北の国のロレンス

はた

第1話 午後三時

 私はロレンス。商社に勤める、どこにでもいる一般人だ。今は冬。今日は特に冷えるな…。予報によると、夜には雪が降る可能性があるらしい。これは丁度いい。素晴らしい演出になりそうだ。


 というのも、今日はクリスマス・イヴ。


 東の国のジャパンでは恋人に告白するには、もってこいの日なのだという。これに乗っかってやろうじゃないか。私は同じ部署のナタリーさんに思いを寄せている。


 彼女は愛らしく美人で気配りもできる、素晴らしい女性だ。彼女を好いているというか、尊敬の念まで抱いているほどだ。


 今日は彼女と食事の約束をすることに成功した。勇気は出してみるものだ。


 それだけでも奇跡と言える。舞い上がるような気持ちを抑えつつ、私は十日前から仕事を処理し続けた。おかげで今日は残業も無く、安心して彼女をエスコートできる。


 だが、彼女の方はもう少し仕事があるらしい。私は先に退社し、待ち合わせ場所のレニード大通りに向かった。


 おお…流石に今日は冷えるな。だがそんなものは些末な事。


 手にはシャンパンを、懐には彼女への贈り物のネックレスを忍ばせている。


 はやる気持ちで、どぎまぎしながら彼女を待つ。


 …彼女を待って15分は経ったか?まあ、それくらいは路面電車の待ち時間程度。大したことではない。


 しかし、待ち合わせの3時間前は流石に早すぎたか…。だが興奮は冷めやらない。


 こうしてみると、今日は街中に恋人たちが見て取れる。皆、私と同じ気持ちなのだな。わかる、わかるぞ。君たちは同志だ。存分に今日という素晴らしい日を、共に過ごそうじゃないか。


 …洗濯物は取り込んだかな?一度、帰って確認しても良かったか…。


 いやいや、彼女と入れ違いになっては大変だ。一日くらいいいじゃないか。服ならまた洗えばいい。問題ない。


 そういえば、通販のPCパーツが届くのは今日だったな。私は大学は工学科を出ている。PCなどのセッティングはお手の物。いつも楽しみにしていた。


 …そうか、今日届くのか。しまったな。まあ、今のご時世は置き配がある。玄関先に置いてくれるだろう。明日開封すればいいな。


 あー…早く彼女来ないかな。いやいや、彼女をせかしてはいけない。落ち着け、私。

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