第2話 月下美人

 そんな所に、ポカンと口のあいた公園と

 ベンチがひとつ。

 なんとなく彼は、ジッとそこを見つめていました。

 すると突然、ある娘が公園へ駆けてきます。

 銀色の月光にぬれた、白いシルクのワンピース。

 流れ星のような女の子でした。

 おどろいた月は、まわりを見回してみましたが

 夜空に浮かぶ星たちは一つも欠けていませんでした。

 彼女が、ポスンッと、そこのベンチに座ります。

 彼女は、いのるように

 しばらくのあいだ、両手をギュッと握っていました。

 やがてそれを開くと、森の中の公園に

 夜空のどの星よりも明るい一等星がパッと咲きました。

 月は、その美しい光景に思わず見惚れてしまいます。

 まるで、月のほうが彼女を見上げているようでした。

 この世には、満月の夜にしか咲かない花があります。

 年に一度、一夜限りの夢の花。

 今夜の彼女は、まさにそれに違いありませんでした。

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