第2話

さてと、おれは今日も今日とて母の宿屋の手伝いをしている。ちなみに朝5時起きである。頭おかしい。


俺の家はこの町で唯一の宿屋であるため中々繁盛している。母がいうに、なんと20年前に勇者が一度泊まりに来たらしい。


勇者というのは世界各地でふんぞりかえっている魔王の誰かを討伐すると貰える称号らしい。魔王というのはめちゃくちゃ強いらしく、森一帯を燃やし尽くしたり、光の速さで動いたりできるらしい。すげぇ。


というか、なんでこんなしょぼい村に来るのだろうかと、母に聞いてみるとしょぼくないから来たんだ、と言われて叩かれた。なんで?


ちなみに父は傭兵である。金を貰ってドラゴン討伐や、クーデターを抑えたりしているらしい。だが、父の腕前は相当らしく、常に色んな所から引っ張りだこなので中々家に帰ってこないこともある。俺も一度、村に山賊が村を荒らしにきた時に、父の戦いを見たことがあるが、めちゃくちゃ強かった。30人を超える山賊をたった30秒で全員スマキにしていた。その時の動きは早すぎて見えなかった。父がいうにこれはスキルの力と俺のセンスかなと言っていた。


まぁ、そんな話は置いといて俺は宿屋の手伝いをしている。さっき朝の掃除が終わったので、朝食をを作る。今日のメニューは、ハクサイと、ビックボアのバラ肉のミルフィーユである。これは、プォン酢をかけるとめちゃくちゃうまい。それとパンである。これはただのパン。


鍋の中で二枚のハクサイに豚肉を挟んで交互に並べる。そして煮込むっ!そして!水!酒!鶏ガラを投入!そして中火で15分間煮込む。


む!いい匂いがしてきた。完成!


「おう!うまそうじゃねぇか。ちょっともらうぜ!」


後ろから65点ぐらいの男がやってきた。まぁ、仕方ない味見をさせてやろう。俺は皿とプォン酢とフォークを出し、65点ぐらいの男に渡す。


「うぉぉ!これうめぇ!プォン酢に世界一あう料理だぜ!ハクサイがうめぇ!ウルトラスーパーハイパーグレイトうめぇ!!」


「おうそうか、そうか。」


語彙力がバカすぎる。まあうまそうに食ってるしいいか。てか、


「またお前ガァァ!!!サイィィ!!」


「おう。うまそうな匂いがしたから来ちまった。」


サイは俺の家の隣で道具屋を営んでいて、たびたび俺の店の朝食を盗みにくる。今朝の6時だぞイカれてんのかよ。


「うるせぇ!金払え!」


俺はサイを玄関から押し出し、鍵を閉めた。そして、今泊まっている客の人数分の食器を用意し、井戸から水をくんでくる。


しばらくすると。ゾロゾロと客が降りてきて朝食を食べていく。


「うぉ!うめぇ!」


「そうだよな!ここの宿屋は飯がうめぇし。ベッドはめちゃくちゃ寝やすいしいい宿屋だよなぁ!」


「ガハハ!だろ!!」


屈強な男達が、うちの宿屋を褒めてくれている。この瞬間が一番嬉しい。


「すごぉい!この宿屋めちゃくちゃいいわねぇ!」


「ふふ。そうだろロゼリア最高だろ。」


「さすがケン!!こんないい宿屋を知ってるなんて!すごい!!」


「ふふ!だろ!?」


今度はカップルの冒険者も、うちの事を褒めてくれている。ん!?まてよ!?まさか!俺はダッシュでこの二人が泊まっていた部屋にいくすると案の定甘ったるい香水と、変な匂いが混ざったやべぇ匂いがした。うわっ、この部屋絶対やってるじゃん!臭!ベッドになんか付いてるし!汚!調子のんなハゲ!


俺はカップルの冒険者などの客が来ると不安である。たまに宿屋の使い方を間違っている輩が来るからだ。くんなハゲ。俺は部屋の掃除と消臭をしまくる。

15分後・・・


フィィィ。疲れた。なんでこんなに疲れるんだよ。ヤベェ匂いで体力を持ってかれた。外に出て新鮮な空気を吸おう。俺はだるくなった体を引きずりながら一階に降りて、玄関を開ける。


すぅぅぅぅハァァァォァ。


うん。最高。俺は中に戻ろうとすると、ウチの玄関の傍に死にかけの爺さんがいる。頭はハゲ散らかり、服はボロボロ。目はぱっちりとしていない。ヤバそう。


「大丈夫ですか?」


俺はすぐさま駆け寄って話しかける。


「・・・・ハラ・・・・ヘッ・・・タ。」


「おい!大丈夫か!爺さん俺のミルフィーユを食べろ!」


いつのまにかサイが食いかけのミルフィーユを爺さんに持ってきた。てかこいつまた盗んだのかよ。後で殺す。


「あり・・・がとう。」


爺さんは涙を流しながらがっつくようにミルフィーユを食べた。


「うまい。うまい。うまい。」


「料金は取らないから一杯食ってくれて大丈夫です。」


「ありがとう。ありがとう。」


しばらくしてから爺さんは食べ終わり、俺とサイの頭に手を乗せた。


「こんなに優しくしてくれたのは。初めてじゃ。お礼をやらねばな。」


「いや、お礼なんで大丈夫です。」


こんな何もない爺さんから物を奪う趣味は俺にはない。


「いやいや。ありがとう。」


爺さんの手が光る。


パッパラッパーパー!!


スキル[センス◎]を手に入れました。


は?なんだこれ俺が呆気に取られている間に爺さんはどこかに消えていった。


_________________________________________

ベンと!サイの!スキル紹介!


べ「今日紹介するスキルはこれ!![逆境]!


サ「このスキルは追い込まれれば追い込まれるほど身体能力あがるスキルだ!」


べ「死にかけで踏み止まる[根性]と合わせたらかなり強いかもな。」

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