第7話: 住居の建設開始

「さて、そろそろ本格的に家を建てるか……」


 俺はエルシルの森の静かな風景を見渡しながら、これから建てるべき家について考え始めた。ここに来てから数日が経ち、ようやく落ち着いた生活ができるようになったが、今の仮設シェルターでは限界がある。日中は何とか過ごせても、夜になると冷え込むし、雨風にも弱い。これではスローライフどころか、生活そのものが厳しい状態だ。


「まずは、どんな家にするかだよな……」


 考え始めると、ワクワクしてくる。この異世界での生活は、静かで落ち着いた自然との共存がテーマだ。だから、家も自然に溶け込むようなシンプルで、なおかつ快適なものにしたい。目指すのは、自分のペースでのんびりと過ごせる空間だ。だが、ただ快適なだけでは不十分だ。耐久性も重視しないと、この異世界で生き抜くには不安が残る。雨風はもちろん、防犯のことも考えて、頑丈な家を作らなければならない。


「よし、素材はやっぱり木材と石材をメインにしよう。森には木が豊富にあるし、近くに川も流れているから石も手に入るだろう」


 エルシルの森の自然を活かして、必要な材料は現地調達できそうだ。スキル「無限素材創出」で素材を作り出すこともできるが、できる限り森の恵みを使いたい。スキルに頼りすぎると、味気ない感じがする。自然の中で生きていく以上、自然との調和を大事にしたい。


 次に、家の構造をどうするかだ。俺は足元に落ちていた棒を使って、地面に簡単な図を描きながら、家の間取りをイメージしていく。まずは風通しの良い場所がいい。湿気がこもると快適な生活は望めないし、光が差し込む位置も大事だ。窓の大きさや配置を工夫して、森の景色を楽しみながら、自然の光と風を取り入れたデザインにしよう。


「寝室はこっちの方がいいな……リビングは中央に広く取って、日差しがしっかり入るようにしたい。作業部屋はリビングの隣で……」


 間取りを決めていく作業は意外と楽しい。以前の仕事漬けの日々とはまったく違い、自由に自分の家をデザインするのは新鮮な体験だ。考えれば考えるほど、自分だけの空間が頭の中で広がっていく。


「基礎もしっかりしてないと、後で困るよな……」


 耐久性の話に戻るが、まず基礎がしっかりしていなければ意味がない。家全体の土台となる部分が弱いと、後でいくら上の部分を強くしても不安定なままだ。だから、基礎作りは時間をかけて丁寧にやらないといけない。だが、どこから手を付ければいいのか、その部分で少し悩んでいる。


「まあ、無限素材創出があるし、足りないものはすぐに補えるんだろうけど……自然素材を使いたいしな」


 自然に寄り添った生活を望むなら、森にある素材を最大限活用するのが正しい。地面の整地から始め、必要なら素材を生成するが、基本は森の恵みに頼る方針でいこう。俺はスコップを手に取り、整地の段取りを頭の中で整理した。


「まずは地面をしっかり平らにして、基礎を安定させる必要がある。うん、それでいいな」


 土地選びは終わったが、その次にどうやって安定した基礎を作るかが鍵だ。石材を使えば丈夫な基礎ができるが、どのくらいの強度が必要なのかはまだイメージが固まっていない。森の中で風の音が静かに流れる中、俺はあれこれと考えながら次の作業に取り掛かる準備を進めた。


「基礎がしっかりしてないと、後で家が傾いたりするって聞いたことがあるけど……石材と木材で、安定感のある土台を作ろう」


 地面に描いた図を見直しながら、具体的にどの部分にどれだけの石材を使うべきかを考えていく。石を多く使えば耐久性は上がるが、その分デザインが重くなるし、見た目もゴツゴツしてしまうかもしれない。かといって、木材ばかり使うと風雨に弱くなりそうだ。


「石材はここに配置して……柱の位置はここと……」


 地面に刻んだ線に沿って、石材の配置や柱の位置を考える。家全体のバランスを考えながら、しっかりと安定した構造を目指している。家の間取りと構造が決まれば、次に進めるべき作業が見えてくる。基礎作りが成功すれば、そこから先は少しずつ形にしていく作業だ。


「まずは基礎を作って、その後に柱を立てる……うん、順番はこれで良さそうだな」


 柱が立てば、家の骨組みがしっかりしてくるし、次は壁をどうするかを考えなければならない。壁もただの装飾ではなく、雨風や寒さを防ぐための重要な部分だ。木材を使うか、それとも石材を組み合わせて作るか……耐久性とデザインを両立させる方法を探っていく。


「壁も自然素材で作るつもりだが、風通しも重要だな。窓は大きめに作って……あとは……」


 屋根の設計も忘れてはいけない。雨水がたまらないよう、しっかりと傾斜をつけた三角屋根を考えている。屋根の形がしっかりしていれば、雨漏りの心配もなくなる。作業が進むにつれ、家全体のイメージがはっきりと形になっていくのがわかる。


「よし、設計はこれで完璧だな。次は実際に手を動かして、作業を進めよう」


 設計が固まった今、次は基礎を作る作業に移ることになる。ここからが本番だ。スキルを駆使しながら、家作りに集中していく準備は整った。これでスローライフの第一歩が踏み出せる気がする。



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