6話

「はははっ」


 昨日来れなかったのは申し訳無かったとは思ってるけど、出迎えで可愛らしい抗議をされて思わず笑ってしまった。今は腹這いになっててて手も使えないから、入り切るまでされるがままだ。


「ピーピー」


 自分の訴えを笑われたからか、ナーニャは抗議の声を上げて、さらに素早くペチペチと僕の頭を叩き始めた。手も小さいし、優しく叩いてくれてるのもあって只々可愛いだけだった。全く、相変わらずうちのナーニャは世界一可愛いな。僕にとってナーニャが唯一にして最大の癒しだ、見てるだけで1日の疲れが吹っ飛んでいく気がする。


「悪かったって、昨日は来れなくてごめんな、ナーニャ、元気そうで良かったよ」


漸く部屋へと入り切った僕は、手についた土を払ってからナーニャを抱き上げると。笑いながら話しかけた。

ナーニャは二足歩行で、全身毛に覆われていて、赤と白が綺麗に混じったグラデーションだ。人間?を可愛らしく小さくして、手足を短くして毛を生やして耳を頭につけたら完成だ。


「ピー、ピピピー」


まだご機嫌斜めなのか、言った僕から顔を背けるとさらに抗議の鳴き声をあげ始めた。こうなるといつもは中々許してくれないんだけど、今日の僕には秘策があるから、直ぐに機嫌を直してくれるだろう。


「昨日は来れなくてごめんね、ナーニャ、昨日は色々大変で来られなかったんだ、お詫びになんだけど、今日はいつもより美味しい食べ物をあげる」


僕はそう言ってパンと夕食で残した物を取り出すと、ナーニャに見せた。


「じゃじゃーん、パンです、それといつもの」


「ピピピ?」


ナーニャはパンを手に取ると、不思議そうにして匂いをかぎだすと、匂いが気に入ったのか、僕にお礼を言って抱きついた後に食べだした。


「ピピピピー」


「おー、可愛いね、ごめんね、どういたしまして」 


お礼を言いながら抱きついてくるとは、なんてあざと可愛いんだ。此奴ナーニャ、流石やり手だ。食べ物をあげただけで機嫌が直るのは少し現金な気がしたけど、可愛さに免じてスルーしておこう、今回は完全に僕が悪いし。


「ピー!?ピピー!!」


ナーニャはパンを食べ始めると、その美味しさに感動したのか、自分の体の半分程もの大きさがあるそれを、すぐに平らげた。そうもなる筈だ、いつも僕と同じような物を食べているんだから、このパンを食べたら美味しさに夢中になる事は間違いなし。満足そうにした後、夕食の残りを食べ終わると。僕に再度お礼を言ってきた。


「ピピピ」


「どういたしまして、口に合って良かったよ」


健気にお礼を言うその姿に癒されながらそう返す。

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