一緒に

 天音家が何なのか。

 それについて知らされた次の日、僕はとりあえず、今の神社がどうなっているのかを知るために地元の方に帰ってきていた。


「……おわぁ」


 そして、今の神社の様子に僕は面食らっていた。

 いつも己一人しかいない神社には今、既に老齢へと差し掛かっている人たちの姿が多く、見受けられていた。こんなに大勢の人が僕の神社にいたことなんて、もう、どれくらい前だろうか……?

 もう、わからなくなってしまうほどには前の話だ。

 

「おや、神々廻様ではないですが」


 神社を見て、その人の多さを見て、唖然としていた僕の方へとこの場にいた人たちが視線を向け、そのまま声をかけてくれる。


「やはり、確認なされに来たのですね。ですが、今は私どもにお任せください。しっかりと、この神社を維持してみせますよ……この、神社についての文献もこちらの方に伝わっておりますので」


「貴方方でしたら、安心して、頼めそうです」


 神社の神主たちにも横の繋がりがある。

 僕、というか、うちはそこら辺の繋がりに関してはうっすうすであるが、それでも、目の前にいる人たちが結構なお人であることは知っている。

 天音家……やっぱりヤバすぎる。

 神社本庁の総裁はちゃんと張り切ってくれたのかな?

 まぁ、とりあえずは、神社の方が問題なさそうでよかったかな。


「それで、神々廻様」


「はい。何でしょう?」


「ぜひ、にと神々廻様が神社へとお戻りになられるのを待っておられる方がおりました」


「えっ……?誰?」

 

 一人の神主さんから告げられたその言葉に対し、僕は首をかしげる。


「私だよっ!」


 その瞬間。

 僕は背後から抱き着かれ、耳元にキーンっと響くような大きな声が飛び込んでくる。


「甘夏……っ!?」


 背後から抱き着いてきた人物、それは甘夏だった。


「ねぇ、千夜ぁ?」


 くるりと移動して、僕の前に立った甘夏は、こちらをジッと見つめながら口を開く。


「何処か、行くなら私に言ってくれてもいいじゃない?私は千夜の両親からも君の面倒を見るように言われているんだから」


「……別に、僕は小学生、ってわけじゃないんだけど?」


「それでも、だよ?千夜は常識に疎いところがあるんだから、小学生以下の常識しか持ち合わせていないでしょ?」


「……」


 それは、ちょっと……その、あまり、否定できないのかもしれない。


「今、天音さんと一緒に東京行ったんだよね?」


「そう、だねぇー、今は天音さんの家へとお世話になりながら、東京の新宿ダンジョンの方を潜っているかな」


「……ッ」


「天音さんの家って、信じられないくらい広いんだよ。日和迷宮組の社長らしくて」


「へ、へぇー、そうなのね。じゃあ、私も東京に行くわ。ちゃんと私が面倒を見てあげる」


「えー、それ、天音さんたちが許してくれるのかな?」


「なら、その時は二人で何処か適当なところの賃貸を借りましょう?それでいいでしょう?」


「まぁ……それなら、少し前を思い出すね」


 神社のトイレが壊れた時、一人暮らししていた甘夏の家にしばらくの間、居候していた時期もある。

 その時と同じ、というのなら、そっちの方が落ち着くかも。

 天音さんの家、広すぎてビビるんだよね。


「最近になって、僕の配信による金銭も入ってきたからね。ちゃんと僕もお金を出せるよ」


「あら、そう。でも、無理はしなくていいわよ。さて、それじゃあ、東京の方に戻りましょうか。青龍を出して」


「わかったよ」


 僕は青龍をこの場に召喚し、視線を神主さんたちへと向ける。


「それじゃあ、自分はこれで失礼いたします。神社のこと、よろしくお願いします」

 

 そして、この場で一礼。


「えぇ、いってらっしゃい。こちらのことは心配しなくて大丈夫だからね。若人二人、東京を楽しんでね。これもまた、大きな経験だろう」


「ありがとうございます。それでは」


 神主さんたちとの挨拶を終えた後。


「それじゃあ、行くよ。甘夏」


「うんっ!」


 僕は甘夏と共に、東京の方へと戻っていくのだった。


 ■■■■■


 千夜が、甘夏に連れられるような形でこの神社を去った後。


「……むぅ、やはり、異常だ。彼は」


「そうでありますな」


「……」


 神社の境内に残されてた全国津々浦々の神社から集められた神主たちが各々、言葉を交わしていく。


「あまりにも、近すぎだろう。天との距離が」


「……ここ、神域と言ってもいいでしょうな」


「これだけ近ければ、あの子が調伏を初めとする既に我らが喪失した恩寵を使用できるのも納得ですな」


「だが、やはり……私として一番気になるのは彼本人の───」

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