禅子様にちょっとでいいから,惨めな気持ちにさせたのよ。協力してくれる?』

 雲禅13号『過度に行き過ぎたものでなければ,協力するのはやぶさかではないが?』

 小蠍子『じゃあ,それでお願いね? あなた,亜空間領域さえも構築できるんでしょう? しかも生き物さえもその中に収納できる。使い方によっては,天下無敵の能力よね』

 雲禅13号『ああ,そうだ。遥か昔,雲禅2号の時代だったが,当時の主人が,妖獣の軍隊をその亜空間領域に収納して,敵の城のど真ん中に放ったことがあった。敵は30分ももたずに全滅してしまった。しかも,女,子供までが死んでしまった。その死骸を見て,,,雲禅2号は誓ったそうだ。この能力は決して開示してはいけないって。それ以来,雲禅3号から,この能力の開示をしないことになっている』

 小蠍子『フフフ,そんな話,どうでもいいわ。とにかく,わたしをその亜空間に収納してちょうだい。その亜空間には,果物などの餌はあるの?』

 雲禅13号『果樹園の領域もあるから,そこに入れてあげよう。食べるには困らないと思う。おれと念話することもできる』

 

 雲禅13号は,小蠍子を亜空間領域の果樹園に収納した。


 小蠍子『わぉ~! すてきー! いろんな種類の果樹園があるわ。 まあいいわ,堪能するのは後にしましょう。

 ともかく,禅子様の能力がどれだけすごいのか,わたし,分からないけど,できるだけ,その能力を使わせないようにさせてちょうだい。できれば,奴隷の身分でしばらくの間,苦境な状況を経験させてやってちょうだい! そうでもしないと気が収まらないわ』

 雲禅13号『まあ,それくらいならいいかな? わかった。そのように仕向けてみよう』

 

 小蠍子と雲禅13号がそんな念話をしている間に,海とも大河ともつかない水域を越えて,大きな陸地が見えてきた。もっと上空から見れば島と呼ぶに相応しいものだった。


 その島は,人間界のいる青蒼大陸の10分の1程度の大きさで,直径200kmほどの大きさだ。ヒトはこの島を『妖宝島』と呼んでいる。宝物が多くあると噂されているからだ。だが,近年,そんな噂を信じるヒト族は誰もおらず,訪れようとするものもいない。


 雲禅13号は,妖宝島の上空を飛んで,妖獣王都群が視界に入ったあたりで着地した。


 水香は,周辺にある硬そうな樹木を切り倒して,そこから木刀を作った。鋼の剣がないので木刀で代用だ。少しでも女剣士の様相を呈するためだ。


 でも,水香は,自分の姿を見た。Iカップの大きな胸に,ちょっとお腹が膨らんでいる。しかも,胸の部分は,ブラジャーやサラシを巻いているわけではないので,着物の胸元あたりが何かで濡れている。良く見れば妊娠していることもバレバレだ。服装だって,真っ赤な着物姿で,かなり派手な格好をしている。さすがに,女剣士という出で立ちではない。


 でも,これから,妖蝙蝠族の王様を討伐しにいくのだから,別にどんな恰好でもいいとのではないかと,水香は自分を慰めた。


 妖獣王都群のどこが妖蝙蝠族の王都なのか,雲禅13号もわからない。そこで,雲禅13号をブレスレットに変身してもらい,ともかくも周辺を散策することにした。


 妖獣王都群の周辺地域では,農作物を育てていたり,養鶏・豚・牛・馬場があったり,乳製品の加工場があったり,青蒼大陸のそれと大差ない環境だった。


 もちろんスラム街もあり,娼館街や奴隷市場らしき場所もあった。その奴隷たちは人間の姿になっておらず半獣の姿だった。それでも,体の上半身は人間のそれと同じ姿であり,性的な行為も問題なくできるようだ。奴隷の首部分に『気爆首輪』が装着されていた。『気』を発動させると,首が破裂してしまい,即死は免れないというものだ。しかも,奴隷の管理者は,いつでもその『気爆首輪』とペアになっているカギをもっていて,取り外しもできるし,遠距離からその首輪を爆破させることもできる。


 水香は,奴隷たちを見て雲禅13号に念話した。


 水香『彼女たちは,奴隷でしょう? 救ってあげたらどうなるのかしら?』

 雲禅13号『水香様,自重してください。このような場所には,必ず,屈強な護衛がいます。 戦えば,水香様なら負けることはないでしょうが,でも,大騒動になってしまい,多勢に無勢,下手すれば殺されてしまいますよ』

 水香『わかったわ。何もしないほうがよさそうね』


 水香はその場から去ろうとした。だが,水香の行く手を遮る者がいた。それもひとりではない。5人ほどだ。皆,ヒトと同じような姿をしていた。しかも剣を持っていて,そこそこの手練れの剣士のようだ。


 剣士A「お嬢ちゃん,なんで木刀なんか持っているのかな? 女剣士のつもりなかな?」


 水香は,自分の行動を他人任せにするのが癖になっている。今は,雲禅13号だ。


 水香「13号,どうする? 一戦,交える?」

 

 雲禅13号は,小蠍子のことを思い出した。水香をしばらく奴隷の身になって苦労してもらうというものだ。そのためには,とにかく,暴れるのを自重してもらうことが肝要だ。


 雲禅13号『水香様,ここは敵地ですよ。少なくとも数日は,流れに任せましょう。戦うのは最後の最後でいいですから!』

 水香『そうね,そうするわ』


 水香「あなたたちは誰なの?」

 剣士A「それは,おれたちが聞きたい。見かけない顔だ。どこから来た?」

 水香「空から来たわ」


 「わはははーー」


 その言葉に,5名の剣士たちは,大笑いした。


 剣士A「そうか,お前,天然パー子だな? まあいい,これをつけろ! 気爆首輪だ」

 水香「いやだと言ったら?」

 剣士A「お前を気絶させて,無理やり付けるだけのことだ」

 水香「それって,奴隷になるってこと?」

 剣士A「ものわかりがいいな。そうだ。この地に最初に踏み入れたやつは,男でも女でも,奴隷になるのが決まりだ」


 水香は,ちょっとおかしくなった。だって,水香の胸に構築された『水香式悪霊曼荼羅界』も,同じようなものだったからだ。ならば,自分もその身になる必要がある。だって,この世界に来たときだって,同じようなものだったし,,,


 水香「わかりました。どうぞその首輪,わたしにつけてください。自分では使い方がわからないので」

 剣士A「抵抗するなよ。すれば,あの世行きだぞ?」

 

 水香「抵抗しません。眼を閉じますから,その間にしてください」


 剣士たちは,お互い顔を見合った。こんなに素直に奴隷の身分に甘んじる少女を初めてみた。


 剣士Aは,水香の首に気爆首輪を問題なく取り付けることに成功した。


 剣士A「よし,今からお前は奴隷身分だ。その豊満な胸なら,いくらでも客がつくだろう。一緒について来い」

 水香「はい」


 水香は流れに乗った。それに,命令されるのは心地良い。


 ここはスラム街だ。それも場末のスラム街だ。ゴミやら,変な臭いがプンプンして,ハエやらいろんな変な蟲が飛んでいた。あたかもゴミダメの中に出来たスラム街のようだった。


 しばらく行くと,平屋のボロボロの掘っ建て小屋が並んでいた。そこは,いろんな男連中が出入りしていた。防音設備もないので,中に何が行われていのか,誰でも容易に想像できた。


 剣士Aは,そこの管理人らしい老婆に水香を見てもらった。


 老婆「ほほお,これはこれは上玉だね。ここで娼婦をさすのは,もったいないくらいだわ。まあ,いいわ。お前たちは,今日は無料でいいわよ。それと,これは気爆首輪の代金と手数料だ。受け利なさい」


 老婆はそう言って,金貨30枚を剣士Aにわたした。その後,水香は,そのボロボロの1室をあてがわれて,そこで,客の言う通りにするように命じられた。水香は軽く頷いた。


 最初の客は,もちろん水香を連れてきた剣士たちだ。最初に水香の部屋に入ったのは剣士Aだ。


 この時,雲禅13号は念話で水香にアドバイスした。


 雲禅13号『水香様,ここは,流れに任せてください! 犯されようが,何されようがいいじゃないですか!』

 水香『・・・』


 水香は,自分のお腹をさすった。水香のとって,流れに任す,その意味は,これまでしてきたことをするということだ。ただ,これまでとは,少し状況が違っていた。というのも,水香を犯そうとしているのは,ヒト族ではない。妖獣族だ。それは,オーラを見ればすぐにわかった。


 水香は,本能的に,その妖獣族の異能を取り込みたいと思った。そのためには,,,



 剣士A「へへへ,やっとこの時が来た。おい,お前,裸になれ」

 

 だが,剣士Aが言えたのは,ここまでだった。彼は,この島で5割を占める妖蝙蝠族だった。


 水香は,霊力の層を彼の体全体に覆わせていって気絶させた。その後,彼のあの部分に霊力の針を差し込んで粘液を強制的に奪っていった。その粘液は,水香の体内に取り囲まれて,そこから妖蝙蝠族特有の異能力を取り込んでいった。


 その後,彼は精力と寿命を奪われてしまい,ミイラ状になって死亡した。


 気爆首輪は,水香にとって何の脅威にもならなかった。霊力には反応しないし,しかも,純剣気にだって反応しない!


 妖蝙蝠族の特異能力,それは音波攻撃だ。敵に放てば,気狂い状態にさせてしまう。しかも有効範囲は20メートルほだ。敵が至近距離にいるなら,簡単な命令なら音波に乗せて,精神支配させるも可能となるものだ。

 

 水香は,手慣れた手順で,遺体になったミイラを片隅に追いやって,シーツをその上に被せた。


 その後,水香は,次に待っている者を部屋に入れた。彼は妖蠍族だった。水香は以前と同様に,彼を気絶させ,彼のあの部分から霊力の針を刺すことで粘液を吸収して,彼の異能力を取り込んでいった。


 妖蠍族の異能力は,このヒト型の体でも,爪から毒を相手に注入することができることだ。それ以外に,一部の妖蠍族だけが受け継ぐことができるようだが,蟲を使役することもできる。つまり,蟲と意思疎通が可能となる。その異能力は驚くべくべきものだ。その異能を発動させるためには,遺伝的に伝承された八芒星の陣法を頭の中でイメージする必要がある。だが,水香にとって,そんなイメージを構築するのは朝飯前だ。


 その後,彼は精力と寿命を奪われてミイラとなった。その遺体は,同じく片隅に積み上げられてシーツで覆い隠した。


 水香は3人目の剣士Cを部屋に入れた。彼は妖鷲族だった。水香は,以前と同様に,彼を気絶させて奪った粘液から彼の異能力を取り込んでいった。


 彼の異能は,体重をほぼゼロにして,手から羽を生やせて空を飛べることだ。彼の場合も遺伝的に伝承された陣法が関与していた。それは,反重力陣法だった。


 水香は,この陣法に強い興味を持った。


 水香「これって,ミイラを空中に飛ばせるってこと?」


 水香は,剣士A,B,Cの3名のミイラの体に,その反重力陣法を植え付けた。すると,それらの遺体は,徐々に空中に浮遊していった。水香のいるぼろぼろの部屋は,天井の一部分に穴が開いていて,そこからそれらの遺体が空中に舞い上がっていった。そのうち,その反重力陣法の効果が切れて,地表に激突する運命だ。どこに落ちるのか,そんなの水香が知るはずもない。


 外で待っていた剣士Dと剣士Eは,絶対に何かおかしいと思った。なんで,以前の3名の剣士たちは,部屋から出てこないのか? 剣士DとEは危険な臭いを感じて,その場から去っていった。


 だって,そもそもだが,見知らぬ女子が木刀1本を背にして,こんなところを歩くのは絶対におかしい。妖鷲族の連中が本土から乙女をさらって飛んで来るのなら分かる。もしくは,何十人もの乙女たちが,気爆首輪を付けられて行列になって来るのもわかる。それは船で運ばれた場合だ。でも,水香の場合は,どうも説明がつかない。特殊な異能があるとしか思えない。ここは,もう彼女に関わるのは避けるに限る。


 その後,水香は,管理人である老婆の手引きで,見知らぬ乞食どもの相手をさせられた。というのも,巨乳で美人で,しかもヒト族だ。得てして妖獣族はヒト族に恨みがある。その腹いせに水香を犯せるのだ。客ならいくらでもいた。


 妖蛙族,妖蛇族,妖狐族,妖狸族,妖豹族,など,この島いるほとんどの妖獣族の連中が,水香の部屋に入っていった。だって,場末のスラム街だ。水香を犯すのに,金貨や銀貨は必要なく銅貨だけでいい!


 水香にとっては,同じ事を繰りかえすだけだ。次々に奪った粘液から異能を吸収できるので,とてもありがたかった。かつ,客の方は例外なくミイラにされて,空いた天井から上空に飛ばされていった。いくら満月で明るいからといっても,妖目(人目)にはつきにくかった。


 水香にとって,同じ種類の妖獣族の粘液を2度も取り込む必要はない。取り込んだことのある妖獣族の2人目以降の客は,部屋に入るやいなや,気絶させられて精気と寿命エネルギーを奪われて,反重力陣法を発動されて天空に飛ばされた。その所要時間わずか4分!


 しかも,水香は,途中から,なんか面倒くさくなってきた。まずは,邪魔な気爆首輪を霊力の刃で切断して外した。それだけでは面白くない。この気爆首輪がどの程度の破壊力があるのかを調べるため,その指輪に,『気』による水の矢を放ってみた。


 ボン!


 その気爆首輪は,弱い爆発音を上げて爆破した。


 水香「あらら,こんな程度なの? これなら,別に霊力の層で覆わなくても,素の体でもかすり傷さえも与えることは無理だわ」


 水香は,気爆首輪の性能の悪さにガッカリした。でも,そんなこと言えるの,この世界広しといえど,水香くらいなものかもしれない。


 次に,霊力の場を展開して,希有な妖獣を探すことにした。半径2kmの範囲に絞って,これまで取り込んでいない妖獣を探した。もし,発見すると,その妖獣を殺して,あの部分を強制的に切除して,水香の体内に収めるという荒料理を行った。もし,同じ男性の妖獣の場合,一切の容赦もなく,その場で霊力の矢で殺した。だって,いずれ敵になる可能性があるからだ。


 その結果,一晩で3000人以上もの妖獣族の連中が消滅,もしくは殺されていった。


 この平屋建ての長屋には,100名ほどの女性スタッフがいるのだが,客がまったく来なくなったという前代未聞の状況に陥った。

 ・・・ ・・・


 雲禅13号は,水香が男どもをミイラに変える行動から,大量虐殺に変えていったことを,小蠍子に念話で説明した。小蠍子は,なんとしても水香にギャフンと言わせたかった。


 小蠍子『禅子様の能力って,いったいなんなの?』

 雲禅13号『さあ,さっぱりわかりません』

 小蠍子『いいから,とにかく,その大量殺人の能力を封印させなさい! そうしないと,あんたの隠している能力を禅子様にバラすわよ!』

 雲禅13号『・・・,わかった。説得してみる,,,』


 雲禅13号は,水香に念話した。


 雲禅13号『水香様,一度に大量殺人を行うのは,人目を引きすぎます。自重してくれますか?』

 水香『え? どうして?』

 雲禅13号『だって,水香様は,確か,仙人にも神人にも,その特異な能力のせいで,眼をつけらているのでしょう? もし,その特異な能力を発見されたら,水香様だってバレてしまいます! すぐに,殺されてしまうかもしれませんよ。その能力はしばらく封印すべきです』


 水香は,確かにその通りだと思った。


 水香『確かにそうかもしれないわね。じゃあ,しばらく封印しようかな?」

 雲禅13号『ぜひそうしてください。それと,すでに,水香様は,雲禅天女だとバレていますから,気法術も封印するほうがいいと思いますよ』

 水香『何,それ? じゃあ,どうすればいいの?』

 雲禅13号『それでも,水香様には,剣技があるじゃないのですか。もともと女剣士でやっていくって,言っていたんじゃないですか? そうすることで初めて,水香様を狙う仙人や天女,さらに神人から,眼を付けられることがなくなると思いますよ』

 水香『・・・』


 水香は,剣術など,ぜんぜんしたことがない。ただ,傘次郎の剣技を真似ただけに過ぎない。でも,それでもいいかと思った。霊力や『気』を封印しても,まだ,剣術や,さきほど奪った妖獣たちからの異能がある。それで,様子をみようか,,,


 水香『そうね。13号のアドバイスに従うわ』

 雲禅13号『だったら,今すぐ,ここから逃げましょう。大量殺人をし過ぎたようだわ』


 雲禅13号は,ブレスレットから雲飛行形態に変化して,水香を乗せて,すぐにこの地を去った。島の外周をぐるっと大回りして,島の反対側から低空飛行で陸地すれすれの高さで,妖獣王都群の方向に飛行した。


 雲禅13号『妖獣王都群まであと3kmほどです。ここからは徒歩でお願いします』

 水香『わかったわ』

 

 水香は,雲禅13号から降りて,雲禅13号をブレスレットに変身してもらった。


 雲禅13号『水香様,ちゃんと大量殺人の技と気法術は封印するのですよ。それが水香様のためなんですから』

 水香『でも,霊力と気法術を封印するのって,どうやるの?』

 雲禅13号『・・・,ちょっと待ってください。調べますから」


 雲禅13号は小蠍子に念話に聞いてみた。小蠍子は,封印の方法を知っていたので,その方法を雲禅13号に伝えた。


 雲禅13号『水香様,封印の方法がわかりました。それで,封印を解除する暗号が必要です。水香様が一番聞きたい言葉を暗号にするといいと思います』

 水香『聞きたい言葉? そうね,,,決めたわ! それは,,,『おれの命令に従え!』という言葉かな?』

 雲禅13号『・・・』


 雲禅13号は,水香がアホではないかと疑っていたが,その疑いは確信にかわった。


 雲禅13号『では,わたしが封印を施しますので,そこの草むらでちょっと横になって,眼を閉じてください。ちょっと,蟲を使いますので,少々,むずがゆいですが,我慢してください。10分ほどで終わりますから』

 水香『わかったわ』


 水香はまったく疑わず,言われた通りに横になって眼を閉じた。


 ブレスレットから一匹の小さいサソリの形状をした蟲が姿を現して這いだしてきた。小蠍子だ。彼女は,ゆっくりと水香の体を這っていき,水香の額部で止まった。


 ボァー!


 封印陣法が発動した。そして,眼陣盤部に,篆書体で『霊力』,『気法術』と刻み,その下側に水香が設定した暗号が篆書体で白抜き文字のように空洞のように刻んでいった。


 小蠍子は,その封印陣法を水香の額の中に植え付けた。


 フィーン!


 水香も自分が設定した暗号が何なのかも封印されてしまい,それよりも何よりも,水香自身が,霊力や『気』が使えること,さらに,過去に,霊力や『気』を使ったことさえも封印されてしまった。それは,水香にとっては,記憶障害と同じことを意味する。


 封印を解除する方法はただひとつ。他人から設定した暗号を言われることだ。


 小蠍子『ふぅ,やっと封印が完成したわ。わたしの役目って,水香に封印することだったのかな? フフフ』


 小蠍子はそんなことを思いながら,また,ブレスレットのところに戻り,雲禅13号に亜空間内に収納してもらった。


 小蠍子『雲禅13号,もう水香に念話で声をかけるのは,封印が解けるまでは,禁止よ』

 雲禅13号『え? どうして?』

 小蠍子『所詮,この手の封印方法は,完璧なものなんてないのよ。ましてや,禅子様のこと,なんかの連想で,封印が一部解除されてしまうかもしれないわ。一番,連想されやすいのがあんたよ』

 雲禅13号『それって,わたしが封印を解除する暗号にもなるってことですか?』

 小蠍子『その可能性があるかもしれないってことだけよ。でも,万が一の時は,禅子様に念話で声をあけてもいいかもね』

 雲禅13号『あんた,意外といいところあるじゃん』

 小蠍子『・・・』



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