無自覚なスローライフ 〜異世界で作る静かなる理想郷〜
りおりお
序章: 異世界への転移とスローライフの始まり
第1話: 異世界への突然の転移
「なんだこれ……。」
目が覚めたら、そこは見慣れない風景だった。
寝転がっていた地面は柔らかく、草の香りが鼻に届く。見上げると、青い空が広がり、その間には大きな木々が茂っていた。まるで、絵本の中に飛び込んだような自然の景色。風が気持ちよく吹き抜け、木の葉がささやく音が心地よい。
「……ここ、どこ?」
まばたきしながら、辺りを見回す。周囲には人影はなく、代わりに小鳥のさえずりや遠くから聞こえる川のせせらぎが聞こえてくる。
「これ、夢か?」
頭を軽く振りながら、思い出す。昨日は、会社を正式に辞めて、晴れて自由の身。田舎に引っ越して、ゆっくりとしたスローライフを送るんだと決めたはずだ。
なのに……なぜか今、見知らぬ場所にいる。
「……夢じゃないよな。」
頬をつねってみる。軽く痛むだけで、もちろん、夢なんかじゃない。
「マジか……異世界転移って、こんなあっさり起こるもんなのか?」
どこか他人事のように呟いてしまった。驚くべき状況にいることは分かっている。でも、心のどこかで冷静に、すぐにパニックになる必要はないと感じている自分がいる。
「まあ、何とかなるか。」
そう言って、俺は立ち上がった。
周囲を観察してみると、どうやらここは森の中のようだ。木々が高く伸び、その間に差し込む光が幻想的だ。風は穏やかで、森全体が息づいているような感覚すらある。少し歩いてみることにした。
「まずは、周りを確認しないとな。」
ゆっくりと歩き始めると、足元には可愛らしい草花が広がっていて、虫たちが飛び交っている。見たことのない種類の花もあり、その鮮やかさに思わず目を奪われる。ここが本当に地球じゃないことを、じわじわと実感し始める。
「こういうの、テレビとか小説でよくあるけど……現実になるとはなぁ。」
異世界転移。ファンタジー好きの俺には夢のような展開だが、実際にこうして体験すると、思ったよりも平穏な気持ちでいる自分が不思議だ。もっと慌てると思っていたけど、どうやら俺はこういう状況にもすぐに馴染んでしまうタイプらしい。
「とはいえ、どうするかな……。」
目的地もなく歩き回るのは無駄だ。今後どうするか、しっかり計画を立てる必要がある。まずは生活の基盤を整えるために、住む場所と食料、水源の確保が最優先だろう。
「どこかいい場所、見つけないとな。」
そう思って、少し歩を進めたところで、小さな動物の鳴き声が耳に届いた。ふと足を止め、その方向を見やると、草むらの中から小さな生き物が顔を出しているのが見えた。
「……犬?」
いや、少し違う。犬のように見えるが、耳が大きく、全体的にふさふさした毛並みで、尻尾も長くて可愛らしい。それに、目が大きく輝いていて、まるで宝石みたいだ。
「おお……お前、可愛いな。」
思わず笑顔になる。目の前の生物は、こちらをじっと見つめながら、興味深そうに近づいてくる。俺も慎重に近づき、ゆっくりとしゃがみ込むと、その生物は嬉しそうに鳴いて、俺の手の匂いを嗅いでくる。
「よしよし、怖がるなよ。」
手を差し出すと、ふわふわの毛に触れることができた。少し冷たい触感だが、全く警戒していない様子で、すぐに俺にすり寄ってくる。
「お前、どこから来たんだ?」
もちろん答えはないが、そのまましばらく撫でていると、自然と心が落ち着いてきた。こういう不思議な生物に出会えるのも、異世界の醍醐味なのかもしれない。
「さて、俺も頑張らないとな。」
立ち上がり、もう一度周囲を見渡す。目の前には広がる森、そして奥から聞こえる川のせせらぎ。自然が豊かで、危険な感じはしない。
「まずは、水源を探してみるか。喉も渇いたし。」
水の音に導かれるように歩き出す。森の中は静かで、鳥の声や風の音が心地よく響く。歩きながら、異世界という現実を少しずつ受け入れていく自分を感じる。
「思ったより悪くないな、異世界も。」
自然の中で静かに暮らす。まさに俺が望んでいたスローライフだ。まあ、予定していた田舎とは少し違うけど、これもまた一つの人生だ。
しばらく歩いていると、目の前に川が見えてきた。澄んだ水がキラキラと輝き、周囲には美しい花や植物が生い茂っている。これはいい場所だ。
「ここに決めた。」
まずはこの場所を拠点にしよう。住む場所を確保し、森での生活を整えていく。家を建てて、食料を確保して、水源もある。これで当面の生活は安定するだろう。
「よし、やってみるか。」
川の水で顔を洗い、一息つく。そして、これから始まる異世界での生活に向けて、心を新たにする。
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