決着
振り抜かれた時雨さんの刀。
それは確実に九尾の首を斬り裂いた。
時雨さんと、その彼女が引き起こす事象だけは僕の具現領域の対象外となる。
彼女の一刀を受けた九尾は確実にその首を断たれた。
「ひゅっ」
その瞬間、僕は具現領域を解除し、現実世界が戻ってくる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
それと共に僕は地面へと倒れ、呼吸を荒げる。
「げっほげっほっ」
具現領域。
僕のスキルであるこいつをある程度は操作できるようになっている。
停止空間……思考さえも本来は止まるはずの停止空間の中においても、僕は思考を維持し、領域の解除を行えるくらいにはなっていた。
「……ぐぅっ」
ただし、その代わりとして体の停止というのも不完全なものになってしまい、心肺の停止による影響を身体の一部分だけが受け、色々と体がバグを訴え始める。
それに、当然思考を働かせているのだから、脳は動いている。
脳もまた、不完全な停止状態で深刻なダメージを負わされていた。
「すぅー、はぁー」
僕は脳に酸素を行きわたらせるため、深呼吸しながらダメージより立ち直っていく。
「千夜っ」
そんな僕へと時雨さんの方が駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫……っ」
そして、心配そうに声をかけてくれる時雨さんへと僕は心配しないように声をかける。
「で、でも……」
「そんなことよりも、だ」
心配し続けている時雨さんの言葉を遮るように、僕はゆっくりと自分の手を持ち上げ、先ほどまで九尾のいたところを指で指し示す。
そこでは、既に九尾の遺体は光となって消え、代わりに一輪の虹色に光る花が咲き誇っていた。
「これで……時雨さんたちのお母さんは治るよ」
その花が、時雨さんのお母さんを治すのに役立つのだ。
「……っ。そう」
指し示す僕の指。
それに従って一輪の花を見た瞬間、時雨さんの瞳に感極まったような、そんな光が溢れて、いつの間にか流れていた雫がキラキラと虹色に輝いたように見える。
「ありがとう、千夜」
「どういたしまして」
そして、時雨さんは僕へと初めて見せる小さな笑顔と共にお礼の言葉を口にするのだった。
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