クラス
ダンジョンスタンピードは制圧すればはい、終わり!というわけじゃない。
遺体の回収。倒し忘れている魔物がいないかの確認。ボスの素材回収。冒険者ギルドへの報告等々。
やることは盛り沢山であり、モンスタースタンピードを倒し、甘夏たちを地上へと帰した後も僕は帰ることが出来なかった。
すべてのやることを終えた頃にはもう時刻は早朝。
ここから神社に帰ってひと眠り……なんていう状態にはならなかった。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
というわけで、早朝の段階から高校に登校。
僕はクラスにある自分の席で顔を突っ伏して眠ることとしていた。
「千夜っ、千夜っ、千夜っ!」
「……はぬん?」
それで、僕はどれくらい眠っていたのだろうか?
気持ちよく寝ていた僕は自分の体を揺らされる感覚と、自分の耳元で呼ばれる自分の名前を受けて、徐々に意識を覚醒させていく。
「……あぁぁぁぁ」
「あっ!起きたのね」
僕の耳元で自分の名前を呼んでいた声……それは、甘夏のものだった。
「うぅん……ふわぁぁぁ」
未だ寝ぼけている頭を徐々に覚醒させていきながら、僕は体を起こしていく。
「……何?」
そんな僕は未だ完全に起きてはいない視線を甘夏の方へと視線を送りながら、疑問の声を向ける。
「貴方、相変わらず寝起きは悪いのね」
「んっ……昨日は、寝てもないの」
「……っ!?も、モンスタースタンピード関連で?」
「そう……んんーっ」
僕は甘夏の言葉に頷いた後、大きく背筋を伸ばしていく。
「……もう、朝ぁ?」
「そう、ね。もう朝よ。そろそろ朝のHRも始まるわ」
「もう、そんなに時間経ったんだ……時間が過ぎるのって早いわぁ……」
僕は自分の胸元から札を取り出し、それを燃やす。
「「「……ッ!?」」」
そうすることによって召喚させた魔物の一種、小さな妖精。
『きゃきゃ』
「いつものお願い」
僕はその妖精にお願いを一つ。
それに伴って、妖精たちは水球を生み出してくれ、僕の顔を洗ってくれる。
「あわあわあわ」
そして、そのまま妖精はうまく魔法を使い、歯磨きなども行ってくれ、最後には乾燥。
綺麗さっぱりとした姿へと変えてくれる。
「ふぅー、サッパリした。ありがと」
いつものように妖精を使って、朝の洗顔を終えてある程度頭がシャキッとしてきた僕は……。
「あぁー」
ここに来て、ようやく自分のいたクラスにはもう既に多くのクラスメートたちがいたことに気づく。
いきなり、魔物の一種である妖精を出しちゃったのは不味かったのでは……?
「い、今のは……?」
「あー、気にしないで」
かなり、不味かったかもしれない。
そう思った僕は自分の前にいる甘夏から視線を逸らしながら気にしないように声を上げる。
「ねぇねぇっ!今のは一体何なの?」
「本当にあの仮面の男の子って千夜くんなの?」
「滅茶苦茶強かったなっ!おま、マジで!」
そんな僕の視界へと飛び込んできたのは一気に自分との距離を詰めてくるクラスメートたちだった。
「……ッ!?」
な、何でこんな急に!?
僕は迫ってくるクラスメートたちを前に息を飲み、動揺を露わにする。
「ふふん!私の幼馴染は凄いでしょ!」
そんな僕の隣で勝手に、甘夏の方が胸を張り始める。
「あぁ……本当にすごかったな。たった一人でモンスタースタンピードを殴殺している様は圧倒的だよ」
「千夜くんって、あんなに強かったんだねー」
「召喚した魔物だけじゃなくて、千夜くんの方も甘夏のことを守ったり、大量の魔物を一蹴したり。めちゃくちゃすごかったよっ!かっこよかったね」
「あれはスキルなのか?どんなスキルなの……って、スキルについて聞くのはタブーだったか?」
自分の周りに大量の陽キャたちが集まり、口々に自分のことを褒めていってくれる……ほ、褒められることは嬉しいけど、あまり褒められ慣れていないから、すごく気恥しいんだけどぉ。
「お前らっ!何を言っていやがるっ!」
なんてことを思っていた中、黄野くんが急に声を上げ始める。
「あんなのインチキに決まっているだろう!」
そして、始めるのは僕への糾弾だった。
「モンスタースタンピードの原因をそこの陰キャが知っているだぁ?んなこと、あるわけないだろ!それに、魔物を召喚するスキルって何だよ……アァ?なんだァ、あぁ?お前、自分が有名になりた過ぎてモンスタースタンピードでも自分で起こしたか?ァア!?」
「お、おぉぉ」
黄野くんのドスの利いた声を前に、僕は動揺の声を漏らす。
「何言っているのよっ!モンスタースタンピードを個人で引き起こせる並みの強さがあればいくらでも有名になれるわよっ!」
そんな中で、僕の代わりに毅然と言い返し始めたのは甘夏だった……ん?モンスタースタンピードを引き起こせたら有名になれるの?えっ?本当に?
本当ならやるよ?モンスタースタンピード、起こしてみた!ってサムネで配信始めちゃうよ……?
「それに、あれだけ偉そうなことを言っておいて、普通に負けそうになるなんてダサいにもほどがあるでしょ!Bランク冒険者ってのはお飾りだったのかしら?」
「んだと、このアマッ!!!」
甘夏と黄野くんのにらみ合いはどんどんとヒートアップしていく。
「……お前らは常に喧嘩していないとどうにもならんのか」
そんな状況下で教室の中に入ってきた担任の先生は半ば呆れながら、声をあげるのだった。
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