船の追憶

@komakuri

第1話 追憶

突然だが皆様方、"船"は好きだろうか。

私はそうは思わない。

だが、船はいいものだ。

中に篭もり船の揺れを感じるもよし、上に出て海風を浴びるもよし。

船というのはなにか引かれるものがある。

さて、前置きはここまでにして、私の昔の話を紹介しましょう。




(1人で船旅も、もう50回目か。)

そう思いながら私は港に立っていた。

私は大の船好きだ。

興味を持ち始めたのは5歳になって間も無い頃だろうか。海に関する本を読んだ時、「海の上を旅できるのか?」という疑問を持ったのが始まりである。父は船乗りをしていた。彼は気が短く、へまをすると物に当たったり、私を怒鳴ることもあった。そんな父が苦手で、仕事の見送りも偶にしかせず、してもすぐ帰れるほどの距離までしか行かなかった。父は、なんの気の迷いか、私を半ば強引に街に連れて行ったことがあった。

そこで手を引かれ入った船用品店の、船の模型に目を惹かれた。それが好きになったきっかけである。父の職業を知ったのもその時だ。聞いた時は驚いた。今まで短気という事しか知らなかった父が、海の上を旅している張本人だったのだから。それからというもの、父の仕事を見送りに行くことが多くなった。

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