趣味と確認

天川裕司

趣味と確認

タイトル:趣味と確認


「ハァハァ…や、やってしまった…」

俺は浮気相手を殺してしまった。

「ど、どうするか…」

俺には今、結婚を前提に付き合ってる女が居る。

優子にはどうしても隠したい。


だから俺は隠蔽工作に走り、

証拠を出来る限り全て消して、

警察へ行くこともなく、

そのままやれるだけ時を過ごしてみようと思った。

もちろんその時は

捕まらないのがベストだと思って居たが、

やはりどうしても罪の意識は人間ゆえに残る。


そして俺はある日から、

殺した浮気相手・佳奈子の亡霊を見るようになったのだ。


(ベランダから外を見て)


ある夜、ベランダからすぐ前にある駐車場を見た時、

「あ…あれは…」

おそらく佳奈子のものだと思われる亡霊、

白い服を着た女が、うつむき加減に

じっとこっちを向いて立って居た。


「く…くそぉ!!」

あまりの恐怖に腰を抜かしかけたが、

俺は何とか踏ん張り、部屋を飛び出して

その駐車場まで走ってやった。


「ハァハァ……居ない…」

やはりさっきまでここに居た

あの女の姿はどこにも無い。

そんなことが数日間、続いて起きたのだ。


(後日)


優子「やっほ♪」

「優子…」

ある日、優子が俺の家に遊びに来た。

「今日も明るい髪の色してんな♪」

優子「ん?髪?」

「ああ。その色見てるとなんか落ち着くよ」

優子「えぇw?なにそれw」


その日は優子とまったり過ごした。


(後日)

そして優子とビデオ電話して居た時。


優子「でさー、電車乗り遅れちゃってねw…ん、どうしたの?」

「いや、ちょっと…」

さっきからコツンコツンとベランダの戸に

小石のようなモノがぶつかる音が聞こえる。


俺はフッと又あの女の霊のことを思い出し、

気が気じゃなくなり、その事ばかりを考え始めた。

で、

「ちょっと待っててくれ」

と優子をビデオ電話向こうに残したまま、

俺はベランダに走った。すると…

「あ、あいつ…」

やっぱりあの女の霊が又そこに立って居た。


うつむき加減で駐車場に棒立ちで、

ただ体はじっとこちらに向いて立って居る。


優子「ねーどうしたのよー?」

パソコンから聞こえる優子の声すら煩わしくなり、

「ごめんちょっと用事思い出したから」

と俺はビデオ電話を切ってまた駐車場へ。

でもやっぱり誰も居なかった。


長い黒髪で、まるで貞子の様に前髪で顔を隠し、

手をブランとしたまま霊の姿で立って居た。

この姿をもう何夜、見てきただろうか。


「あ…ああああ…!!くそぉ!!」

俺はもうノイローゼ気味になってしまった。


そして3日後。

また優子とビデオ電話して居た。

でもそのとき優子は奇妙な行動を取り出した。


優子「あ、今日これなんだけどさぁ」

「ん、なにそれ?紙袋?」

優子「うん。あ、福袋じゃないからねw♪」

「わかってるよw書いてないしw」


優子「これ見てくれるー?」

と言ってその袋から取り出したのはウィッグ。

「え?なにそれ?カツラ??」


優子「そうそう♪これをさぁ、こうしてこうすると…なんか見覚えない??」

「………え?」


優子「で今日はねぇ、ゲスト感覚で友達も呼んでんの♪ミクちゃんで〜す」

ミク「あはは♪はじめまして〜ミクです♪」

「………?」


優子「んでぇ、ミクちゃんにもこうやってかぶせると〜…ホラ♪やっぱり見覚えない??」

「…………お前、それ…」


そのウィッグは長い黒髪のカツラ。

前髪で顔が隠れるほどになり、

俺があの駐車場で見た女の髪の長さ、

そのままだった。


優子「んでさぁ、これ、コスプレ屋で買ってきたんだよね♪ほら、白いワンピース!これも見覚えあるでしょ??」

「………………」

優子「これをミクちゃんと交代で着た事もあってさぁ〜♪」

そして優子はそのカツラをもう1度手に取り、

自分の頭に乗せてスルッと落として、

優子「……フフ、わかった?」

「……………」

優子「……アンタ、バレてないとでも思ってたの?勝手に浮気しといて、その人殺すまでしちゃって。当然、受けるべき罰だと思わない?」


「…………ふざけるなよ、お前…」

優子「ふざけてたのアンタでしょ?これ携帯」


そして優子が少しビデオから逸れて

電話で何か話した直後、

優子「…フフ、もうアンタ、包囲されてるわよ」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=xxKK2IdNYqo

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