神託
神は何処まで言っても同じ人ではない。
「「「「……」」」」
その事実を前に、この場にいる四人は沈黙する。
「いや、それについてはまぁ、もういいけど……」
とはいえ、そんなものは甘夏であれば百も承知だ。
彼女は、千夜を通じて知っているのだ。過去の千夜を知っている甘夏は、その冷たさを。
「それで?何でこの話を今、私たちにしたの?」
甘夏はさっさと切り替え、真由美へと疑問の言葉を投げかけていた。
『いやぁー、前に話した時は色々と足りていなかったかな?って思って……結局のところ、ダンジョンについての話もしていなかったし』
「……確かにそうね。私の方も結構気になっていたのよね、あの話の続きは」
『でしょう?やっぱり、ここの話を知らないと、千夜きゅんとのあれこれにも支障が出ると思って、話しちゃった』
「ありがとう。感謝するわ」
真由美の話に甘夏が感謝の言葉を話していた中で。
『それと天音家の面々の母親の病気に関しても話したいことがあったのよ』
「「「……っ!?」」」
ずっと呆気に取られて固まっていただけの天音家の三人娘たちが急に振られた自分の母親に対する話題を聞き、大きな反応を見せる。
『神楽、ちゃんだっけ?その神託により超えてくる声はあくまで私のような一個体ではなく、この世界に漂うこちらの世界に影響力を与えることがもはや出来なくなり、ほんのわずかに残るだけとなった数多多くの残留思念から聞こえてくる声なのよ、あくまで。だから、そこまでの精度じゃないわ……色々と見ているみたいだけどね?』
「……ッ!?」
『だから、何も千夜きゅんは何をしても怒られないことが見えているから、何をしてもいい、とはなっちゃ駄目よ?……まぁ、事実として、千夜きゅんは何をされても怒らないと思うけど。ただ、そんな雑な心構えは千夜きゅんに失礼よ。彼も生きているのだから』
「……っ、ごめんなさい」
『別に良いのよ。それで、貴女たちの母親のことだけど……想像以上に重たい病気で、新宿ダンジョンの方じゃ無理よ。貴方たちが目的としている潜るなら、千夜きゅんの神社のダンジョンにしておきなさい』
「……っ!?それは、どういうことなの!?」
『言葉通りよ。潜るなら、神社のダンジョンね。千夜きゅんに聞けば、病気を治すための方法を教えてくれるはずよ。先に貴女たちの母親の容態を千夜キュンに見せてね』
「……千夜って本当に何処まで知り、何処まで考えて」
「わかった。なら、千夜を頼る。助言、感謝する」
『えぇ、これくらいはお安い御用よ。それじゃあ、そろそろ千夜きゅんが帰ってくる頃だから私はここらへんでお暇するわ。甘夏の体にまた、戻るわ』
「……入ってこなくていいんだけど」
真由美の言葉に甘夏は眉を顰める。
自分の中に、神とは言え別の存在がいるという事実はそう簡単に呑み込めるような話じゃなかった。
『あぁ、そうそう甘夏にもう一つ、言っておきたいことがあったのよ』
「……何?」
その上で、だ。
『我慢はしなくていいのよ?人の欲を我慢するのは良くないわ』
「死ねっ!」
真由美のドストレートなセクハラ発言。
それに甘夏が頬を真っ赤にしながら、暴言を吐き捨てる。
だが、その声が真由美へと届くことはなかった。
「……クソっ!?」
真由美の体は光へと変わり、そのまま甘夏の体の方へと戻っていってしまった。
「っとと、戻ったよ」
そして、真由美が消えたタイミングになって、の方が戻ってくる。
「あれ?何で、ここに……須比智邇神様の気配が?」
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