急展開
千夜の雰囲気が一変する。
常に何処か抜けている雰囲気を纏った、そんな千夜が、重苦しく息の詰まるような威圧感を周りへと静かに流し始める。
「……」
そして、千夜の瞳は赤く、禍々しく、爛々と輝いていた。
「……」
その千夜を前に、平将門の怨霊は一歩、足を引いて、構えを解く。
そんな、平将門の怨霊の姿を何と見ればいいだろうか。
ただ、少なくとも、その怨霊が醸し出す殺意は消え失せているように見えていた。
「……っごく」
「……ぁ、あぁぁ」
ただし、だからと言ってこの場の重圧が消えたわけではないが。
否、むしろ、増えていると言っても良かった。
目を赤く輝かせる千夜の持つ威圧感は何処か異質で、心の底から震えあがってしまうような『何か』を強く感じさせた。
未だ千夜は動いてもいない。
なのに、今、この場にいる時雨と甘夏は息を詰まらせていた。
そんな中で。
『決断早すぎっ!!!』
この場に、一つの声が響く。
「はっ!?」
そして、その次の瞬間。
甘夏の体より神々しい光が溢れだし、それが一つの巨大な人型を象り始める。
「ちょ、ちょ、ちょっ!?な、何が起きているの!?」
自分の体から謎の光が溢れ出ている。
その事実を前に、甘夏は大きく動揺して困惑の言葉を上げる。
『眠りなさいな。まだ、この子を殺されるわけにはいかないのよ』
そんなことをしている間に、甘夏の体からあふれ出していた光は完全に女性としての姿を確固たるものにし、千夜へと光り輝く巨大な手を伸ばし、彼を気絶させていた。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
千夜が地面に倒れて寝息を立てる。
「……あの、怨霊は?」
「えっ?えっ?えっ?」
そんな様子を眺めながら、時雨と甘夏はただひたすらに困惑の感情を吐露し続ける。
あまりにも、急展開が過ぎた。
千夜が一人、暴走したかと思えば、次の瞬間には謎の光り輝く女性が甘夏の体からあふれ出す。
その女性が千夜を眠らし、何時の間にか平将門の怨霊の姿は忽然と消えていた。
『ふふっ……』
そして、そんな二人とは対照的に確固たる存在としてその場で意識を持ち、居座っているのが甘夏の体より溢れ出ていった光り輝く謎の巨大な女性だけであった。
そんな状況を、いきなりの状況の変遷を、笑顔で受け止められる人なんてまず、いない。
『少し、良いかしら?貴方たちを、千夜きゅんの友達だと見込んでぇー、少し、お話があるのよ』
情報を処理しきれず、呆然としてしまっている時雨と甘夏の前で、目の前にいる淡く光り輝く巨大な女性は楽しそうに笑いながら、そんなことを話すのだった。
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