第43話 花馨天女とシイラの門出
その日の午後,ひとりの女性門弟が,水香の教官宅を訪問した。
彼女の名前は伊治子。雑役係の門弟だ。伊治子は美羅琉教官にあるお願いをした。
伊治子「美羅琉教官様,この書類にサインお願いします」
美羅琉はその書類をみた。それは,野外の薬草採取の行動計画書だ。参加者は雑役係4名,場所は3帝森林,3泊4日の予定で,美羅琉が監督者として同行するという趣旨のものだった。
美羅琉「え?どうして,わたしが同行しないといけないの?」
伊治子「野外採取には,剣術担当の教官が同行するって決まりがあるんです。サインいただければ,1時間後にでも出発したいのですが?」
美羅琉「イヤだと言ったら?」
伊治子「あの,,,教官の方は,特別な理由がないと拒否できない決まりだって,宗主様が云っていました。サインしてもらえないのなら,宗主様に訴えるだけですけど,,,」
美羅琉「・・・」
美羅琉は,常勤の教官になる条件として,野外活動の監督業務も引き受けることを思い出した。ただし,参加すると特別手当が付く。もっとも,その費用は野外活動する門弟が全額負担しなければならない。教官へは,1日金貨3枚を支払うので,4日間で金貨12枚になる。
美羅琉は,断るべき『特別な理由』を探した。だが,いくら探しても,適当な理由を発見することはできなかった。彼女は,林弦宗の敷地内ならともかく,敷地外に出るときは,必ず水香と一緒と決めている。それが美羅琉の,この凡界での生き残り戦略だ。
美羅琉は,水香にも一緒に行くように泣きついた。水香の欠点,いや,美点かもしれないが,それは,頼まれたらイヤとは言えないというものだ。結局,シイラをひとり残して,水香も同行することになった。
ただし,水香は歩くのはイヤなので,雲禅13号に乗って,美羅琉の上空100メートルほど離れて,寝っ転がりながらの移動だ。水香にとっては,移動はすべて雲禅13号に任せられるので,寝っ転がりながら雲禅仙人から与えれた記憶をレビューしていった。例えば,彼が何年もかかって修得した気篆術の『雷撃』にしても,水香にかかれば,一瞬にして修得されてしまう。
ゴロゴロゴロ! ドッカーン!
伊治子たち4名と,その背後から少し離れて付いて歩いている美羅琉は,ビックリしてしまった。
伊治子「え? どうして,雨雲でもないのに雷がすぐ近くに落ちるの?」
寺烏子「もしかして,天罰が下ったの?」
芽衣子「まさか,わたしたち,いじめはしたけど,他に悪いことはしていないわ」
穌梨子「でも,あのいじめ,相当,ひどかったわ。だんだんエスカレートしていったし」
伊治子「今は,いじめのことはどうでもいいのよ。落雷に注意して進みましょう」
寺烏子「落雷に注意するって,どうするの?」
伊治子「・・・,わからないわ」
少し後方から歩いていた美羅琉は,念話で水香に連絡をとった。
美羅琉『今の落雷って,禅子様がしたのですか?』
水香『そうよ。ちょっと『雷撃』の練習しただけよ。あの四人組を狙ったけど,ぜんぜんヒットしなかったわ。命中精度悪いのが欠点ね』
美羅『え? どうして彼女たちを狙ったのですか!』
水香『彼女たち,シイラを虐めた連中なんだって。この旅で事故死したってかまわないわ』
美羅琉『・・・』
美羅琉は,水香を連れてきたのが正解だったのかかなり不安になった。
出発して,5時間ほどが過ぎ,日も完全に暮れて来た。伊治子たちは,この辺の見晴らしのいい場所で野営することにした。彼女たちの荷物は,簡易テント,着替え少々,栄養丹,水,紅茶類,砂糖,粉ミルクなどの飲料セット,お湯を沸かす鍋くらいなもので,リュックにちょうど収まるほどの大きさだ。
石を集めてかまどを作り,小枝を集めて火を起こして,近くの小川から水を汲んで,お湯を沸かした。また,その周囲にテントを組んだ。
美羅琉は,彼女らの一連の行動を見ると,手際がいいので,かなり手慣れているのがわかった。
美羅琉も,持参したテントを設営して,紅茶をお裾分けしてもらった。美羅琉の夕食は,シイラが準備してくれた弁当だ。
幸い,雲がさほど多くなく,半月の月明かりなので,目が慣れると,さほど不自由を感じない。
美羅琉は,紅茶を飲みながら,伊治子たちのレベルを聞いた。
伊治子「わたしたち,いずれも中級中期なんです」
美羅琉「それって,内弟子の連中と変わらないじゃない」
伊治子「そうなんです。雑役係では,わたしたちはトップレベルです。でも,進級試験で,いつもドジってしまって,いまだ外弟子にもなれなくて,,,」
美羅琉「なるほど,,,それで,いろいろいじめてきたんだ」
伊治子「いじめなんて,人聞きの悪い。上位者として,教育的指導をしてあげたんです」
美羅琉「そうね,,,ともかく,あなたたち,気をつけなさい。わたしが手助けできるの,妖獣とかくらいよ。さっきの雷なんか,どう間違ったって防ぐことができないんだから。でも,あなたたち,剣を持っていないのが幸いしたわね。持っていたら,やばかったわよ」
伊治子たちは,顔を見合わせて,安堵の表情を示した。
伊治子「あの,これから,どう注意すればいいのでしょう?」
美羅琉「そうねえ,,,並んで歩くのはダメ,せめて1メートル以上は離れて歩くことかな? 被害を最小限に留めれるわ」
伊治子「もしかして,美羅琉教官,落雷の原因,知っているるのですか?」
美羅琉「・・・,いや,知らないわ。でも,わたしの直感って,意外とあたるのよ。注意に越したことはないわ」
伊治子たちは,美羅琉がウソをついていると思った。
しばらくすると,,,
「やあやあ,奇遇だね。こんな物騒なところでキャンプとは。俺たちも,一緒に話しに加わってもいいかな?」
そう声をかけて来たのは,卑猥な顔をした男で,背に鞘つき長剣を背負っていた。その背後に,9名ほどの仲間もいた。皆,同じように長剣を背負っていた。明らかに,どこかの武林宗の門弟のようだった。
背後の9名の連中は,すぐに,長剣を鞘から出して,伊治子たちの周囲に回り込んで,刃を彼女たちの背に向けた。
伊治子「え? これって,どういうこと?」
さきほど声をかけた男が返答した。彼は同僚たちのボスだ。
ボス「女の子5人だけで旅するのが危険なの,わからないの? それとも誰か他に護衛者でも,いるのかな?」
ボスは,意外と慎重だった。
ボス「おい,伴次郎と佐武郎は,周囲を偵察してくれ」
そう呼ばれた2名は,軽く頷いて長剣を持ったまま,周辺を偵察しに行った。
彼らが,100メートルほど離れたとき,,,
ゴロゴローー!ドォーーン!
雷が落ちた。その雷は,伴次郎と佐武郎の持っている剣に直撃した。
100メートルほど離れているボスたちは,雷の光りと轟音する方向に顔を向けた。それは,伴次郎と佐武郎たちが出向いた方向だ。
ボス「何? こんな天気に雷だと?」
ボスは,大声で伴次郎と佐武郎に呼びかけた。
ボス「伴次郎! 佐武郎! 無事か? 返事しろー!」
だが,彼らからは返事は返ってこなかった。部下のひとりが恐る恐る返事した。
部下A「もしかして,伴次郎と佐武郎,やつら,雷に打たれたんではないでしょうか?」
ボス「まさか,そんな偶然あるわけないだろう。健次郎と波三郎,ちょっと様子を見に行ってくれ」
そう云われた彼らは,イヤな予感がした。でも,渋々雷のした方向に行くことにした。
彼らは,剣は危険だと思って,剣を途中で地中に刺してから,雷のした方向に向かった。
・・・
100メートルほど上空に漂っている雲禅13号にいる水香は,のんびりと雲禅13号の報告を聞いていた。
雲禅13号『水香様,また2名が離れていきます。たぶん,雷撃死した2名のところに向かうと思います。あっ,途中で剣を放棄しました。まずいですね。これでは,雷撃の目標が定まりません』
水香『気篆術の『雷撃』って,ほんと使えないわね。雲禅仙人の記憶を探っても,命中精度をあげる方法なんてなかったわ。こらっ,13号,いい方法考えなさい』
そんなこと,云われても雲禅13号はどうしようもない。
雲禅13号『あっ,その2名が雷撃死した2名のところに来ました。今なら,雷撃死した2名の剣を目標にできます』
水香『了解よ』
水香は,気篆術で篆書体の『雷撃』という文字を頭の中で思い浮かべて発射させた。水香は,手の指など使わなくても気篆術を発動させれる。イメージだけで発動させてしまう。すでに,神人レベルさえも超えてしまった。
ゴロゴローー!ドォーーン!
その2名は,水香が放った雷撃の直撃を受けてしまった。
ボスは,再び落雷が起きたのをみて,マズイと思った。これは確実に,誰かの術によるものだ。
部下A「守さん,どうします? なんか,ちょっとヤバイ感じですよ。誰か,雷撃をあやつる術者があの辺りに潜んでいるはずです」
守と呼ばれたボスは,どうするか躊躇った。たぶん,4名は雷撃で殺された可能性が高い。しかも,敵は,少女たち5名の仲間に違いない。
ボスは,雷撃が落ちた方向に向かって大声で叫んだ。
ボス「誰だかは知らないが,降参して出て来い! さもないと,ここにいる女をひとりずつ殺していく! 冗談ではないぞ! 今から,5分後に出て来ないと,ひとりずつ殺す!」
この話を聞いて,水香がまったく動じないので,雲禅13号が心配になった。
雲禅13号『水香様,どうしますか? このまま見捨てるのですか?』
水香『そうね。あのままほっておいても,美羅琉だけは助かるでしょう。他の連中は死んでもかまわないわ』
雲禅13号『そうかもしれませんが,美羅琉様は,門弟たちの監督役ですよ。責任が問われて,教官職が首になってしまいますよ。そしたら,水香さまも,ふたたび路頭に迷ってしまいます~。わたしも,根無し草で,どこまで移動させられるやら,,,』
水香『・・・,へえ,13号,お前,意外と頭が回るのね』
雲禅13号『へへへ,それほどでも』
雲禅13号は,ちょっと自慢した。全然たいしたことのないアドバイスなのだが,,,
今,水香は,そんなことよりも,雷撃の命中精度を引き上げることしか考えていない。
水香『ねえ,13号,雷撃の威力を弱くして,あいつら6名に雷撃を放ったら,どうなると思う?』
13号『たぶん,誰かの剣にヒットするでしょうが,その持ち主だけは,持っている手が痺れて,剣を落とすでしょう』
水香『それ,信じてみようかな?』
水香は美羅琉に念話した。
水香『美羅琉,今からそこに弱い雷撃を放つわ。『気』の防御を展開しなさい。誰かが,剣を落としたら,後はあなたに任すわ』
美羅琉『禅子様,こいつら,殺していいのですか?』
水香『もし出来れば,気絶させてちょうだい。無理なら殺して構わないわ』
美羅琉『了解でーす。そのときの状況で判断しますね~』
水香『では,今から10秒後に放ちます』
美羅琉は,頭の中で10秒数えて,その直前に,自分の周囲に防御結界を構築した。
ゴロゴローー!ドォーーン!
その威力は,さきほどの雷撃よりもかなり弱いものだった。6名のうちの,ひとりの剣に落雷した。その部下は,剣を持っている右腕が焦げた。
ドタ!
彼は,剣を地に落として,そのまま気絶してしまった。その場所は,ちょうど美羅琉の斜め後ろだった。
美羅琉は,すぐに防御結界を解除して,自分が動ける最大の速度でその剣を拾った。
シュパー!ーー
伊治子たちを囲っている5名の男たちの首は,一瞬にして首が胴から離れて地に落ちた。
「キャーー!」
「イヤーー!」
「・・・?!!」
伊治子たちは,目の前でヒトの首が飛び,血しぶきをまともにその体に受けて,4名全員,失神してしまった。
美羅琉「なんとも,胆力のないやつらだこと。でも,この剣,両刃だがら,気絶させれなかったわ」
美羅琉は,水香に念話した。
美羅琉『禅子様,男連中を殺してしまいました。でも,雷撃での支援助かりました』
水香『あ~あ,もっと雷撃の練習したかったな。なんか,もう少しで精度アップできそうなのよ』
美羅琉『これから,いくらでも機会がありますよ』
美羅琉は,男どもの死体を,片隅においやった。しばらくして,伊治子たちが目を覚ましたので,彼女らと一緒に小川で体や衣服に付いた血のりを取り除いた。
その後,男どもが,300メートルほど離れた場所でテントを張っていたことがわかり,そこに移動して彼らの荷物から金目のものや,有益そうなものを奪った。
伊治子は,彼らの荷物から身分証と行動計画表を発見した。
伊治子「美羅琉教官,どうやら,彼ら,桜霞宗の連中で,いずれも内弟子のようです」
美羅琉「桜霞宗?」
伊治子「はい,松風城から南西方向に150kmほど移動したところに,藤雨城があります。その近くにある武林宗です。主に剣術の修行を中心にしている実践主義の武林宗だと聞いています」
美羅琉「なんか,桜霞宗という名前と実体が一致しないわね」
伊治子「それには,理由があって,そこの先代の宗主は,超美人だったので,むさ苦しい門弟たちが集まってしまったんです。逆に,女性門弟は嫌気がさして,他の武林宗に去っていきました。当時は有名な話でした」
美羅琉「へえー,わたしみたく,超美人って,困りものなのね~」
伊治子「・・・」
伊治子は,さらに,詳細に行動計画表を診た。彼女の手がちょっと震えた。
伊治子「美羅琉教官,あの,,,この行動計画表によれば,,,今回の参加メンバーは,内弟子50名だそうです。しかも,同行の教官は,長老2名,かつ,天女,,,花馨天女も同行しているみたいです」
美羅琉「なにー? 天女?」
美羅琉は,その行動計画表をつぶさに見た。彼女は,その映像を,そのまま念話で水香に送った。今,彼女のすべきことは,とにかく,最後には,水香に尻拭いをしてもらわねばならない。そのため,すべての情報を水香にすみやかに送ることだ。
周囲を警戒していた伊治子の同僚の寺烏子が叫んだ。
寺烏子「誰か来ます! 前方200メートルくらいです!」
美羅琉「ヤバイわ。撤収ー! すぐに戻って,テントを回収!」
伊治子たち「了解ー!」
伊治子たちは,慌てて走り戻り,自分たちのテントなどを急いで片付けた。
美羅琉は,ともかくここから,一刻も早く去ろうとした。
「あら? 血の臭いがすごいわね。ここで殺人が行われたのね?」
美しい声の音がした。美羅琉が振り向くと,そこには,声の音と同じくらい美しい女性がそこにいた。彼女は花馨天女だった。その背後には,長剣を持った2名の男性がいた。桜霞宗の長老たちだ。彼らのレベルは,すでにS級初級に達していた。
美羅琉は,すぐに自分の見ている視界の映像を念話で水香に送った。
長老のひとり,牧葉長老が1歩進み出た。
牧葉長老「どうやら,ここで殺人が行われたようですね。いったいどうゆう状況かな? 説明してもらえますか?」
その声が発したと同時に,水香から美羅琉に念話連絡があった。
水香『5秒後に中規模の『雷撃』を放つ練習をするわ』
美羅琉『了解』
美羅琉は,伊治子たちに自分の背後に回るように命じた。
美羅琉「ご,,,よん,,,さん,,,にぃ,,,いち!」
美羅琉は,自分と伊治子たちの周囲に『気』の防御結界を構築した。
ゴロゴロゴロー! ドドーーン!
その雷撃は,牧葉長老の剣とそこから2メートルほど離れたもうひとりの長老に直撃した。
しかも,その中間に挟まれた花馨天女にも直撃の影響が生じた。
ドタ,ドタ,ドター!
長老2名と花馨天女が地に倒れた。彼らの衣服は,黒焦げになって煙が出てきた。体も黒炭になってしまった。
彼らの後方から,門弟たちが駆け寄ってきた。その数,総勢40名! 全員,男性門弟だ。
水香は,さらに美羅琉に念話した。
水香『今度は,10秒後に,大規模の雷撃を放つ練習をするわよ。もう一度,結界を張ってちょうだいね~』
美羅琉『ええーー? 大規模?? わっ,わかったわ』
美羅琉も,何がなんだかわからないが,カウントダウンした。
美羅琉「9,8,,,,,5,4,3,2,1,最大,防御結界ー!」
美羅琉は,最大防御結界を張った。
その防御結界を張ったという念話を受けて,水香は,雲禅仙人から受け継いだ大規模の『雷撃』をイメージして,駆け寄ってくる40名ほどの連中の中央付近めがけて放った。
ゴロゴロゴローー,ドドドドドドーーー!
「グーあー!」
「ぎぇーー!」
「きいいいー!」
などなど,悲鳴にもならない声が聞こえた。その声とともに,40名全員が地に倒れた。
ここで,美羅琉のすることは,とどめを刺すことだ。
美羅琉は,背後にいた伊治子たちに命じた。
美羅琉「お前たち,あの向こうで倒れている連中の喉元をすべてかっきって来なさい。ひとりも生かしてはダメです!」
伊治子たち「・・・」
美羅琉「早く行きなさい!」
伊治子たち「はっ,はい!」
伊治子たち4名は,慌てて駆けだして行った。
美羅琉も,右腕から『気』の剣を出して,一番手前で倒れている黒炭になっている長老の喉を斬った。そして,同じく黒炭になっている花馨天女の喉を斬ろうとした。
美羅琉「え? 刃が通らない? 何?」
バシューー!ーー
美羅琉は,強烈な風刃の攻撃を受けて吹き飛ばされた。
花馨天女の周囲の大気から,『気』がどんどんと黒炭になった彼女の体に侵入していった。それとともに,黒炭になった外皮にヒビが入っていき,ボロボロと崩れ落ちていった。
そこには,玉の肌をした全裸の女性が立っていた。花馨天女,まさに,その名にふさわく,これ以上どうすればさらに美しくなれるのかというくらい,絶世の美女だった。
ゴゴゴーーー!
彼女の背後に,花びらが円形状に旋回していき,そこに大気からの『気』が吸収されていった。
花馨天女「天女桜花乱舞ー!」
そう叫んで,花馨天女は右手を前に差し出した。それと同時に,花びらが,一斉に地に倒れた美羅琉に向かって放たれた。
美羅琉は,やっとS級前期にまでレベルアップできた。そのレベルで,最高レベルの防御結界を構築した。
バババーーン!
美羅琉の防御結界は,花びらがヒットするのと同時に爆発して破壊された。
美羅琉は,自分の体を高速で横に回転させることで,花びら攻撃を防いだ。
だが,花馨天女の花びら攻撃は,いっさい怯むことなく,美羅琉を追って攻撃した。美羅琉は,まったく反撃する余裕がなった。いくら加速が速くても,花馨天女は,自分の体を回転させるだけで,容易に美羅琉の速度に容易く追いつくことができる。
美羅琉『天女レベルって,こんなにもすごいの? あまく見過ぎていたわ』
美羅琉は,已むなく水香に念話で叫んだ!
美羅琉『禅子様ーー! 助けてくださーーい!』
美羅琉が,その言葉を叫んだと同時に,霊力の帯が,花馨天女の足の下に侵入して,それが,上部に1メートルほど跳ね上がった。
花馨天女「え? 何事?」
ドーン!
花馨天女は,大きく尻餅をついてしまった。それと同時に花びらの攻撃が止んだ。
それを見た美羅琉は,すぐに『気』の剣を構築して,そこに純剣気を放った。
シュー!
美羅琉は,高速で花馨天女に迫った。それをみた花馨天女も,自分の周囲に急ぎ,3重の『気』の防御結界を構築した。
美羅琉は,その3重の『気』の防御結界を,紙を切るが如く,純剣気を覆った『気』の剣で切り裂いていった。
美羅琉は,その剣を花馨天女の首元で止めた。
花馨天女は,大きく溜息をついた。
花馨天女「わたしの負けね。あの,足元で跳ね上がったのは,いったい何だったの? あなたがしたの?」
美羅琉「わたしではありません。禅子様の仕業です」
花馨天女「禅子様?」
美羅琉「そうよ。雲禅仙人の後継者,雲禅天女様です」
その話を聞いてビックリした。
花馨天女「え? あの雲禅仙人の後継者? なるほど,,,あの雷撃,そうだったのですか,,,」
花馨天女は,なにか諦めの境地になってしまった。雲禅仙人,その圧倒的なパワー,特に,『雷撃』の威力は,他人が容易に真似のできないものだ。
美羅琉「でも,その雷撃を喰らって,よく死ななかったわね。さすがは,花馨天女だわ」
花馨天女「雷撃対策は,昔からの課題だったのよ。心臓が5秒以上,止まった場合に自動的に発動させるネックレスをしていたの。そのネックレスは,発動と同時に消滅したけどね」
美羅琉「いやに素直ね。死ぬ覚悟でもできたの?」
花馨天女「あの,わたしを転倒させる技を見て思ったの。わたしを簡単に殺せるのに殺さなかった。もう,それだけで,わたしの敗北です」
美羅琉「そうね。もし,禅子様があなたを殺そうと思えば,すぐに殺せる状態だと思いますよ」
花馨天女「でも,雷撃はわかるのですが,あの,わたしを転倒させた技,あれはいったい何なのですか?」
美羅琉「それ,わたしも知らないんです」
花馨天女「そうですか,,,それで? わたしをどうするの? 殺すの?」
美羅琉「殺すかどうかは,禅子様が決めます」
その時,花馨天女の頭の中に,水香からの念話が聞こえた。
水香『わたし,禅子といいます。雲禅仙人の後継者で,雲禅天女と名乗ることを許されました。あなたは,花馨天女さんですね?』
花馨天女『はい,その通りです』
水香『あなたには,今,2つの選択肢があります。この場で死ぬか,もしくは,わたしの奴隷になるかです。どちらにしますか?』
花馨天女『奴隷になるって,具体的には,何をすればいいのですか?』
水香『いえ,簡単なことです。あなた,超美人で,スタイルも抜群です。わたしよりも,はるかに美しい。さすがに,わたしも嫉妬してしまいます。あなたには,娼館で高級娼婦として,お金を稼いでいただきます。その利益の半額をわたしに納めてください。そんなに長い期間でなくて結構です。そうですね,,,1年程度でいいです』
花馨天女『そうですか,,,高級娼婦ですか,,,気法術を極めてここまで頑張ってきたのですが,,,最後には,この体でお金を稼ぐのですか,,,でも,イヤと言えば,ほんとうにすぐに殺されるのでしょうね?』
水香『はい,すぐに殺します。あなたも気がついているのでしょう? この念話,普通の念話ではありません。体が接触した場合に行える念話です。あなたの頭の中に直接,思念を送っています。そのまま,思念のパワーを上げると,あなたの頭を破壊することもできます。その場合,霊魂にも影響が出て,まともな転生もできなくなるでしょう。10秒以内に返事してください』
花馨天女『10秒も待つ必要はありません。あなたの奴隷になりましょう。宣誓する必要はありますか?』
水香『いいえ,ありません。あなた頭の中に,ある特殊なものを仕掛けました。あなたがどこにいようと,わたしの思いひとつであなたの脳を破壊できます。今から,あなたはわたしの奴隷です。2週間以内に身辺整理をして,1ヶ月以内に桂河城の娼館のどこかに就職しなさい。1ヶ月ごとに,売上金を美羅琉に渡してください。彼女は林弦宗で教官をしています』
花馨天女『お金を稼ぐだけなら,娼婦稼業をしなくてもいいのではないですか? どこかのお金持ちの愛人でもいいのではないですか?』
水香『娼婦以外ダメです! それがわたしが決めたルールです。わたし,散々,経験してきたことですから,,,』
花馨天女『・・・』
花馨天女は,大きく溜息をついた。
花馨天女『わたしの頭の中に,爆弾が仕掛けてあるって,わたし,どう信じればいいのですか?』
水香『では,あなたの背後の男性の脳を吹き飛ばします。それで信じてくれますか?』
花馨天女『では,わたしが,彼の体全体を防御結界で覆います。それでも,破壊できるのなら信じましょう』
水香『それで構いません。はい,今,彼の頭の中に仕掛けました。いつでも結界を構築してください』
花馨天女は,倒れて黒炭になっている長老の体全体に防御結界を構築した。
花馨天女『はい,結界を構築しました。いつでもどうぞ』
水香『では,5秒後に彼の脳を破壊します。5,4,3,2,1,,,』
ボン!
長老の頭が内部から破裂してしまった。花馨天女は,予想されたとはいえ,しかも,まったく姿を現さないのに,確実に長老の頭を内部から破壊できることに驚愕した。
花馨天女は,今は冷静ではないので,霊力を見れないのだが,もし,冷静にエネルギー波動をキャッチしようと思えば,霊力の場の存在を把握することができただろう。
花馨天女『わかりました。禅子様の云う通りにします。でも,わたし,玉輝仙人とは,婚約とかはしていないのですが,弟子みたいなものです。彼には自分の境遇を報告しないといけません。たぶん,彼は,あなたに何らかの行動を起こすと思います』
水香『なるほど,,,ちょっと,いやですね。わたし,自分の素性は隠したんです。花馨天女さんは,その玉輝仙人に,1年ほど修行で山に籠もる的な感じで説明してもらえますか?』
花馨天女『そんな内容では信じてくれないと思います。やはり,雲禅天女の話をださないとダメだと思います』
水香『そうですか,,,いずれバレることですから,いいでしょう。好きにしてください』
花馨天女『ありがとうございます。それで,禅子様とは,どのように連絡を取ればいいのですか?』
水香『そうですね,,,では,『悪霊子爵』をあなたの傍に控えさせましょう。 悪霊子爵,花馨天女の乳房に侵入しなさい』
悪霊子爵と呼ばれた霊体は,生前S級レベルに到達した者だ。
水香の乳房から出てきて,霊力の場に沿って,移動していき,花馨天女の体の中に侵入して,彼女の乳房の中に収まった。悪霊子爵としても,花馨天女の乳房を独り占めできるので,大変ありがたかった。しかも,花馨天女は超美人で超グラマーだ。イヤなはずがない!
水香『花馨天女さん,あなたの乳房の中に,悪霊子爵が侵入しました。何か,異変とか,生命の危機とかあれば,遠慮無くその悪霊子爵と相談してください。すぐに,わたしと連絡がとれます。あっ,そうそう,玉輝仙人に話をするときは,事前に,その悪霊子爵に連絡してくださいね?』
花馨天女『わかりました。そのように対応しましょう』
水香は,花馨天女との念話を断った。
花馨天女は,美羅琉に水香との会話内容を伝えた。
美羅琉「そうですか,,,わたし,禅子様とは違って疑り深いのよ。わたしに対して,いっさい敵対行動,および危害を加えないと天地神明に誓いなさい」
花馨天女は,素直にその言葉に従い,美羅琉に対して宣誓をした。
美羅琉「それでいいのよ。これで,あなたはわたしたちの仲間になったんです。ただ,ちょっと違うのは,わたしは禅子様の『奴隷』ですけど,花馨天女は『性奴隷』という点ね。フフフ,でも,あなたのその裸体,あまりにエロいわ。禅子様もエロいけど,禅子様は,なんといっても身長が低くちんちくりなんで,ちょっと変態的エロさですけどね」
コン!
霊力の場から,透明な触手の手が出てきて,美羅琉の後頭部を軽く叩いた。
美羅琉「いててー,あっ,そうか,わたしの話,禅子様にも念話で,禅子様に送っていたんだ。こりゃ,まずかったかな?」
花馨天女は,だれもがうらやむ美人顔で,身長160cm,胸もKカップほどもあるのに,それでいて少し痩せているので,体重は50kgほどしかない。
伊治子たちが戻ってきた。
伊治子「美羅琉教官,全員にとどめを刺してきました。もっとも,全員,黒炭になっていて,生きているとはおもえませんでしたけど」
美羅琉「ご苦労様。この裸の女性,花馨天女っていうのよ」
伊治子たち「ええ? うそーー!? めっちゃ美人,それに,すごい豊満!」
美羅琉「花馨天女は,わたしたちの仲間になってもらいました。もう敵ではありません。あっ,そうそう,あなたたち,予備の服装があったら,彼女に分けてもらえる?」
伊治子「服はありませんけど,サラシになるような布はあります。大事な部分は隠せると思います」
美羅琉「それでいいわ。お願い」
伊治子「はい! 花馨天女に恩を着せることができるなんて,光栄の至りです!」
伊治子は,テントの中なら淡いピンク色の長い布を花馨天女に渡した。彼女は,それを胸とか陰部に上手に巻いていった。その淡いピンク色が,余計に花馨天女のエロさを際立たせた。
美羅琉や伊治子たちは,そのあまりのエロさに,自分たちが女性であることを忘れて,花馨天女を抱きたくなる衝動に駆られた。
花馨天女は,もうここには用はないので去ろうとした。その去り際に,美羅琉は彼女にちょっと耳打ちした。
美羅琉「もう,あなたは,わたしたちの仲間だから,秘密を教えるね。あの禅子様,実は,『大妖怪・水香』なのよ」
その言葉を聞いて,花馨天女はショックで一瞬,体が硬直したを覚えた。『大妖怪・水香』は,玉輝仙人によって殺されたのではなかったのか?? それってどういうこと??
しばらく呆然自失した後,ふと,自分が『大妖怪・水香』仲間になってしまったことを悟った。さらに追い打ちをかけるように,美羅琉は話を続けた。
美羅琉「それでね,禅子様は,1年後には,この凡界を破壊して,仙界もぶっ潰して,さらに神界もぐちゃぐちゃにしてしまう予定なのよ。フフフ,あなたもその時には,協力するのですよ」
花馨天女「・・・」
花馨天女は,ちょっと間をおいてから質問した。
花馨天女「どうして1年後なの? すぐに行動すればいいじゃないの?」
美羅琉「それはね,,,内緒! あんたが,ほんとうに禅子様の性奴隷として実績を積んだら教えてあげるわ」
花馨天女は,大妖怪・水香のことはショックではあったが,この美羅琉教官にも少し興味が沸いた。
花馨天女「美羅琉さん,あなた,気法術は大したことないのに,どうしてその若でそんなすごい純剣気が使えるのですか? その年齢でそんなことできるの,この凡界でも,ましてや仙界でも無理だわ」
美羅琉「フフフ,,,教えてあげない。ちゃんと真面目に高級娼婦として禅子様に奉仕できるようになったら教えてあげる。あっ,そうそう,あなた,娼婦になったら,1ヶ月に金貨1000枚は稼ぐのよ。それが最低条件よ。未達の場合,わかっていると思うけど,とんでもないことになるわよ」
花馨天女「具体的に,毎月いくら渡せばいいの?」
美羅琉「娼館のルールって,よくわからないけど,お店側に4割は入れないといけないかな? 仮にそうだとして,手取りは金貨600枚。必要経費が金貨200枚として,残りは金貨400枚くらい。だから,少なくとも,1ヶ月後には金貨200枚を上納しなさい。わたしの言葉は,禅子様の言葉なのよ。フフフ,そのエロい体,有効に活用しなさい」
花馨天女は,ちょっと考えてから美羅琉に聞いた。
花馨天女「禅子様が,大妖怪・水香だとして,彼女の大事にしている男性って誰なの?」
美羅琉「男性? そんなの知らないわ。そもそも彼女の周りに男の気配なんてまったくないわよ」
この話を聞いて,花馨天女は,大妖怪・水香は,ヒカルという少年が生きていることを知らない可能性があると思った。もし,知っていれば,なんらかの行動に出るはずだ。でも,そんなことを水香に教える義理もない。
花馨天女は,大妖怪・水香に間接的に復讐する方法を思いついた。それは,ヒカルを自分の肉体の虜にすることだ! しかも,ヒカルから金を奪い取ればいい。一石二鳥だ。何せ,花馨天女は,自分の美貌と肉体に絶対的自身がある。 どんな男も自分の体になびかない男はいない!
花馨天女「美羅琉さん,わたし,『薔薇飛行仙器』を持っているから,空を飛べるわ。だから,林弦宗近くの桂河城で娼婦する必要はないと思うの。梅山城で娼婦をするわ。了解してちょうだい」
美羅琉「別にどこで娼婦しようがどうでもいいわ。好きにしてちょうだい」
その言葉を聞いて,花馨天女はその美しい顔をさらに,光り輝かせた。
髪をくくっている薔薇の飾りを施した簪である『薔薇飛行仙器』を取りだした。それに『気』を流して,空中に浮かせた。
ボボボーーーー!!
その簪は,薔薇の形状は維持しつつ,直径2メートルほどの円盤状になった。花馨天女はその上に飛び乗った。薔薇飛行仙器は,徐々に高度を上げて,どこともなく飛び去っていった。
・・・ ・・・
こんな事件があったので,伊治子たちは,もう野外採取を継続するような気力はまったくなかった。伊治子たちと美羅琉は荷物をまとめて,夜を徹して林弦宗へと帰っていった。
ーーー
翌朝,やっと伊治子たちは林弦宗に戻った。美羅琉の誘いもあり,水香の教官宅の空いている部屋を借りて寝ることにした。
その日の午後2時ごろ,やっと彼女たちが起きて,身支度をして,自分たちの女子寮に戻った。
伊治子は,その道すがら,仲間の寺烏子,芽衣子,穌梨子の3人と,先ほど,美羅琉から提案を受けた件について相談した。
その提案とは,林弦宗を退宗して,完全に水香の奴隷になるというものだ。かつ,言外に,彼女たちがシイラを虐めていたことは,水香も知っているので,あやうく,最初の雷撃で殺されるところだったことも教えられた。
水香の奴隷になることのメリット,それは,水香は,奴隷の安全を保障し,養う義務が生じるというものだ。それに,シイラと仲間になるので,また,密かにシイラを虐め倒すこともできる。
寺烏子「でも,奴隷って,花馨天女様みたく,高級娼婦にされたら困るわ」
伊治子「寺烏子,あなたの貧弱な体では,どんな男も寄りつかないわ。安心して。フフフ,シイラを,高級娼婦になるように進言してあげるわ。あの体なら,禅子様も同意するでしょう」
寺烏子「それ,いいわね。それに,わたしたち,また,シイラを陰で拷問できるしね」
伊治子「バカね。表だって拷問するのよ。シイラをマゾに調教してあげるって,禅子様に進言するのよ。マゾにして,高級娼婦にさせる役目をわれわれがするのよ。そんな楽しみがあるなら,禅子様の奴隷になってもいいわ」
寺烏子「それ,賛成!」
芽衣子「わたしも!」
穌梨子「あの,,,その,,,わたしも賛成です」
穌梨子は,虐められ体質だった。でも,なぜか,伊治子たちにペットのように可愛がられた。だって,胸がBカップと可愛い美乳をしているからだ。
あの憎きシイラは,花馨天女には遥かに及ばないものの,美人で胸もGカップもある。虐めないわけにはいかない!
その日の夕方,伊治子たちは,女子寮を引き払い,退宗届けを提出した。その足で水香宅に来て,水香の奴隷として洗礼を受けた。洗礼とは,精力満載の母乳『奇跡の乳液』を与えられることだ。
その3日後,伊治子たち3名は,中級中期から上級前期にレベルアップしてした。
かくして,中級中期のシイラよりも強者になった伊治子たちは,当初の目的を実行した。
居間で,伊治子は水香に進言した。
伊治子「禅子様,シイラは,ここでは料理が上手かもしれませんが,そんなことは,わたしたちが手分けして行います。それよりも,シイラは,見ての通り,美人で胸だってGカップもあるんです。しかも,性格は内向的なので,どんな男にだって好かれます。
どうです? わたしたちが,シイラをマゾ体質にして,より男どもの好む娼婦にしあげましょう。そうすれば,虐待行為を好む変態高級娼婦として,一部の愛好家に大いに受け入れられますよ。月,金貨1000枚なんて軽く越えてしまいます。いずれ,この世界や他の世界も制服するのでしょう? なんといっても,先立つものはお金です。この1ヶ月でシイラを仕込んであげましょう」
この言葉に,シイラは反論しようとして言葉を発しようとした。だが,遅かった。
水香「そうね。確かに,シイラは美人で巨乳だわ。じゃあ,そうしてちょうだい。 シイラ,もし,娼婦の仕事がいやなら,ここから去っていいわよ。ただし,『気』のレベルは,初級前期の最低ランクになってもらいます」
シイラ「・・・,いえ,娼婦の仕事,,,させていただきます。でも,,,でも,わたしを上級,いや,S級にさせてください! お願いします!」
それが,シイラのささやかな抵抗だった。
水香「いいわよ。でも,実績を見せてちょうだい」
この言葉に,シイラは反論した。ここで妥協してはだめだ。S級になれば,いくらでも客を翻弄させることが可能になるはずだ。絶対に譲れない条件だ。
シイラ「猶予期間は1ヶ月もあります。その期間があれば,『奇跡の乳液』でS級になれると思います! ぜひ,ぜひ,お願いします!!」
その言葉に返事せずに,美羅琉に丸投げした。
水香「美羅琉,その件もあなたに任したわ」
美羅琉「禅子様,お任せてください。禅子様は,わたしのお願い通り,定期的に母乳を出していただくだでいいんです。禅子様は何も考える必要はありません。わたしのお願い通り動いてくれればいいんです。今は,大事にお腹をさするだけでいいんですよ」
水香「そうさせてもらうわ」
水香は,自分のお腹をさすりながら,さっさと自分の部屋に戻っていった。実質,すべての決定権は美羅琉が握っているといってもいい。それに,美羅琉もことのほか強者だ。条件さえ許せば,仙人・天女にも匹敵するほどだ。
美羅琉はシイラに言った。
美羅琉「シイラ,この1ヶ月,伊治子たちから教育を受けなさい。伊治子は,1週間ごとに,そのシイラの教育状況を報告しなさい。それに応じて『奇跡の乳液』をシイラに与えるかどうか決めます」
この決定は,シイラにとっては不満だった。でも,卑猥な顔をしている伊治子たちの拷問を1ヶ月,耐えればS級になれる! それを信じるしかなかった。
シイラ「わかりました。伊治子さんたちの教育を受け入れます」
その言葉を聞いて,伊治子たちは,ニヤニヤした。
それからは,伊治子たちの天下だった。シイラへの拷問は,シイラの部屋で行われた。その行為を経て,マゾ体質させるというものだ。
シイラは全裸にされて,大の字に逆さに吊るされて,鞭打ちや,全身を針で刺されるやら,好き放題された。女性の一番大事な部分への攻撃もその近くある部分への攻撃もいっさいの遠慮無く行われていった。
穌梨子は,回復系の『気』の扱いが上手なので,シイラのGカップの乳房やお尻が無残な状況になっても,なんとか,ぎりぎり回復できる程度に応急措置をすることができる。もっとも乳房やお尻部分は,男性のもっとも注視する部分なので,形が崩れないように拷問するのも,伊治子たちの『楽しみ』のひとつだった。だから,伊治子は,どうしたらもっとシイラを虐待できるか,そればかりを考えていた。
伊治子たちからの報告を受けるまでもなく,シイラは,完全にマゾ体質にされた。それで快感を感じるというわけではない。その傷みに耐えられる体質になっただけのことだ。
美羅琉は,定期的に少量ずつ『奇跡の乳液』をシイラに与えていった。1週間後に,上級前期になり,2週間後に上級後期になり,3週間後には,S級前期にまでなり,4週間後には,S級中期レベルに到達した。
3週間目から,伊治子たちが,どんな拷問をしようが,シイラは,自分の『気』のパワーで,自分の体を修復できるようになっていった。
・・・ ・・・
シイラが,高級娼婦として旅たつ日が来た。
シイラは,この1ヶ月,まったく顔を見せなかった水香に挨拶した。
シイラ「禅子様,幸い,S級中期レベルに達することができました。また,回復系の気法術もかなりのレベルになったと自分で思います。
あの,,,お願いがあるのですが? わたし,ぜひ,花馨天女様と同じ職場で働きたいと思います。禅子様の仲間ですので,一緒にいれば心強いと思いますので」
水香「いいわよ,美羅琉,アレンジしてちょうだい」
美羅琉「了解しました。花馨天女さんは,梅山城の娼館で働いています。梅山城に行きなさい。300kmほど離れていますが,1日30kmほど歩けば,10日ほどでつくでしょう。それに,花馨天女さんは,空飛ぶ仙器を持っているので,戻りは彼女と一緒に行動すればいいと思いますよ」
シイラは,これで,何の心配もないと思った。それに,自分の体内にいる悪霊も,魂力を徐々につけてきており,今では,いつでも念話できる状況にまでなっている。長旅も決して孤独ではないと思った。
シイラは,格下になった伊治子たちにも挨拶した。
シイラ「伊治子さん,この1ヶ月,いろいろと教育していただいて,ありがとうございました。お陰で,回復系気法術が上手になりました。では,後のことはよろしくお願いします」
シイラは,再度,全員に軽く頭を下げて,水香宅を後にした。
ーーー
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