第23話 フラウさんの全力回

フラウ視点


――私は見てしまった。


サーシャ様、カーミラ様そしてラルフロッド様の3人が同じテーブルを囲んで座り、カーミラ様とサーシャ様がそっと手を取り合って微笑み合い、そして抱き合う。あの……天にも昇るほど尊い光景を。


あまりの神々しさに、目が潰れるかと思った。


「……だ、だめです……この3人、尊い……尊すぎて……本当に……無理……。」



気づけば私は鼻を押さえて震えていた。

ミリアムさんが横で


「フラウさん、しっかりして下さい!今ここで倒れたら、フラウさんが変な人に思われちゃいますよ!!」


と支えてくれたが、これはもう物理的にどうにもならない。


3人もそうですが、特にカーミラ様とサーシャ様のあの御二人――

美しさも可愛らしさも調和しすぎていて……

“対”として並べたときの完成度が高すぎる。


(これ……!運命の組み合わせです……!)


私、フラウは、今この瞬間、神からの啓示を受けた!


お二人の“ドレス”を作る。

絶対に作る。

死んでも作る。


いや死なないけど。


だって……だって……!


例えば同じ色の布をまとって隣に立てば、

お二人は確実に世界を幸せにする……そんな破壊力があるはず!


私はこの神の啓示を受けて、計画を練っていると、サーシャ様が、カーミラ様とラルフロッド様と御二人だけで会話をされたらと、勧められているので、私はその言葉に大きく頷き、


「おまかせ下さい!私の母親が美味しいお菓子を食べると幸せになるって言っていましたので、サーシャ様には私の父親から教えてもらった秘密のレシピのお菓子をお出ししますので、どうぞこちらへ!」


とサーシャ様をお連れする。

この後、私はサーシャ様に、


「サーシャ様はカーミラ様とお揃いや対になった服を着るのはどうでしょうか?ラルフロッド様は男性ですので、挿し色とかタイやスカーフでお揃いにするのですが、女性同士だとドレスにできるのでやり甲斐がありますよね!」


とお尋ねすると、サーシャ様は、


「うん…。カーミラ様が良ければ、私は問題ないけど…。同じようなドレスを着たら気にされないかな?」


私はサーシャ様の言葉を聞き、心の中で、自分を励ます!


『良い!フラウ!今がこの計画の分水嶺よ!』


私は鼻息を荒くして、


「大丈夫です!お二人共、とても愛らしくして差し上げます!」


私の優雅かつ熱い想いがサーシャ様に届いたのかサーシャ様は頷いてくれたので、私はその夜、カーミラ様のお世話をしながら、


「カーミラ様!どうか……どうかっ!!

サーシャ様と御二人のドレスを作らせて下さい!!いえ、作らせていただかなければ生きている意味がありません!!」


カーミラ様は私の言葉に驚きながらも、公爵令嬢らしく冷静に話しをされる。


「フラウ、どうしたの?ラルフロッド様とサーシャ様とのお話した後から、少しというかかなり考え込んでいるみたいだけど?」


カーミラ様の冷静な態度でも、今の私は止まらない。


カーミラ様の前にひざまずき、胸に手をあて、熱く叫んだ。


「カーミラ様とサーシャ様のお二人の容姿、雰囲気やラルフロッド様を想う御心が調和していて“対”になるように生まれているのです!

これを活かさずして何をカーミラ様の専属メイドと呼びましょう!!」


カーミラ様が困ったように尋ねる。


「えっと……お揃いって、どんな感じなの?」


よくぞ聞いて下さった!

私は胸が高鳴るのを感じながら説明する。


「はい!御二人には同じ色のドレスを……!そして、お互いの瞳の色を差し色に入れます。基本的には同じ色を使いながら、それぞれのデザインで個性を出します!」


カーミラ様に向かって手を広げ、熱弁する。


「サーシャ様にはリボンを基調にした可愛らしい装いを!カーミラ様には縦ラインの刺繍を活かした気品あるデザインを!二つで一つ。お二人が並ぶことで、初めて完全になる――理想のドレスです!!」


自分で言っていて、興奮で震えが止まらない。


「……フラウ、落ち着いて……。」


カーミラ様が必死に私を押さえるが、無理だ。


だって、今の私の心の中には――

お揃いドレスを着せるべき最高の素材のお二人がいるのだから。


カーミラ様が控えめにお尋ねになる。


「で、でも……お揃いのドレスでパーティーなどにでたら周囲にどう思われるかしら……?」


私は胸を張り、堂々と言い放った。


「仲良しの美しい姉妹と思われます!!

文句をいう者がいれば、私が睨み返します!!何でしたらカーミラ様のドレスにはラルフロッド様の髪もしくは瞳の色をアクセントにあしらえば恋の相手として認識されるでしょう!」



『フラウ…なんて完璧なの!』

私は心の中で自分で自分を褒める。


カーミラ様の反応は――


「ラルフロッド様と恋のお相手……。」


カーミラ様の頬が赤くなる。

「……夢みたいです……!」


そのお顔を見た瞬間、胸の奥で何かが弾けた。


私は決めた。

これはもう、神に与えられた使命なのだと。


「ではっ!!すぐにヨーゼフさんにお話を通して予算を取ってもらいます!!」


「え、今!?」


「今です!!この“熱”が冷める前に!!」


私はそのまま走り去った。

背後では、私の様子がおかしい事を気にしていたのか、カーミラ様のお部屋の前で待機していたミリアムが声をかけてくる。


「フラウさん落ち着いて下さい。まだカーミラ様のお世話が!」


……でも、そんな声は今の私には届かない。


だって今の私は――

世界一可愛い“義姉妹”のあの御二人に完璧なドレスを着せるために生きているのだから。


何があっても、全力で、魂を燃やして。

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