ラッキースケベ

 この家は本当に規格外だ。

 この家の中、その全体はうちの社殿よりも広い。

 昔からある割と大きな神社であるうちよりも、だ。本当に大きな家……これが東京にあるという事実が末恐ろしい。一体、どうやってこんなお金を稼げるんだ……。


「一つ目の冷蔵庫に料理の為の食材。そして、二つ目の冷蔵庫に各々、好きな飲み物を入れているの。千夜も好きなのを買ってきて頂戴。今日のところは、まだ開けられていないのを好きに飲んでちょうだい……貴方が、飲んでいるということがわかるように、出来るだけ一本ずつ飲んでほしいわ。炭酸の奴でなければ、好きに飲んでもらってもいいと思うけど」


「……二つ目」


 キッチンに大きな冷蔵庫が二個……。

 飲み物のことより全然そっちの方が気になってしまう。とても正気とは思えない。


「基本的にはこんな感じかしら」

 

 天音さんの手で案内されたこの大豪邸の内部。

 事あるごとに高そうな設備の数々に僕が驚いていた中での最後、共にダイニングテーブルを挟んで椅子に座った状態でリビングの紹介をされていた。

 それにしても、リビングからキッチンまで見ることが出来るとは……いや、これは普通か?ただのダイニングキッチンか。


「……なんか、喉乾いたから、早速飲み物もらうね?」


ここまででちょっと、疲れた。もう本当に驚き疲れてしまって……喉だってもうカラカラだ、


「えぇ、もちろん。良いわよ」


 家の案内で、一番最後に紹介された二つ目の冷蔵庫の方に僕は向かい、その中を開ける。


「……おぉ」


 その冷蔵庫の中には、パンパンに数多くの飲み物が入っていた。

 本当に、これだけの飲み物を飲み切れるのだろうか?それに、炭酸ジュースとお酒で九割埋まっているの、なんか……凄い不健全。

 全然健康的じゃない。


「……これかな」


 僕は炭酸飲めないし、お酒は言わずもがな二十歳になっていない。

 とりあえず、中にあったレモンティーを手に取る。レモンティー、美味しいよね。僕は結構好き。ミルクティーとかより、レモンティー。やっぱりレモンティーこそが至高。


「おいしっ」


 僕はそれを飲み切るかのような勢いでレモンティーを口に含んでいた中で。


「……ふぅ、さっぱりした」


 リビングへと入る扉が開かれ、一人の少女が、時雨さんが入ってくる。

 

「へっ……?」

 

「えっ……?」


 そんな時雨さんの姿は、お風呂上がりなのだろう。

 ほっかほっかで火照った、その身体をただバスタオルで軽く前を隠しただけだった。もうほとんど見えている。胸もほとんど出ているし、その他もそう。本当に大事な三点だけが隠れているような状況だ……あっ、毛……。


「きゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ」


 僕と目のあった時雨さんはそのまま大きな悲鳴上げて蹲る。


「ご、ご、ごめんなさい!?」


 それを受け、僕は大慌てで視線を逸らす。


「……」


 その先にいるのは、天音さんだ。


「……ずいぶんと、嬉しそうな表情を浮かべているわね?」


「ひ、ひぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!?」


 椅子に座っている天音さんは、その手を目の前にあるダイニングテーブルに乗せながら静かで、冷たい視線をこちらへと送りながら、小さな笑みと共に短い言葉を口にする。


「ふふふ」


「……わ、わしゅれて」


「いや、あの……そんなことはぁ」


 そして、僕はその後、ただただ口元で言葉を濁し続けることしかできなかった。

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