第15話 苦しみの中

次の日も、鉱山での過酷な労働が続いている。

 ロイは鉱石を運びながら、体中の痛みと闘っていた。


 重いツルハシを振り続けるたびに、手の豆が裂け、血が滲む。

「こんな生活、もう嫌だ…」と心の中で何度も叫ぶ。


「ロイ、大丈夫?」


 シアが声をかけてきた。

 僕は顔を上げ、シアの瞳を見つめると、シアの目には疲れが見えるが、

 その奥には力強い光が宿っている。


「僕たち、きっとここを出られるよ。諦めないで」


 シアの言葉に、僕は少しだけ勇気をもらう。

 シアと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がした。


「ありがとう、シア。君がいてくれてよかった」


 僕がそう言うと、シアは照れくさそうに笑った。


「僕もさ、ロイがいるから頑張れるんだ」


 その言葉が、僕の心を温める。

 シアの存在が、僕にとって大きな支えになっているのだ。


 昼食の時間になると、二人は洞窟の片隅に座り、配られた硬いパンをかじる。

 口に入れたパンをゆっくりと噛みしめ、シアを横目で見た。


「シア、どうしてこんなに強いんだ?」


 僕の問いに、シアは少し考え込むようにしてから答えた。


「僕には、守りたいものがあるんだ。

 だから、どんなに辛くても負けたくないんだ」


「守りたいもの?」


「そう。大切なもの…いつか、きっと話すよ」


 シアの言葉に、ロイは何かを感じ取り、それ以上は何も聞かなかったが、

 その言葉にシアへの尊敬と信頼が深まっていた。


「また今日も頑張ろう」


 シアが立ち上がり、僕に手を差し出した。


「そうだね、僕たちならできる」


 シアの手を握り、共に立ち上がった。

 二人の間には絆ができつつあり、相互二人そうごふたりに力を与えてくれる。


 午後の作業が始まると、再び重いツルハシを振り下ろし、石を砕く音が響いた。

 ロイとシアはお互いに励まし合いながら、絶え間なく働き続け、

 鉱山の厳しい環境の中でも、二人の友情は確実に強まっていた。


「僕たち、絶対にここを出よう」


 シアの言葉が、心に深く刻まれる。

 いつか、この地獄のような鉱山から抜け出し、自由を手に入れる日を夢見て、

 ロイはその日をまた乗り越えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る