魔物を産みだす魔物
本事案の解決の為、事態は滞りなく進んでいっていた。
日和迷宮組の圧倒的なまでの準備量もあり、市民は何の問題もなく避難することが出来ていた。
そして、魔物の量も確実に減っていっていた。
しかし、だからと言って今の状況が楽になったというわけでは決してなかった。
『魔物の異常発生を確認したわ』
「……魔物の異常発生?」
『えぇ、どうやら、一体の魔物が大量に卵を産み、多種多様な魔物を生み出しているようなの』
「っ!?そんなことがっ!?」
繁殖する魔物とか聞いたことがないんだけどっ!?そんな奴までいるのか。
『今、お姉ちゃんたちが対処に当たっているけど、戦力が足りないと報告を受けているわ。牧野さんを初めとするSランク冒険者の方々も外せない事案の対処に当たっているわ』
「はい、もちろん僕が行きますよ」
僕は聞こえてくる天音さんの言葉に頷き、その彼女の指示通りに進んで魔物を産む魔物の元にまで向かっていく。
「……数が」
「これはっ、流石にヤバいわねっ!?」
その件の場所についた僕が見た光景は大量の魔物に囲まれ、悪戦苦闘している時雨さんと甘夏の姿だった。
「本当に多いなっ!」
彼女たち二人を囲っている大量の魔物たち。
その数をざっと数え、その位置も把握していった僕は自分が立っていたビルから跳躍。
下の方で戦っていた時雨さんと甘夏の二人が魔物と戦っていた場所へと一直線に向かい、そして、迷うことなく全体重を乗せて地面に己の足を叩きつける。
「……ッ!?」
「ちょっ!?」
僕の地面への蹴り。
それは衝撃となって地面に伝わり、地震のように大きく地面が揺れる。
地面が揺れ、時雨さんも甘夏も、魔物たちも態勢を崩し始める中で、僕は一人迷うことなく動き出し、自分の周りにいた大量の魔物たちを次々とと斬り伏せていく。
「ラスっ」
時間にしてたった十秒程度。
それだけの時間で僕は動きを鈍らせた魔物たちを斬り捨てた。
『……相変わらず、身体能力お化けね』
「僕の自慢の一つなんですよ」
僕は通話越しの天音さんの言葉へと返答しながら、視線を時雨さんと甘夏の二人の方に送る。
「大丈夫でした?」
「問題ない」
「個々の強さはそこまででもなかったから……数は、信じられないくらい多かったけどね」
「それならよかったです」
質が低いからと言って、数の強さを見くびってはいけない。
時雨さんも、数の力に押されて刀を振るためのスペースを確保できなくなれば、思うように動けなくなってしまうだろうからね。
二人が無事でいてくれてよかった。
「……ほいで、あいつですか?魔物を生む魔物、ってやつは」
二人が無事であることを一度、確認した僕はその視線を二人の方から動かす。
そんな僕の視線の先。
「ぎゃぎゃ……ぐががが、ぎぃぃぃ」
そこにいるのは一体の醜悪な魔物であった。
パッと見では理解できないような、形容しがたいその魔物は、全身に多くの管を持ち、そこから大量の卵を産み続けている。
その卵は一瞬で孵化し、そこから生まれてくるのは多種多様な魔物たちである。
僕が大量に魔物を倒したというのに、もうその数は元通りと言えるくらいにまで増やしていた。
「どうやら、あいつ本体を倒さないといけないみたいですね」
あの魔物を倒さなければ、魔物はどんどんと増えていくばかりになってしまうだろう。
「そうね。じゃないと、魔物が増えていくばかりよ……私たちへと襲い掛かってくるのではなく、周りに散っていたような魔物もいるから……」
「そうですか……それでは、やりますか」
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ……ぃぃぃぃぃいいいいいい?」
「……」
ずいぶんと、これまたずいぶんと強力な、新宿ダンジョンの方で戦ったどんな魔物よりも強力な気配を見せる魔物を産みだす魔物を前に、僕は最大限の警戒心を持って向き合うのだった。
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新作です!
自分の中の、記念すべき百作品目っ!
良ければ、ぜひ読んでくださいっ!!!
『貞操観念が逆転した男女比1:1000のエ〇ゲの悪役貴族に転生した僕はゲーム本編に関わらないつもりが、ヤンデレと化したラスボスを拾っちゃったんだけど、どうすればいいと思う?』
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