海鳴島のウサギ
朝霧
バニーガールになった経緯
昔々、とは言っても今から五年くらい前の話。
仲の良い三人組の子供達がいました。
頭のいい賢い女の子、勇敢で勇気ある男の子、冷静なだけの女の子。
ひょんなことから三人は世界の危機に巻き込まれて、三人とその他大勢の仲間達と大冒険へ。
世界を救う使命をうっかり受けてしまった三人の子供は仲間たちと共に世界の端から端まで、時に誰も足を踏み入れたことのない未到の地に足を踏み入れ、時に空の彼方まで届く塔のてっぺんへ。
そうして子供達は世界を正しく救う力を得るための試練を受けた。
頭のいい女の子はその賢さで試練を突破し、勇敢な少年はその勇気で試験を突破し、そして冷静なだけの少女だけは試練を突破できなかった。
それもそのはずだ、冷静なだけの少女には大した取り柄もなかったし、実のところを言ってしまうと元々は悪党の類だったのだから。
だから、当然のように冷静なだけの少女は世界を救う資格を得ることができなかった。
ここまではきっとよくあるお話、冷静なだけの少女にやり直しの機会が永遠に訪れなかったことも、その後堕落の道に堕ちたことも。
こんなのはどこにでも転がっている普通の人間の話だ。
海鳴島にはやたらめったら強いバニーガールがいるという都市伝説じみた噂が本土の方で冗談半分で語られているらしいけど、半分は本当の話である。
というかそのバニガって私のことだし。
「かつて世界を救うための試練をただ一人クリアできなかった出来損ないは、クソ田舎の島でクソデカ薙刀をぶん回すバニーガールになりましたとさ」
何度目になるかわからない独白を呟いた。何回言ってみてもやっぱり嗤える。
世界を救う子供達のうちの一人からバニーガールに鞍替えとは、堕ちるところまで堕ちたものだと自分でも思う。
けれども仕方ない、装備ガチャの結果がよろしくなかったのだから。
冒険者ギルドにはどこにでも置いてある装備ガチャ、五年前のあの日、私はそれに全財産を注ぎ込んだ。
あの頃の私は何者でもなく、人に誇れるような才能もなかった、だから出たものの中で最も高性能な武器を身に付け、それを一生かけて極めようと思った。
武器に関しては大当たりを引いた、最初はこんな重いの扱えるだろうかと思ったけど、割となんとかなった。
けれど武器以外の運がなかった、正確には運はあったのだけど、デザイン運がカスだった。
高性能なくせにやたら露出の高いものやいかがわしそうなものしか出てこなかったのである。
全財産が残り二割を切った頃に引いてた一番レアかつ高性能装備がほぼ紐のスリングショットな水着だった時には嫌な汗がダラダラと流れていた、最後の一回でその紐を超える最高レアのバニースーツを引き当てることができて本当によかった。
あの紐を引いていなかったらバニースーツを着用するのにものすごい羞恥心があったかもしれないけど、紐よりも余程マシだと思うともはや何も感じなかった。
それに私が引いたバニースーツは世界レベルで見ても最高レアなものだったので、普通に性能が良すぎて見た目とか人目は一時間でどうでも良くなった。
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