第九の月
空は蒼く、どこまでも広がり、太陽が我が物顔で、光と熱を地上に注ぎ続けていた。
夏の始まりを告げる空気は、どこか生命の力強さ、躍動、活力を感じさせる。
少女は窓から外を見つめながら、二人の姿を見守っていた。
彼女にとって暑さや寒さを感じることはできても、かつてのように体がそれに反応して汗を流したり、震えたりすることはなくなっていた。
しかし、イーサンとローシュは違った。
二人は初めて迎えるこの初夏の、まだ穏やかな暑さに、少し参った様子も見えたが、楽しそうに家を建て始めていた。
家を建てる場所は、少女の家のすぐ近く。
木々に囲まれた静かな土地に、二人で自分たちの住処を作ろうとしている。
まだ基礎を固めている段階だが、その手際は見事で、ローシュは少し離れた所に押し車を使って土を運んでいる。
イーサンはその力強さを遺憾無く発揮して、木に祈りを捧げた後、木材を切り出して整え、担いで運び、2人は互いに声をかけ合いながら作業を進めていた。
「あれから随分変わったなぁ…」
少女は独り言のように呟いた。
あの日、森で何かを話し合っていた二人は、時間と共にますます互いに引かれ合うようになっていた。
しばらくして、ついに先日、二人は彼女のもとに来て、家を建てて一緒に住む許可を求めたのだ。
「もう二人とも大人になっちゃったのかな…」と、
少女は微笑みながら、かつて幼かった二人を思い出した。
彼女が育てた子供たちは、いつの間にか、そしてあっという間に自分たちの道を歩み始めている。
それを誇らしく感じる一方で、どこか少し寂しい気持ちもあった。
作業を進める二人の様子を見ながら、少女は思った。
これから二人はどんな未来を築いていくのだろうか。
そして、それをずっと変化しない自分はきっと見続けていくことになるのだろう…とも。
そしてその未来が、近いうちに彼女の知らない新しい家族の誕生と、更なる温もりを与えてくれることになりそうな、そんな予感を感じていたのであった。
少女はその予感を抱きながら、静かに微笑んだ。風に乗って、森の中からイーサンとローシュの笑い声がかすかに聞こえてくる。彼らの家が少しずつ形を成していく様子を見守るたびに、彼女は彼らが新しい道を歩み始めていることを実感した。
この小さな家族は、もうすぐ新たな形で再び繋がるだろう。それは、少女にとっても新しい挑戦であり、喜びであった。
季節は移ろい、夏が本格的に訪れようとしていた。
太陽の温もりはますます強くなり、草木は成長を続けていた。
これから何が待ち受けているのか、誰にもわからない。
しかし、少女はその未来が温かいものであることを、心の奥で確信していた。
森の中の草原で進んでいく家族と、世界の物語はこれからも続いていく。
そして、彼らが築いていく新しい日々の中で、さらに深まる絆と愛が、静かに育まれていくのだろう。
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