第47話 門出を祝う
ロイは静かに神殿の入口に立ち、長い修業の日々を振り返っていた。スターナイトの剣が静かに彼の手に収まり、まるで今までの戦いを見届けてきたかのように、重みと共に馴染む。3年間――その歳月が彼に与えたものは、単なる剣技や力だけではなかった。
「修業が....やっと終わった」
深く息を吸い込む。神殿での修業は全てを変えた。彼はここで自分の限界を何度も超え、肉体も精神も鍛え上げられた。だが、それでも神殿での時間は静かで、孤独との戦いでもあった。誰もいない神殿の中で、自分だけと向き合い続けることが、何よりも過酷な試練だったのだ。
「俺は、ここで強くなった……だけど、これからも生き方は変わらない」
3年間、この場所に守られ、育まれた自分が、いよいよ外の世界に戻る時が来た。彼の胸の中には、すでに次の旅に向けた決意が固まっていたのだ。
「神殿……今まで、本当にありがとう」
振り返って神殿を見上げる。古びた石造りの建物は、彼にとって第二の故郷のように思う。孤独で過酷な修業の日々も、今となっては自分の一部となっていた。だが、もうこの場所に留まる必要はない。次なる道が彼を呼んでいるのだ。
(俺には、まだやるべきことがある・・)
足を前へと進め、神殿の扉が静かに閉じられると、彼はついにこの場所を後にすることとなった。その時、微かな声が聞こえたのだ。
【いってらっしゃい】
ロイは、ふと神殿を振り返るが、扉が閉まった神殿だけである。だけど、神殿に魂があるとしたら、彼をずっと見守っていてくれたのかもしれない。
それから、マカラート王国に戻るため、魔の森へと足を踏み入れていくが、最初はこの森が彼にとって恐怖の象徴だった。だが今では違う。この森でどんなモンスターが待ち構えていようと、彼にはもはや恐れるものはない。
「俺は、神殿で学んだことを……すべて生かす」
森の中は暗く、鬱蒼うっそうとした木々が視界を遮さえぎっていたが、足取りは力強く、迷いはなかった。剣を手にし、静かに歩を進める彼の姿は、まさに《頂の剣士》そのものだった。スターナイトが、彼の進む道を照らし、まるで導いているかのようだった。
(スターナイトと共に……人生を切り開く)
ロイは剣を軽く握りしめ、森の中を進んでいく。木々の間から時折視線を感じることもあったが、彼は一切立ち止まることなく歩を進める。かつてはモンスターたちが徘徊し、恐怖に怯えたこの森も、今では彼にとってはただの通過点に過ぎない。
彼の中で確固たる自信があるのだ。神殿での修業を経て、彼は肉体だけでなく精神も鍛え上げられた。今や彼には、どんな敵が現れようとも倒せるという確信がある。
森の中を進むうちに、ロイはかつて逃げ込んだ谷底の崖を目にした。あの時、スネークに追い詰められ、命を懸けて逃げた場所――だが、今ではその場所も彼にとっては過去の一コマに過ぎない。
(俺は、もうあの頃の俺じゃない)
静かに立ち止まり、あの時の自分は、恐怖と絶望に打ちひしがれていた。だが、今ではその感情は遠い昔の出来事のように思える。
「もう、恐れるものは何もない」
そう呟きながら、彼は崖の淵に立ち、下を見下ろした。かつては命の危険を感じたこの場所も、今のロイにとってはただの過去の一部に過ぎなかった。彼の中には、これから先の未知の世界へと進んでいくための確固たる決意がある。
「ここで……あの時の俺は死んだんだ」
ロイは自分自身にそう告げるように言葉を放ち、再び歩き始めた。過去を振り返ることはない。彼の歩みは前進あるのみであり、未来を切り開くための力はすでにその手に握られていて、今や自分を強くしてくれたことを改めて実感した。あの逃げ場のない状況でさえ、今の彼ならば立ち向かうことができるだろう。
魔の森を抜けるまでの道のりはまだ続くが、彼の心にはすでに次の目的地が見えていた。この森を抜けた先に待つ世界――そこには、彼がさらなる成長を遂げるための戦いが待っている。
魔の森を進み続けていると、夕闇が迫り、森全体が不気味な静寂に包まれていく。しかし、彼の足取りは決して止まらない。神殿での修業を終えた今、恐怖や不安といった感情は消え去り、彼の心にはただ強い決意だけ。
(この森を抜けたら……一旦、マカラート王国に戻らないとな)
3年間、神殿の中でただひたすらに強さを追求し、剣技と精神を鍛え上げてきた。
「この世界には、まだまだ俺が知らないものがあるんだよな」
森の中を進む中、突然風が強く吹き始め、木々がざわめき出した。ロイは足を止め、周囲を見渡した。風に乗って、かすかにモンスターの気配が漂ってきたのだ。
(……来たな)
すぐに剣を抜き、周囲を警戒した。森の中で風が強く吹き始めるのは、モンスターが近づいている証拠だ。彼は静かに息を整え、いつでも戦闘態勢に入れるように準備をする。
「誰が来ても、負ける気はしないな」
その言葉と同時に、森の奥から異様な気配が強まる。影のようなものが木々の間から姿を現し、ロイの前に立ちはだかった。それは、3年目前に絶望を味合わせられたスネークだった。
「3年ぶりだな...スネーク」
スネークは、警戒しながらも、咆哮上げながら、ロイに近づいてくる。
ロイは剣を構え、敵の動き見もせずに、修業の成果を試そうとしている。敵の動きは遅く感じられ、まるで時間が止まっているかのようだ。
それもそうだろう。彼はスネークよりも強い強敵を自身の力で、倒してきているのだから。
「スターナイト....行くぞ」
軽く剣を振り下ろすと、まるで風が通り抜けるかのように、スネークは一瞬で切り裂かれ、駒切になる。彼にとって、もうこの程度の敵は相手にならなかったのだ。神殿で培った力が、確実に彼をさらなる高みへと押し上げた。
「これが.......今の俺の力だ」
剣を収めたロイは、静かに息を吐く。敵を倒すことがもはや日常の一部となり、自分が持つ力を制御することが自然になっている。神殿での修業を経て、彼は自分の力を完全に使いこなすことができている。
「さて、マカラート王国までは、もう少しだな」
「さあ、行こう」
ロイは再び歩き出す。この森を抜け、マカラート王国に戻り、次なる冒険が彼を待っている。外の世界は、彼にとって未知の冒険に満ちている。ロイにとって、そんな新しい旅路を楽しみに、森を駆け抜けていくのだった。
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