仮面の一団

 イタリアのローマ。

 そこもかなり荒れ果てており、思う存分に観光を楽しめるような状況でもなかった。

 とはいえ、それでも完全に文明の痕跡がなかったわけではなく、荒れ果てていた中でも僕は十分に楽しむことが出来た。


「はて?」


 というわけで、イタリアの街を観光し、満喫していた僕は今。


「僕に何の用でしょうか?」


 仮面を被った一団に囲まれていた。


「一応、僕はイタリア政府からの公式な依頼を受け、魔物の討伐に動いているわけなんですけど……何故、こうも僕が武装した集団に囲まれているんですか?」


 その仮面を被った集団はその手に銃を持っており、それらをこちらに向けていた。

 正直に言って、核兵器も含め、現代科学の結晶とも言える現代兵器はもうBランク冒険者くらいから通じなくなり始め、Aランク冒険者になれば、それが当たり前となる。

 銃を向けられたくらいじゃ、僕は動じないけど……それでも、いい気分がするようなことじゃないよね。


「とはいえ、日本語は果たして通じているのでしょうか?通じているはずもないですよね」


 なんて意思表示を示したわけだけど……これが通じているわけもないよね。


「いえ、通じておりますよ」


「……ッ!?」


 えっ?通じるの?

 僕は自分の言葉に返答してくる仮面の一団の一人の声を聞いて、驚愕の声で返す。


「ダンジョンに関わりのある者で、日本語を知らぬものはいませんよ。彼の国は今や、それだけの力と影響力を持った国ですから」


「……はぇー」


「それで、問いましょう……貴方は一体何者ですか?」


「んっ?さっきも言った通り、イタリア政府。というより、欧州連合からの要請を受け、援護の為にやってきた日本の冒険者の一人ですよ。ですので、出来ればその銃を降ろして欲しいですね」


「そんなわけないでしょう。でしたら、ここで呑気に崩れ去ったコロッセオの観覧なんてしていないはずです」


「……うぐっ」


 それを、言われるとあまり強く言い返さないかもしれない。


「真面目な日本人が途中で仕事をサボり、観光なんてしているはずもありません」


「いや、流石にそれは偏見が過ぎるのでは……」


「今更誤魔化す必要もないでしょう……貴方は人理教の人ですね。こんなところに一人でのこのこやってくるなんて。こちらを挑発するにしてもやりすぎですよ?」


「え?流石に今、その組織の人間と同じ扱いされるのは不服だけど……というか、知っているの?人理教」


 人理教。

 割と聞き捨てならない言葉を聞いた僕は、一歩で自分へと声を投げかけてきた人物との距離を詰めながら疑問の声をあげるのだった。

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