第1話

 エアコンのリモコンの電池が切れた。太陽は落ちず、決して終わらぬ夏は続いていた。我々はプレハブ小屋を数十組み合わせた仮設施設にいる。

 最初は一時的な措置だったのだが、本格的な施設の建造を前にしてその建設計画が座礁し、今も仮設施設に我々は居る。そんなことはどうでもいいか。


「助手くん、リモコンの電池が切れてしまった」


 博士がそう言った。

 博士はモヤシのような白い肌に長い金髪を適当に後ろで纏め、カチューシャヘアバンドでうんざりするほど長い前髪を抑え、眼鏡の女だ。俺の上司である。

 

「マジっすか」


 この軽薄そうな発言者が俺だ。俺は『助手くん』としてうんざりするくらい長い年月をこの仮設施設で働いている。『俺』がまだ生きていることを知る者は居ない。


「不味いよ助手くん、我々が蒸し焼きになることはどうでもいいが、アレが熱々になってしまう」


 アレとは我々の研究対象である。アレが熱々になったことでどれだけの犠牲が出たかを思い出すと、おかしくて笑えてくるのだが、客観的に見て多くの人命の損失は悲劇であり、表面だけでも取り繕わないといけない。お前もそう思うだろ?


 我々は落ちぬ太陽に照らされた屋外に出て、コンビニに向かった。

 続く。


  

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