神社のダンジョン攻略
神社のダンジョン110階層。
「時雨さん。こっちが三体受け持ちます」
「私は残りの二体」
そこを僕と時雨さんが駆け抜ける。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアッ!」
自分の前で咆哮をあげ、突撃してくる人型で大柄な魔物。
額より長い角を持つ『鬼』たちは今、僕たちの方を睨みつけ、大きな咆哮を上げながらこちらに迫ってきていた。
そんな彼らの方に僕は付喪神の刀を向ける。
「ガァァァァァっ!?」
僕に向けられていた金棒を持つ鬼の手を一息で切断。
そのまま返す刃で鬼の首を狙う。
「ガヌッ!?」
だが、それにしっかりと鬼は抵抗し、残された片腕をギリギリのところで合わせ、自分の首が落とされまいと抵抗してくる。
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアッ!」
そして、そのタイミングを狙ってもう一体の、別の鬼が金棒を振り回しながら僕の方へと迫ってくる。
「ガァッ!?」
それに対し、僕は一切視線を送ることもなく、代わりに魔物を差し向ける。
僕の体から飛び出した狼の魔物が鬼へと飛びつき、完全にそれを予想だにしていなかった鬼の不意を衝く。
その狼に驚きながら、それでも、その狼を叩き潰そうと鬼が拳を握る。
「……ァ!?」
だが、それよりも早くに鬼の体が地面に向かって倒れる。
何が起きたか。
狼が上半身に飛び乗り、揺れることで崩した鬼の態勢。それをその他の魔物が足元から強襲することで、強引にその体を地面へと倒させたのだ。
「連携で言えばこちらの方が上なんだよ」
「ガァァァァァァアアアアアアアアアアッ!」
一体の鬼の首を狙っている刀は右手で持ったまま、左手に新しい付喪神の刀を取りだし、無様に地面へと転がった鬼首を貫いてしまう。
「ゥゥゥゥウウウウ」
「そう唸らなくともすぐにお前もそっちの方に送ってやるよ」
自分の前に立った三体のうち、一体が倒されたという現実を前に唸り声を上げ始めた辛うじて首を狙った刀を手で受け止めている鬼の腹へと僕は一気に大量の拳を叩きつけていく。
「ガッ!?」
僕が叩きこんだ大量の拳は確実に鬼の腹を痛めつけ、その体をよろつかさせた。
「さようなら」
僕の前でその体をよろつかせ、体にうまく力を籠められない状態になって、無事でいられるわけもない。
一切の遠慮なく刀を引き、受け止めていた手ごと首を斬り裂いた。
「これでよし」
目の前にいた鬼の群れは全部で五体。
僕が受け持ったのはそのうちの三体で、今、二体を殺し終わった。
「さて、と」
それで、残りの一体をどうしているのかと言えば。
「ァァァァァァアアアアアアアアアア」
「おまえ、まだ残っていたのな」
大量の暴兎に襲わさせていた。
圧倒的な数の暴力。
全身を楽に覆いつくし、どれだけ叩き潰しても一切数が減ったようには見えない大量の兎に、残りの一体の鬼は襲われていた。
「楽にしてやるか」
正直に言って、暴兎に食い殺されていると思っていた鬼の首を刀で斬り落とす。
思ったよりも、歯ごたえがあったな。
結構強めの個体だったかも。
「そっちは大丈夫でしたか?」
ちょっとだけ心配になった僕はすぐに時雨さんの方に視線を送る。
「大丈夫」
僕が視線を向けた時、ちょうど時雨さんが二体目の鬼の首を斬り落としていたところだった。
流石は時雨さん。流石に問題ないか。
「こちらも片付きました。五体の鬼の群れが相手でも、何の問題もないですね」
「そう。私たちは強い…得tンそれにしても、さっきから和な魔物が多い」
「まぁ、そうですね。そういうところです」
このダンジョンに出てくる魔物たちは実に色濃くここを作った日本の神様の影響を大いに受けている。
普通であれば、ダンジョンに出てくる魔物というのは世界中の伝承だったり、人々の記憶や意識の中にある異形ものたちの姿を形どっている。
そんな中で、しっかりと世界観が統一されているこの神社のダンジョンはかなり特異であり、配信受けも大いにするだろう……まぁ、世界観が統一され過ぎていて、作り物にしか見えないという理由で僕は敬遠されてしまっていたらしいが。
まさか、底辺時代の僕が視聴者にデマカセを見せていると勘違いされているとは思ってもみなかったね。
「ですが、それでダンジョンの難易度が下がるわけじゃありません。気を付けていきましょう」
「当然」
鬼の群れを無事に叩き返した僕と時雨さんはそのままどんどんと神社のダンジョンを進んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます