谷 和弘 6
あれから、全員家に帰った。
話せる状態じゃなかったし、話したって何も変わらないから。
とにかく、早く帰って休みたかった。
華奈ちゃんは松岡が送っていく。
まさに顔面蒼白、と言った感じだったが大丈夫だろうか。
池町もだいぶ憔悴していた。
送って行こうか聞いたが、平気だと断られた。
俺の顔色も、同じようなものだったのだろう。
家に着くと、すぐにベッドに倒れ込んだ。
あんなことがあって、寝れる気はしなかったが座っているこも辛かった。
『…はやく……帰らなきゃ……』
目を閉じると、あの時の相馬の姿が脳裏に焼きついているみたいで浮かんでくる。
部屋に入ってきた時から様子はおかしかった。
いつもと違って、座ってからはただ携帯をいじって話に入ってくることもない。
携帯!
相馬に連絡してみないと。
そんな当たり前のことさえしていなかった。
『おかけになった電話をお呼びしましたが、お出になりません』
ダメだ、繋がらない。
またベッドに倒れ込む。
気が緩んだのか、意識が遠のいていく。
あぁ、何の音だろう。
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知らない家。
これは、夢か。
リーン リーン
窓に風鈴が吊られている。
綺麗な風鈴だ。
あれは…
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目が覚めると、自分の部屋だった。
そのまま朝まで寝てしまっていたらしい。
夢を、見ていた。
不思議と鮮明に覚えている。
起き上がり、机に置いたかばんから本を取り出す。
夢に出てきた風鈴。
何て呼ぶ所なのかはわからないけど、風鈴から伸びた紐に結んであった紙。
「やっぱり、これと同じだ」
あの家から持ってきてしまった紙。
栞じゃなかったんだ。
でも、なんであんな夢を?
たまたま、この紙が記憶にあったから夢として出てきただけ?
それにしてはリアルで、まるで自分の記憶のような。
それに、風鈴だけじゃなくてあの家も何だか懐かしく感じた。
朝になっても、相馬からの連絡は来ていない。
代わりに、別の人からの留守電が残っていた。
『…………夜遅くにごめん。今日のことなんだけど。あの、相馬のこと、……私のせいかもしれない』
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