君が振り向くn秒前

あるかろいど有機

或る少女の独白

オトメ


それすなわち夢見る生き物である。


口を開けばやれ彼氏だ好きピだと、恋の恋による恋のために生きる種でもある。


マァ、その分かわいく生きる努力を惜しまない所にかれるのだけれどね。


その苦くて甘いアオハルをこじらせ三年間。


JKブランドもあと一週間。


嗚呼ああ神様。


どうか私高見彩芽たかみあやめに、彼に近づく勇気を下さい…


彼、と言うのは氷室孝之ひむろたかゆきのことだ。


イギリス人のクォーターらしく、サラサラの金髪に、有り得ないほどに透き通ったスカイブルーの瞳、健康的に焼けた肌


それはそれは容姿が整っている所謂いわゆる勝ち組の彼。


私に数多あまたのライバル達がいることをわかっていただきたい。


でもね、だからと言って諦められるワケないの。


たとえ私が彼と結ばれる確率が、芥子粒けしつぶくらいにほんのちょっぴりでも。


大学受験を終え、聞くこともないので薄くなった担任の頭をじっと見つめて考える。


「なんや彩芽ちゃん、ボーッとして。らしく無いなァ。」


ア、もしかしてまた孝之のことで悩んどるん?


なんて私の悩みをぴたりと当ててはカラカラ笑う前の席の彼。


名前は中嶋理玖なかじまりく


通称理玖とか理玖センセとか。


因みに、此奴に引くほど頭がいい点以外に尊敬すべき所なんてものは無い。


女誑おんなたらしな上に浮気性の屑野郎くずやろうだし。


唯、なんでも氷室君と幼稚園からの仲だとか。


くそう、羨ましい。


そんなことを本人に言うのはいささか気が引けるから、話をらすに限る。


「前向きなよ理玖、授業中」


「つめたい!」


クネクネと身を捩らせて前を向く理玖。


怒られてやんの、ざまぁないね。

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