第38話 水香と雲禅仙人
今から2ヵ月ほど前の話に遡る。
大妖怪・水香は,玉輝仙人に殺されたことになっている。水香は,姿を隠すため,霊力のバルーンを展開して,空中に飛び立った。小芳の古里に行くつもりだ。
その場所は北東の方角だと教えられたので,その方向に進路を向けて,のんびりと空の旅を楽しんだ。
だが,水香は,生来,何事もルーズな性格だ。自分の体に霊力の防御層を構築して,体を保温させたのはいいのだが,あまりに風に揺られて気持ちよかったものだから,そのまま寝入ってしまった。
当然,風向きも変わるし,霊力のバルーンの操作もするわけがない。風の吹くままに漂うだけだ。
10時間後,,,
ヒュルヒュルーーー,ボチャーーーン!
水香は,どこかの大きな川の中に飛び込んでしまった。さすがに目覚めて,慌てて,水面に出ようとした。しかし,水香の体は,Iカップの胸をしているのだが,その重さは両方の乳房だけで50kgにも達する。つまり,全体の体重が90kgにも達してしまう! 身長が142cmくらいしかないので,水香の体の比重は1を大きく超えてしまう。簡単に水面に浮くわけがない。
水香は,已むなく霊力の触手を繰り出し,川の底面を支えにして,自分の体を水面にまで運んだ。しばらくの間,呼吸を整えてから,川岸に這い上がった。
水香は,リョックもなければ,一切の着物もなかった。リュックは川に流されたようだ。つまり丸裸で一文無しだ。
でも,霊力で服を構築できるので,短パンに着物姿にて,腰帯だけは,樹木の幹を使うことにした。
「なんと! 服まで構築できるのか?! しかも気の波動をまったく感じない。お前はいったい誰だ?この世界の人間ではないのか?」
水香は,声のする方向を見た。すると,大きな岩の上に座禅座りしている老人がいた。髭がボウボウの伸びていて,明らかに百歳以上の老人だ。
老人「フフフ,自分の自己紹介をするほうが先だな。これは,失礼した。わたしは,この凡界では雲禅仙人と呼ばれている。ここで,かれこれ10年ほど修行をしている」
水香「要は,仙人さんなんですね? わたしの敵ではないですね?」
雲禅仙人「ハハハ,初めて会うのに,敵も味方もないじゃろ」
水香「そうですか。わたし,大妖怪・水香って呼ばれています。つい先日,どこかの仙人と遭遇して殺されたことになっています」
雲禅仙人「はるほど,,,つまり,この凡界でかなり悪さのしたのかな?」
水香「別に,悪さをしたわけではないです。ただ,男たちがいい寄ってくるので,ちょっと精気と寿命を奪ってミイラにしただけです」
雲禅仙人「ハハハ,,,それは凄い能力だ。それじゃ,仙人どころか,神人も放置しないわな」
雲禅仙人はこんな面白い少女を発見して,超がつくほど愉快だった。
水香「ところで,雲禅仙人さんは,わたしの敵ですか?味方ですか?」
雲禅仙人「慌てるでない。わしはもう歳だ。わしの後継者を見つけようとしたが,才能のある連中を発見できなかった。どうだ? ここで遭ったのも何かの縁だ。わしの後継者にならんか?」
水香「わたし,『気』を扱えません。それに修行なんて嫌いです。わたしの能力はすべてもらい物です。タダでくれるなら,いただきますけど」
雲禅仙人「ハハハ,なるほど,修行は嫌いか。タダであげてもいいが,その豊満な胸くらいは触らせてほしいものだな」
水香は,彼を『スケベじじい』だと断定した。
水香「わかりました。でも,わたしの胸を触るなら,自分の死を覚悟してくださいね?」
雲禅仙人「フフフ,わしはもう歳だといっただろう? このワシから精力や寿命を奪おうにも,もうほとんどないのも同然じゃ。それに,いつ死んでも悔いはないしの」
その後,何度かやり取りをして,水香は,雲禅仙人の弟子になることに同意した。なんといっても,寝ている間に,水香の頭の中に,彼の記憶を徐々に移してくれるらしい。つまり,水香はただ寝てればいいだけだ。睡眠修行といってもいい。ただし,いつでも雲禅仙人は水香の体を触り放題という条件がつく。
雲禅仙人は睡眠中の水香の豊満な胸を揉みながらつぶやいた。
雲禅仙人「これは天国じゃ!こんな美人で豊満な胸が触り放題だとは,もう,わしのすべてを与えても惜しくない。でも,できるだけ長く触りたいから,徐々に記憶を移してしていくほうがいいかな? でも,,,わたしの周囲を覆っているのはなんじゃ? これって,水香が云っていた霊力というやつか? 精気や寿命を奪うらしいが,確かに,少しずつ奪われているわ。
フフフ,こんな150歳を超えたワシからでも精力や寿命を奪えるとは恐れ入ったわ」
雲禅仙人は,精力や寿命を奪われても,大気からの気を吸収することによって,それをある程度補える。
睡眠中の水香の豊満な胸を触るたびに,雲禅仙人の体は霊力に覆われてしまうのだが,ミイラになることはなかった。
そんな生活をして1週間が経った頃,雲禅仙人はちょっと可笑しなことに気がついた。水香は,水も食料もいっさい取らないのだ。
雲禅仙人「水香,お前,どうして水とか食料を取らないのだ? それでいて,肌つやはツルツルしているし」
水香「雲禅仙人から精気や寿命を毎日奪っていますから,それで十分です。仮に奪わなくても,これまでの蓄積がありますから,数年くらい何も食べなくても平気です」
雲禅仙人「なんと,,,水香の能力が凄すぎて,ワシの気法術など,なんの役にもたたんな。でも,少しは,気法術を使えるようにしなさい。そうすれば,どこかの武林宗に潜り込むにも役立つはずだ」
彼に胸を揉まれながら,水香は実践では何の役にも立たない『気』の扱いの練習を,ちょっとやってみた。使い道がなくても,扱えないよりは,扱えるほうがいいからだ。それに,他にすることもないし,タダで胸を触られ続けるのも癪だ。
それにても,胸を触られている間,霊力の層で彼の体全体を覆って,精気や寿命を奪い続けているのに,今だに,そのすべてを奪い切れていない。すでに,このスケベじじいから,何百人分の精気と寿命に相当するエネルギーを奪ってきたというのに??
水香のそのエネルギーは,もう,胸に貯まる許容範囲を超えてしまった。そのエネルギーはいったいどこに貯まっているのか? 水香は,その行き先がどこかを知っている。それは,自分の子宮部に,無意識に構築した亜空間だ。
それは,以前,水香がメリルをお腹の中に収納した際に,その能力を無理やり獲得したものだ。だって,メリルはその亜空間の中に隠れていたのだら。
そして,今,その能力が発動して亜空間が形成され,その中に,このスケベじじいから奪った精力や寿命エネルギーが蓄えられていった。しかも,精気や寿命だけでなく,『気』さえも奪ってそこに蓄えられていった。
水香は,このスケベじじいが,半端ない能力者だとわかった。これほどのエネルギーを吸収していっても,まったく平気な顔して水香のIカップの胸を延々と触り続けることができるのだから!
水香が気を扱う方法は普通とは違う。そもそも修行をしていない水香に『気』を生み出せない。でも,奪った『気』は容易に扱える。だって,それは,霊力の扱いとさほど変わらないからだ。
水香が,『気』を自由自在に使役できるのを見て,雲禅仙人は舌を巻いた。
雲禅仙人「水香,お前,,,ほんとに天才だな。なんで,俺が命じたことをすぐに実行できるんだ? 普通,何ヶ月も,場合によって何年もかかってしまうのだぞ?」
雲禅仙人がそう云ったのは,イメージした虎を『気』で構築させるというものだ。動かせなくても,虎そっくりにさせるだけでも,少なくとも,S級中期レベルは必要だ。
それを水香は,なんの苦労もなく,一瞬で構築させてしまった。だって,水香の頭の中に雲禅仙人の記憶,つまり鮮明なイメージがある。それがある限り,水香に不可能はない!
雲禅仙人は,水香の『異能』に気づき始めた。
雲禅仙人「水香,お前,,,もしかして,イメージが鮮明だと,どんなことでもできてしまうのか?」
水香「命令されたことなら,実現させちゃいます。例え,それがスケベじじいからの命令でもね」
雲禅仙人「・・・」
雲禅仙人は,水香と遭った時から,水香は化け物だとわかったが,雲禅仙人のパワーを丸々引き継ぎでしまうと,とんでもない化け物になるのではないかと思った。
雲禅仙人の気法術のレベルは,仙人レベルを超えてすでに神人レベル! しかも,トップクラスのレベルに達してしまっている。その彼をして,水香は化け物中の化け物だと断定した。
雲禅仙人は,溜息をついた。
雲禅仙人「水香,お前に命令を与えるのは誰だ? もう決めているのか?」
水香「今は,スケベじじいしかいませんよ。でも,将来,この子が生まれたら,この子の命令には,最優先で従いますけどね」
水香は,雲禅仙人から胸を触られながらも,自分のまだ膨らみが中途半端なお腹をさすった。
雲禅仙人は,でも,,,これもしょうがないと思った。自分のすべてを水香に引き継ぐしかない。少なくとも,子どもが生まれるまでは,おとなしくしているだろうから。
・・・ ・・・
2週間が経ち,3週間が経ち,とうとう,1ヶ月が経った。
雲禅仙人は,とうとう自分の寿命が尽きることを悟った。
雲禅仙人は,相変わらず水香のIカップの美乳を揉みながら,今際の際の言葉を水香に伝えた。
雲禅仙人「水香よ。この1ヶ月,驚きもあったが,楽しかったし嬉しくいもあった。こうやって,水香の胸を揉んで死ねるのだから。ワシの最後の秘術を水香に伝える。その技は,我が名をとって『雲禅術』だ」
雲禅仙人は,雲禅術に関する記憶を水香の頭の中に投入した。そのパワーを放出したのが,彼が最後にできることだ。
雲禅仙人「水香よ。今後は,雲禅天女と名乗りなさい。大妖怪・水香よりはいいのではないか?」
水香「そうですね。でも,天女なんて,そんな殻じゃないから,そうね,,,『雲・禅子』とでも名乗りましょうか?」
雲禅仙人「まあ,それでも構わない。どうやら,最後の時が来たようだ。では達者で暮らせ」
その後,彼は静かに息を引き取った。その後,彼の体はミイラ状態となった。
水香「このスケベじじい,ほんとスケベだったけど,ものすごい精力,『気』,寿命を持っていたわ。わたしが奪わなかったら,何千年って生きたのかもしね。まあ,これも,スケベじじいの運命だったのでしょう。まあ,簡単なお墓くらい準備してあげましょう」
水香は,見晴らしのいい小高い丘の一角に,雲禅仙人の遺体を葬って,そこに木片を立てかけ,指から炎を出して,指と接触する木片部分を炭にすることで文字を書いた。
その文字は『雲禅仙人・ここに眠る』というものだ。
水香「スケベなおじいちゃん,天国で楽しく過ごしてくださいね」
水香は,両手を合わせて軽く頭を下げた。
雲禅仙人の形見的なものは,彼の着ていたベージュ色の皮製の着物くらいだ。水香は,この着物を引き継いで着ることにした。
ともかくも,今の水香は妊娠中だ。無理なことはすべきでないのはよく理解している。低調に生きていくに限る。だが,この場でひとり生活するのも寂しい。
水香はこの場所を去ることにした。
水香のいるところは,桂河城や,武林宗のひとつである林玄宗からさほど遠くない森の中だ。雲禅仙人の記憶を持つ水香は,彼が林玄宗出身であることは知っている。
水香は,林玄宗に潜り込むか,それがダメなら,近くの村で隠れて生活するのがいいと思った。
そんなことを考えながら,ほとんど誰も通ったことのない山道を下っていった。
ヒューー!
水香は,何かが天から落ちてくるのを感じた。それは,ヒトだとすぐに分かった。
「キャーー!!助けてーーー!」
それは女性の悲鳴だった。その悲鳴は,間違いなく心の底から訴えかけるものだった。
水香「しょうがないわね。異世界からの召喚者かな?」
水香は,そんな独り言を言いながら,声のする方向に霊力の場を瞬時に展開して,その場に引っかかった物体を丸め込むようにして,ゆっくりと地表に降ろした。
「え? 何? わたし,,,助かったの?」
その女性は,九死に一生を得た。その女性は,傍にいる水香が助けてくれたと確信して,その足もとをしっかりと捕まえて叫んだ。
「ありがとうございます!ありがとうございます!あなたは,わたしの命の恩人です!一生,あなた様の奴隷になります!!」
そんなことを云われては,ちょっと水香も嬉しくなった。
水香「それはいいけど,どうして,天から降ってきたの? あなたも異世界からの召喚者なの?」
その女性は,「異世界」とか,「召喚者」という言葉の意味をよく理解できなかったが,とにかく,自分の身の上を説明することにした。
その女性は,何度か呼吸を整えてから話を始めた。
「話をする前に,自己紹介をします。わたし,名を美羅琉(みらる)と言います。あなた様は何とおっしゃいますか?」
そう言われて,水香は,自分のことをどう説明しようかと思った。水香という名前は封印したほうがいいのはわかる。ならば,すでに決めた通り『雲・禅子』ということにしよう。
水香「わたし,『雲・禅子』よ。禅子って呼んでいいわ」
美羅琉「禅子様ですね? わかりました。では,今後は,禅子様とお呼びします」
美羅琉は,自分が背負っているリュックから木製の札を取りだした。そこには,大きく篆書体で『神』という文字が書かれていた。
美羅琉は,その木製の札を水香に示しながら説明した。
美羅琉「これ看てください! わたし,神界の人間なんですぅー。でも,ドジ踏んじゃって,天帝様に睨まれて,天帝様のお嬢様である『巫女』さんを見つけろって命令されて,,,」
美羅琉は,今度は,巫女が着ていた服を取りだして水香に示した。
美羅琉「この服の臭いを頼りに凡界に行けって云われたですぅー」
美羅琉は,思い出すだけで涙が出てきた。
美羅琉「わたし,この凡界では,気のパワーが百分の一に低減されてしまいます。たぶん,わたしの今のレベルは,,,初級前期,,,凡界でも最弱に近いドジでアホなレベルなんですぅーー。シクシクシクーー」
水香は,その服を受けとって臭いを嗅いだ。その臭いは紛れもなく,小芳の臭いだった。
水香『え? 小芳って,妖狐族じゃなかったの? まさか,神界の神人??』
水香は,ちょっと状況が分からなくなった。
水香の思いをよそに,美羅琉は話を続けた。
美羅琉「それで,わたし,神界の神武宗から転送陣法で,仙界の仙武宗に送られました。そこまではよかったんです。でも,神武宗に着くと,そこには誰もいませんでした。いろいろヒトを探したのですが,やっと探しあてたら,凡界から来ている雇用人だったんです。
結局,なんとか,仙王に会うことが出来ましたが,仙王も,わたしを邪魔者扱いして,三流の転送陣法で凡界に行くように部下に命じました」
美羅琉は,ここで,自分の服の端を使って,鼻をかんだ。「チーーン!」
水香は,まだ水香の服を使わないだけマシだと思った。
美羅琉「その命じられた部下は,ニヤニヤしながらわたしをその三流の転送陣法につれていきました。その時は,気がつかなかったのですが,その部下は,気含石を数個取り外したんだと思います」
水香「それって,どういうこと?」
美羅琉「多分,座標指定する場所を無くしたんだと思います。つまり,ランダムに勝手に凡界に放り込んだだけです。どこに転送されるのか,ほんと『神』のみぞ知るってやつです。悔しーー!! あの仙王も邪険にして,あの部下もどうしようもなくて,それに天帝様もわたしに無理難題な問題を押しつけてーー!! わーーん!
万一,大妖怪・水香様に巡り会ったら,その大妖怪・水香に死に物狂いでお願いして,仙界や神界をグチャグチャにしてって,お願いしてやるーー!! わーーん! わーーん!」
美羅琉のこの言葉を聞いて,水香はちょっと嬉しくなった。
水香「わたし,大妖怪・水香の親友なんです。あなたが1年間,わたしの奴隷として過ごしてくれたら,大妖怪・水香にあなたの依頼を聞き入れてもらうようにお願いしましょう」
美羅琉「えーー,それって本当ですか?でも,1年はちょっとながいですぅー。でも,今の話,本当に本当ですか?」
水香「本当よ。それに1年なんてすぐよ」
美羅琉「わかりました! 禅子様についてきます!!」
水香は,美羅琉を奴隷にした。
でも,自分で行動方針を決めるのはイヤだ。だが,水香には,幸いにして雲禅仙人の記憶がある。彼の古巣である林玄宗に潜り込めれば,無事に子どもを産むまで平穏無事に過ごせると思った。
水香「では,今から林玄宗に行きましょう」
美羅琉「はい! 林玄宗って,何なのか知りませんけど,はい! どこでもついていきます!」
水香と美羅琉は,徒歩で2日ほどかかる林玄宗を目指すことにした。水香は,美羅琉が無一文であることを知った。水香も無一文だ。ちなみに,水香は食事を取らなくていい。だが,美羅琉は違った。
歩き始めて2時間後に,美羅琉は腹減ったの連発だった。
水香「もう,うるさいわね。自分でカエルなり蛇なりを取って食べなさい」
美羅琉「えー?禅子様,それはないですよ。ご主人様は,奴隷に食事をあてがう義務があるのですよ。わたしに食事をあてがってくださいぃーー!」
水香は,他人の言葉を疑うということはしない。ただ,少々めんどくさがりなだけだ。そのくせ,自分に命令をしてくれる者には全力で尽くす。
水香「わたしって,そんな義務があったの?」
美羅琉は,水香が単純で騙しやすいと思った。
美羅琉「そうですよ。主人と奴隷の関係って,そういうもんですから」
水香「わかったわ。じゃあ,小動物を殺してあげるから,自分で料理するのよ」
美羅琉「はーーい!」
水香は,半径200メートルの範囲で霊力の場を展開して,その範囲にいる蛇,リス,兎などの小動物をことごとく小さな針で突き刺して,それを美羅琉の前に持ってきた。その小動物の数は10匹以上。
美羅琉は,それを見てビックリした。だって,水香が行動を起こして,僅か1分も経たずに,目の前に10匹以上もの小動物の死体があるのだから!
美羅琉「え? どっ,どうしてこんなことが一瞬でできるの? こんなことができるの,神人でもできないわよ」
美羅琉は,水香の先ほどの言葉を思い返した。水香の親友に『大妖怪・水香』がいると言っていたことを。それって,もしかして,,,水香自身のことではないのか?
美羅琉は,あの上空から真っ逆さまに落ちてくるのを,自分の体を何か変なもので巻き付けるかのようにしてゆっくりと地表に降ろしてくれたことを思い出した。
こんなとんでもない能力がある化け物といえば,,,
美羅琉「あの,,,怒らないで聞いてください。もしかして,,,禅子様って,,,もしかして,,,もしかして,あの,大妖怪・水香様ですか?」
水香は,自分が『大妖怪・水香』であることをいつまでも隠し通せることはできないと思った。
水香「そうね。バレてしまったわね。わたし,その水香よ。でも,わたしの名前が,『雲・禅子』というのも事実なの。わたし,雲禅仙人の弟子で,『雲禅天女』と名乗っていいって云われたのよ」
美羅琉「えええーーー??大妖怪・水香様で,かつ,あの,あの,神人にも匹敵するっていわれたあの雲禅仙人の弟子なのですか?? わーーん,わーーん」
美羅琉は,あまりに嬉しくて,また,泣いてしまった。
美羅琉「ううう,これで,これで,,,憎き仙界の連中や神界やつらに復讐ができるぅーー!! ヤッターー!! ヤッターー!!」
美羅琉は,嬉し涙で顔がボロボロになってしまった。
水香「美羅琉,あまり,うれしがらないで。わたし,今,妊娠中なの。この子が産むまでは,おとなしく行動するわ。あっ,それから,次いでにいっておくけど,あなたの探し人の巫女って,たぶん,梅山城にいる小芳って人よ。臭いがまったく同じだわ」
美羅琉「ええーー?? うそーー??」
美羅琉は,あまりにビックリし過ぎて,その情報量の多さを消化しきれずに,その場で気絶してしまった。
・・・ ・・・
水香も,これ幸いに,その場で体を草むらの上で横になった。もっとも,霊力の層を底面に敷いてから横になったのはもちろんのことだ。
仰向けになったので,筋状になった雲の様子が目に映った。
水香『そういえば,雲禅仙人から,いろいろと『気』の使い方の記憶を送ってもらったけど,役立ちしそうなものは何もなかったわ。でも,最後に秘術の『雲禅術』の記憶を送ってもらったけど,その術でも試そうかな? ほんとうに上手くいくのかしら?』
水香は,記憶にある通り,複雑な手印を切っていった。手印を切るたびに,モヤモヤとしたものが湧き出てきた。それは,『気』から生成されたものではないことはすぐに分かった。一連の手印を切る動作が,何かを召喚する信号のようなものだと思った。
一連の手印を切る動作が終了した。目の前には,楕円形で長さが2メートルほどもある扁平状の雲が出現した。
その雲は,水香に念話で声をかけた。
雲禅13号『わたくし,『雲禅13号』といいます。雲禅仙人に仕えておりました。今後は,あなた様に仕えさせていただきます。なんなりと命令を』
水香は,この世の中,棚からぼた餅などないことを知っている。必ず,何かを犠牲にしなければならない。
水香「あなたの目的は何なの? わたしにメリットがあるのはいいけど,あなたのメリットは?」
雲禅13号『・・・』
水香「あなたに命令します。正直に答えなさい!」
雲禅13号『・・・』
雲禅13号は,正直に答えるしかないと思った。
雲禅13号『いえ,別に大したことではありません。わたしが元いた世界では,『気』が不足しています。というのも気含石を排出する気糞獣がいないんです。わたしは,この世界に呼び出されたら,大気から気を吸収して亜空間にそれを溜め込みます。つまり,わたしは,『気』を収集する役目があります。もっとも,自分では,この世界に来ることができません。それが残念でなりません』
水香「13号って,他に仲間がいるの?」
雲禅13号「この凡界にはいません。わたしは13代目です。元の世界も,やっと,この世界の10分の1くらいの気の量になってきました。わたしの代で,なんとか5分の1くらいにするのが目標です」
水香「元の世界って,どういう意味? あなたが召喚される前にいた世界ってこと?」
雲禅13号「そうです。この凡界では誰にも知られていませんが,神界では,わたしがいた世界を『地獄界』って呼んでいました。
水香「地獄界?」
雲禅13号『はい,そうです。そこは,神界で罪を犯した者たちを島流しにする牢獄のような場所です。地面が高熱で溶岩だらけで,普通の人間ではすぐに死んでしまいます。その世界で移動するには,わたしのような雲形の『自動雲』が必要なんです。でも,そのパワーの源である『気』がとても少ないんです。たまたま,数千年前に,ある1体の自動雲がこの世界で召喚されました。その自動雲は,その後,雲禅1号と名乗って,この世界の大気から『気』を吸収して,地獄界に持ち帰りました。
それからです。この凡界でも,雲禅を召喚できる仙人を『雲禅仙人』と呼ぶようになったと聞いています』
水香「ふーーん。そうなの? もしかして,あなた,その地獄界に行くことができるの?」
雲禅13号「はい,戻るのは自由にできます。来れないだけです」
水香「それって,わたしも地獄界に行けるけど,戻れないってこと?」
雲禅13号『はい,召喚者はこの凡界に居る必要がありますから』
水香「・・・」
水香は,受け継いだ雲禅仙人の記憶を他の誰かに渡せばいいと思った。でも,,,水香みたいな異能者ならいざ知らず,一般の人間が,彼の記憶を受け継いだとしても,頭がパンクして廃人になりそうだ。
水香「まあ,いいわ。わたしとそこの女の子を乗せてちょうだい。それくらいできるのでしょう?」
雲禅13号『は~い! できま~す!喜んで~!』
雲禅13号は,水香と美羅琉の体の下に潜り込んで,彼女たちを乗せた。
雲禅13号『どちらに行けばいいのですか?』
水香「林玄宗よ」
雲禅13号「は~い! 了解で~す!」
雲禅13号は,ゆっくりと上空に舞い上がって,南方の方向に飛翔していった。
水香「え? 13号,あなた,林玄宗の場所,知っているの?」
雲禅13号『もちろんでございます。雲禅仙人様が何度も訪れた場所ですから』
水香「あっ,そう。それは助かるわ」
この時,美羅琉が意識を取り戻して,体を起こした。目の前の景色が,なんか,とんでもないことになっていた。
美羅琉「え? 何? わたし,空飛んでるの? ええーーー?!」
美羅琉は,急に周囲の景色がグルグル回りはじめて,また,意識を失った。
雲禅13号は,久しぶりに召喚されたものだから,螺旋形を描いて,高速で飛んでいった。
美羅琉はその螺旋飛行に目を回して気絶したが,水香はまったく平気だった。これぐらいの螺旋飛行など,水香にとっては屁でもない。
あまりに高速に飛ぶものだから,徒歩で2日もかかる距離を,わずか2分で着いてしまった。
雲禅13号『水香様,雲禅仙人様と同様に人目につかない場所で不時着しました。ここから林玄宗の門まで,徒歩で10分も歩けば着きます』
水香「意外と気が利くのね。ありがとう。あなたはどうするの?」
雲禅13号『特に用事がなければ,ブレスレット状に変身して水香様の手首で,のんびりと『気』を吸収しながら待機させていただきます』
雲禅13号は,雲状から水色のブレスレットに変身して,水香の左側の手首に収まった。
水香は,その水色のブレスレットをマジマジと見た。なかなか可愛いデザインをしていた。
美羅琉「うううーーー! ゲーーー!」
美羅琉は意識を再び取り戻したものの,螺旋状ジェットコースターを連続で100回も乗ったかのような状況になって,ゲロを吐いてしまった。
水香は,美羅琉が酔いの症状が緩和するのを待った。
1時間後,なんとか美羅琉が歩けるほどに回復した。
水香「美羅琉,ここからはあなたの仕事です。林玄宗に入宗する方法を聞いてきなさい」
美羅琉「それくらいはいいけど,でも,けんもほろろに追い返されてしまいそうだわ。それに一文無しだし,,,」
水香「いいから行きなさい。わたしはのんびりここで待ってるわ」
水香は,のんびりと体を横にして仮眠をはじめた。何もないときは仮眠をするに限る。修行なんぞするつもりもないし,今では,腐るほど精気,寿命,『気』を溜め込んでいる。後は,妊婦としてのんびり生活するに限る。
だって,雲禅仙人の記憶では,彼が林玄宗に来ると貴賓館に招かれて,門弟たちがいろいろと身の周りの世話をしてくれるというものだ。そうならば,入宗するしかないじゃないか!
しばらくして,美羅琉が戻ってきた。
美羅琉「禅子様,聞いてまいりました。3ヶ月後に新人の入宗試験があるそうです」
水香は,横になったまま聞いていた。
水香「3ヶ月後ではだめよ。せめて3日以内に入宗する方法を聞き出してちょうだい」
美羅琉は,溜息をついた。
美羅琉「はいは~い。また,行ってきま~す」
しばらくして,また,美羅琉が戻ってきた。
美羅琉「禅子様,聞いてきましたよ~。なんでも,この世は金次第だそうです。門番に金貨2枚を渡せば,編入試験を申し込めるそうです。試験内容は,審査官がその場で勝手に決めるので不明です。でも,審査官に金貨100枚を渡せば,裏口入宗はできるらしいですよ。もっとも,その後の期中や期末試験で,成績が悪いと,退宗になるんですって」
美羅琉の話と,雲禅仙人の記憶内容とはまったく違っていた。
水香「雲禅仙人は,林玄宗に来ると貴賓館に招待されたわよ。なんで,わたしたちは入れないの?」
美羅琉は,一瞬,水香が何を言っているのか理解できなかった。だが,ややしばらくして,水香の質問の意味をやっと理解した。
美羅琉「禅子様,ごめん。わたし,大事なことを聞くの忘れてました」
水香「何?」
美羅琉「禅子様は,いったいどの身分で,林玄宗を訪問するのですか?『雲禅仙人』の継承人である『雲禅天女』としてですか? それとも,新入候補生としてですか? はたまた,大妖怪・水香としてですか?」
そう問われると,水香も悩んでしまった。そんなときは,相手の意見に従うに限る。
水香「美羅琉が決めなさい」
美羅琉「ええーー!」
美羅琉は,こんなシチュエーションなど経験したこともない。いったい,どうすればいいのか?
美羅琉は,ちょっと考えて自分の意見を述べた。
美羅琉「『大妖怪・水香』の身分はマズイわ。天界からの討伐の対象だもの。そうなると,『雲禅天女』か『新入候補生』のどちらかだわ。『雲禅天女』の場合,その後継者として証明する必要があるわ。それに,禅子様は見かけまだ12歳くらいだし,それで天女並みの力があるとわかれば,嫉妬の対象になりそう。どんな難題をふっかけられるわ分かったものではないわ。ここは,多少,お金がかかっても,新入候補生のほうがいいと思います。どうかしら?」
水香「美羅琉の意見に従うわ。じゃあ,最低で金貨1000枚くらい,盗みにいきましょう。どこがいいと思う?」
美羅琉「そりゃ,近くの城下町がいいと思うけど,でも,あまりに近いと,追っ手の問題もあるし,,,それに,わたし,この辺の地理,分からないし」
水香「じゃあ,13号に聞けばいいわ。13号,わたしたちを2番目に近い城下町に連れていきなさい。そこで,大きな屋敷のある敷地に降ろしてちょうだい。ただし,お城の中はダメよ」
水香に左手にしているブレスレットがモクモクと雲状に変化していった。
美羅琉は,もう驚きすぎて神経がおかしくなっていた。大きく口を開いたものの,叫び声は出なかった。
雲禅13号『了解しました。あの,,,尋ねるのが遅くなりましたが,あなた様をなんとお呼びすればいいのでしょうか?』
水香「そうね,,,念話でしか話さないから,水香でいいわ」
雲禅13号『水香様,了解しました。ここから一番近いのは,桂河城下町になります。2番目に近いとなると,150kmほど離れている松風城下町か藤雨城下町になります。どちらがいいですか?』
水香「どっちでもいいわ」
雲禅13号は,風の流れを読んだ。
雲禅13号『今の風向きなら,追い風で松風城下町に行けます』
雲禅13号は,水香と美羅琉を乗せて,また螺旋飛行によって,松風城下町へと飛行した。その速度,時速600km!
15分ほどで松風城下町の上空に着いてしまった。何度か旋回して,適当に大きな屋敷の中庭に不時着した。
もちろん,美羅琉は途中から目が回って気絶してしまった。一言,螺旋飛行しないで,水平に飛んでと命令すればいいのだが,そんなことを気にする水香ではなかった。
中庭といっても,かなりの広さで,端から端まで300メートルほどもある広さだ。城下町の一角にはなるのだが,城下町の外れに位置している。もし,この広大な屋敷の表札を見ることができたら,『衆康堂』という名前だと分かっただろう。
水香は,雲禅13号から降りた。
水香「13号,美羅琉を乗せたまま,上空で待機してちょうだい。襲われそうになったら,彼女を守りなさい」
雲禅13号『水香様,了解です。わたしの速度に追いつける仙器は,この凡界には存在しません。ご安心ください』
水香「たのもしいわね。13号を呼ぶ時は,念話で連絡するわね」
雲禅13号『了解です。では,連絡をお待ちしています』
雲禅13号は,気絶した美羅琉を乗せたまま,上空に舞い上がっていった。
ピーピー!
何やら非常信号のような音が聞こえて,周囲の建物から,武装した連中が出てきた。その数,50名ほどにもなった。ほとんどが女性で,男性は10名しかいなかった。
水香はちょっとガッカリした。男だけの護衛部隊だったら,すぐに皆殺しするところなのに,女性がこんなにも多いと,殺すわけにもいかない。
そんなことを考えていると,水香がちょっと可笑しくなった。
水香『わたし,いつから,殺人狂みたいな発想するようになったのかしら。できるだけ低調に生きるって決めたのに』
女性の護衛隊長が,1歩,前に出て,水香に声をかけた。
隊長「あなたは,不法侵入しています。いったい,あなたは誰ですか?何の用なのですか?」
護衛隊長は,何やら,雲のような変なものに乗ってここに降りて来たと,巡回中の護衛隊員から報告を受けていた。そんなことができるということは,かなりの使い手に違いない。下手に相手を刺激しないほうがいい
泥棒に,自分の名前を名乗る殊勝な者はない。
水香「名前を名乗るほどの者ではありません。お金を奪いにきました。金貨千枚でいいです。すぐに渡してくれませんか?」
そんなこと言われて,はいそうですか?というアホはいない。
護衛隊長「・・・,あの,失礼ですが,もし,ダメだと言ったら,どうするのですか?」
水香「最初は皆殺しにしようかと思ったのですが,止めにしました。まずは,男性だけを殴り倒します」
ドカドカドカー!
水香は,透明の触手を繰り出して,男性の護衛隊員たちの腹部を強烈に強打した。
ドーン,ドーーン!ーー
彼ら10名は,10メートル以上も吹き飛ばされて気絶した。もしかしたら,死亡した者もいたかもしれない。
それを見た護衛隊長は,ビックリ仰天した。このチビの少女は,とんでもないほどの強者だ! 少なくともS級,いや,天女クラスか?
護衛隊長「まっ,待ってください! 待ってください! 今,上の者に相談しに行きますから!30分ほど待ってください!」
水香「10分待ちます。もし,来なかったら,ここにいる連中を皆殺しにします」
水香にそのつもりはないのだが,そう言えばお金がすぐに手に入ると思った。
護衛隊長「わかりました。では,10分お待ちください」
護衛隊隊長は,慌てて屋敷に戻っていった。
水香は,10分もこの場で待つのは退屈なので,雲禅13号を呼んで,水香を乗せるように命じた。松風城下町の景色を上空からのんびりと眺めるためだ。
女性の護衛員たちは,ただ,ポカンと,水香が雲に乗って上空に舞い上がって,大きく旋回してるのを眺めた。
「あれって,雲に乗ってるの?」
「そうみたい。わたし,初めてみたわ」
「でも,確か,童話では,雲に乗る人って,雲禅仙人だって云っていたわ」
「それ,わたしも知っている!この衆康堂のオーナーって,来福薬問屋の若旦那だけど,確か,芭蕉仙人だってウワサ聞いたことがあるわ。もし,ほんとうなら,その若旦那に来てもらえば,すべて解決できるのに」
「若旦那の婚約者である凛様が,勉強がてら,この衆康堂に来ているけど,凛様では,あのチビには勝てそうもないわね」
「でも,凛様って,確かS級になっているはずよ。簡単に負けないと思うわ」
などなど,そんなウワサ話をしていると,屋敷から護衛隊長に連れられて,凛が慌ててやってきた。
凛「無頼者の少女って,どこにいるの?」
護衛隊員A「あの,,,上空で雲に乗って旋回しています」
凛「はあ? 雲に乗って??」
凛は,上空を見上げた。確かに遙か彼方に,雲がゆっくりと旋回していた。
ややしばらくして,その雲は徐々に高度を低くして,再び,この中庭に降りてきた。
雲から降りてきたのは,水香だった。
凛「え? 小芳? いや,大妖怪・水香様! 水香様ではありませんか! ご無沙汰しています!」
水香「え? 凛なの? なんでここにいるの? 梅山城はどうしたの?」
水香は,この時になって思い出したかのように,梅山城のことを少し気にしだした。
とにもかくにも,水香は凛の大歓迎にあって,屋敷に案内された。
護衛隊長や隊員たちは,ただ,『大妖怪・水香』という言葉を聞いて,その場で茫然自失して体中が震えた。ほんとうに,1歩間違えれば,皆殺しにあうところだった。
ー 屋敷内の貴賓室 ー
貴賓室で,凛は,これまでの経緯を詳しく水香に報告し,水香も,同じくこれまでの経緯を凛に伝えた。
凛の説明によれば,この場所は,衆康堂といって,丹薬を煉丹する施設で,凛の婚約者である来福薬問屋の若旦那,つまり,芭蕉仙人がオーナーとなっている。
凛は,いずれ,芭蕉仙人と結婚する予定だが,結婚後は,この衆康堂の管理を任される予定だ。そのため,今は,ここで勉強中という身分であることも水香に伝えた。
一方,水香は,雲禅天女と名乗っていいこと,雲禅13号を従えていること,さらに妊娠中であり,子どもを産む間は,林弦宗に入宗して,そこでおとなしく暮らすことを考えている旨を伝えた。
水香「それで,,,林弦宗に裏口入宗するのに,金貨1000枚がいるのよ。凛,お金,ちょうだい」
水香は,手の平を広げて凛に向けた。
凛「水香様もバカですね。梅山城に戻れば,いくらでもお金が手に入るでしょうに」
そう言われて,水香はハタッとそう思った。
凛「でも,折角来てくれたから,お金を貸してあげましょう。でも,1年後には利子をつけて返してね」
水香「そうね。1年後には倍の金貨2000枚を返してあげましょう。梅山城からいくらでもむしりとってやるわ」
凛「フフフ,では,証文を書きますね」
凛は,意外としっかりしていた。
お金をゲットした水香は,ニコニコ顔で凛と別れて,雲禅13号に乗って林弦宗の方向に戻っていった。
凛は,感慨深げに空を見上げて水香を見送った。
凛は,芭蕉仙人から,仙人仲間の情報をいろいろと聞かされていた。その仙人仲間の中で,一番の強者であるのが雲禅仙人だ。そのレベルは神人のトップレベルとほぼ同等!
その彼から,雲禅天女を継承した水香は,いったいどれだけ強いのか?
凛は,護衛隊隊長や隊員たちに命じた。
凛「あの水香様のことは,いっさい他言無用です! もし,漏らしたら,即刻,衆康堂から去ってもらいます!」
全員「了解です! もうあの少女のことはもう忘れました!」
凛「よろしい。では,各自,自分の持ち場に戻ってちょうだい」
全員「はい,凛様!」
凛が,今,水香のために出来ることは,これくらいなものだった。
尚,水香に激しくぶたれた男性の護衛隊員は,全治,1ヶ月ほの重症を負ってしまい,各自,自宅で治療とリハビルに専念することになった。
ーーー
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