言葉辞典
欐夜【りや】
屋上
僕は病院の屋上から外を見るのが好きだった。
ぽっかり空いた僕の心に毒のようにじわじわと広がる死にたいという気持ち。
ここから落ちてしまえば楽になれるのかな。
そんな事を考えていた時に声をかけられた。
「こんなところで何をしてるの?」
振り返ると20代後半のような女の人が立っていた。
僕だって正直に死にたいなんて言える訳もなく…無言で外を見ていた。
女の人は何も言わずに僕の隣で外を見ていた。
その横顔はどこか悲しげのような感じに見えてしまった。
景色よりも何故か引かれる何かがあった。
「何?私の横顔にち見とれちゃった?」
その笑顔に僕は顔をすぐに逸らしてしまった。
この胸の奥の暑くなった環状は初めてだった。
「思春期の可愛いヤツめ♪」
頭を撫でられる僕は何も言い返すことは出来なかった。
しばらく無言の時間が過ぎていった。
「ある私の友達がすごく好きでね。告白を考えてた子がいたの。」
突然始まった女の人の話し。
静かに僕は聞いてみることにした。
女の人といると緊張するけどどこか安心できた気がする。
「いつも一緒で笑顔がとても可愛くて相手の事もちゃんと考えられる子だった。」
何故か僕は話しを聞いているとズキズキした気持ちになっていた事に気づいた。
女の人の好きな人の話し…
この気持ちが分かったのはまたしばらく後だった。
「その子はいつも何かに縛られていたんだよね。親の期待にいつも答えてその子自身の個性が何も無いんだよね。」
(人形みたいである意味死んでるんだよ)
最後にぼそっと言った言葉にはすごく重くて悲しい気持ちが入っていた。
聞こえないふりをして僕は女の人をじっと見つめて話しを聞いていた。
「私はその子の親の目を盗んで遊びや色んな話しを沢山してたんだけど。親は変わってしまうその子が嫌で家に閉じ込めてしまったの」
僕とは真反対の親もいるんだなと聞いていた。
「それから1年くらいだったかな。その子もう限界になってしまったらしく。毒を飲んでしまったの。」
どんな理由でさえ僕はその子の行動力がとてもすごい事だし強いひとだなと思った。
自殺なんて人から見たら逃げや恥ずかしい事として考えられてしまうけど僕から見たら尊敬出来る人と同じなんだと思う。
「その子は死ぬ事も出来なかった。植物状態になって臓器提供を思念してたけど親にかき消されてしまって。生きることも死ぬことも出来なくなっちゃったんだよね。」
女の人はめから涙を流して景色を見ていた。
この世の中には1人1人色んな人生がある。
でも毎日頑張って生きている。
大きく深呼吸をした僕は…女の人に笑顔で
「ありがとう」と言った。
涙を拭いだ姿はとても綺麗だった。
病室へ戻る時に扉の前で振り返ると女の人の姿はなかった。
【舞桜忌人】
(意味)
・死にたくても死ねない人のこと。
言葉辞典 欐夜【りや】 @Reya
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