好感度逆転したら嫌われたんだが?!

Old Voice

第1話 プロローグ

今作品は心安めに書いております

昂るハートとインスピレーションが産まれた時に衝動的に書かれます。以上を認識した上で

お読みください



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






ある冒険者学校の一室で少年は腰を抜かして倒れていた、それを囲むは3人の少女。


3人の少女が一人の少年に向かって罵詈雑言を投げかけている。


一人の少女は魔法使いの証とも言えるローブに身を包み、手には魔法石が先端に着いた杖を握っている。金色の髪は肩までの伸ばされており高貴な印象が見受けられる。しかし少女は少年のことを軽蔑した視線を向けて罵倒する


「本当に気色悪いわ、早く目の前から消えてくれないかしら?」


それに追従するのは剣士の少女


その少女は和服と呼ばれる東洋の衣類に身を包み、腰には刀と呼ばれる片刃の剣を持っている。黒髪を後ろで括ったポニーテールだ。しかし鋭くも美しい瞳は、細められて少年を親の仇を見るかのように睨み剣先を向けている。


「誠に汚らわしい下民でござるな、拙者達の前に顔を出すことも憚られようぞ、これ以上拙者達に近づくのであれば斬り殺してやる」


それを見ていた斥候の少女も賛同する


その少女は腰に短剣を携えて、身軽な服装から

俊敏な動きが予想できる。茶髪は短め切り揃えられた短髪で、無表情のため物静かな様子が伺える。


「気色悪いわ、いつもその薄気味悪い顔が気に食わなかったのさっさと消えて」


少年の頬から冷や汗が垂れて、心の中で叫ぶ。


(前より悪化してるんだが!?)


理由は前日まで遡る


◇◇◇


俺は冒険者学校3年生のキール!

元気溌剌な僧侶見習いだぜ!

この学校では2年生になったらパーティを作るだ!!パーティを作ってからはや1年、最初ばギクシャクしてたりギスギスしてたパーティも今では仲良くなったぜ!俺以外!何故だか俺にだけ態度がキツイんだよなぁ・・・


今日だって魔法学の実技の時にパーティメンバーのサーシャに魔法のコツを教えてもらおうと話しかけたら


「きゅ、急に話しかけてこないでよ!!」


って怒られちゃったぜ。他にも冒険学の実習の時にパーティメンバーの剣士、ヒサメに雑談のつもりで軽く声をかけたら


「近くに来られると困るでござるぅ!!」って


距離を取られたし、他にもパーティメンバーの斥候、ヨルにたまたま食堂であって話しかけようと近づいたら


「顔を近づけられるのはちょっと・・・!」

ってナチュラルに引かれちゃったんだぜ


もう俺たち1年もパーティ組んでるのにこんなに仲が良くないと卒業試験を乗り越えられないぜ・・・


キールは失意の中、帰路に着いていると道端に煌めく何かが落ちていることに気づいた。


「ん?なにか落ちてる?」


キールは煌めくそれを拾い上げてまじまじと見る、それはコインのネックレスである。


「落し物かな?でもコイン1枚のネックレスってあんま見たことないなぁ・・?」


キールが不思議そうに持っていると

(ん?おい!聞こえるか!?俺様の声が聞こえるか!?)


突然、声が聞こえた


「な、なんだ!?何が起こってるんだ!?」


キールは周りを見渡すも自分以外だれもおらず

空からは夕日が爛々と場を照らすだけだ


(そっちじゃねぇって!お前が今手に持ってるそれだよ!それ!)


「え!?こ、このネックレスなのか!?」


キールはまじまじとネックレスを見る

ネックレスはコインが1枚の簡素なものだが

よく見るとコインには紋様が掘られており、

普通の品でない事が分かる


「な、なにこれ!?俺呪われちゃったの!?」


キールは慌ててネックレスを投げようとするも


(ちょちょ!待てなよ!俺はアーティファクトだ!)


その言葉を聞き手を止める


「あ、古代具アーティファクト・・?」


古代具アーティファクトとは、はるか昔に存在した物だが現在では解明できていない技術で造られており、それらはとてつもない能力を秘めていると言われる。


(そうだ!俺はアーティファクトの中でも超超超!激レアな!意志を持つアーティファクトだ!)


その時、脳裏に浮かんだのは子供でも知る話

皆が親から聞かされる冒険譚、勇者の事だ


数多の洗練された仲間を連れて、艱難辛苦を乗り越えて残虐な魔族を打ち倒し世界に平和をもたらした話はあまりにも有名だ


その話の一説に勇者の手には意志を持つ聖剣があったと記されている。


「なんで、そんな古代具アーティファクトが道端に・・・」


キールは疑問や驚愕がごった返しになった頭の中から質問を捻りだす


(ふふ!それはだな!・・・・・)


「それは・・・」


(わすれた!!)


「わすれた!?」


キールはその惚け具合に懐疑心を持つ


(まぁ!待て待て!俺様の能力はすんごいんだぜ!?アーティファクトつったら能力に期待してもらわねぇとな!)


その言葉にキールは胸を躍らせる、古代具アーティファクトなんて一般市民上がりである自分が見ることも無い代物だ、その中でも最上位の聖剣と同じく意思のある古代具アーティファクトの能力とは期待が高まって仕方がない。


「そ、それで能力とはいったい!」


(それはだな!好感度を逆転する能力だ!!)


その回答にキールは困惑する


「こ、好感度をぎゃくてん?」


それもそのはず、あの聖剣と同じ位にあるならば

ものすごい魔力が宿ったり、ものすんごい魔法が使えるようになったりなどのものすんごい能力を期待していたが、それが〈好感度を逆転させる能力〉と言われるとなんという誤算


「うーん?具体的に何ができるんだよ?」


キールは戦うことの出来る能力を考えていたため、突拍子もなく出てきた〈好感度を逆転させる能力〉に想像が回らない


(そりゃあ!簡単だぜ!嫌われている相手に使えば自分の事を大好きになっちまうんだかな!!)


それを聞いた時、キールは今日の出来事がフラッシュバックし、ひとつの事を思いつく。


「なぁ・・それってどうやるんだ?」


(なに?知りたいか!!それはだな!・・)


◇◇◇


次の日


キールは放課後の空き教室にサーシャ、ヒサメ、ヨルをそれぞれ呼び出した


3人は互いに目を合わせて落胆している、しかし浮かれているキールはその事に気づかなかった


浮かれたキール見ている3人は困惑しつつも代表してサーシャが声をかける


「はぁ・・それで、私たちが呼ばれた理由ってなんなの?」


ため息混じりにそう問うサーシャにキールは自信満々に言う


「それはだな!まず!!このネックレスを見て欲しい!」


そうして高らかに昨日のネックレスを掲げる

それを見た3人の内、サーシャは呆れつつも聞く


「で、それがなんなのよ」


「まぁまぁ!落ち着いて!しゃあこのネックレスに着いているコインをよく見てて」


3人は首を少し傾げて疑問に思いつつもコインを見る、そして幾許かの静寂が訪れて

時計の針の音が響く


カチッカチッカチッ


ポーン


長身が6の所を指したところでキールは呪文を唱える


「オラ!逆転!」


ホワワワワン


不思議な音波のような物がコインから発生して3人に命中する


そして3人とも瞳が虚ろになる


(お!どうやら成功したみたいだぜ!キール)


(ありがとうございます!アティさん!)


昨日、使い方の講座や情報を聞いて様々な事が分かった。まずネックレスを付けていると思考で会話することが出来ること。2つ目がネックレスのコインを相手によく見させて、「オラ!逆転!」と呪文を唱えると能力を使える事、最後に

このアティさんは記憶がほとんどないことだ。


アティも手応えがあったのかしめしめ、と

顔をニヤつかせているのだろうと予想できる。


そして段々と3人の瞳が正気に戻り始める。


「やぁ!みんな!気分はどうだっ!?」


キールは無言でサーシャに突き飛ばされる


「え?」


キールは突然の出来事に声を漏らす


「気分?最悪よ、なんで空き教室であんたの顔なんて見てんのかしら、ほんっとに気色悪い」


サーシャが口を開けば出てくるのは罵詈雑言のみ


それは他の3人も同様である


(あれ?これ、前より悪化してんだが!?)


話は冒頭に戻る


◇◇◇


そして3人は言うことを思う存分言い残した後に

空き教室から帰って行った。

尻もちをつき動けないキールは不安を胸に

アティに聞く


「あ、あてぃさんこれはいったい?!」


キールはそう聞かずに居られなかった

自分の想像であれば、毛嫌いされている自分を

好き!とまでは行かずとも友達ぐらいの仲良し具合になるかなぁ、なんて考えていたのに

実際にやってみれば罵詈雑言の嵐


あまりにも想像と現実が乖離しすぎて、現状が理解できない


(いやぁ、まじでなんでなの?)


アティも完全に謎である

能力は間違いなく発動したはずなのに逆転する所か悪化するなんて考えてもいなかった


「アティさん!これどうするんですか!?前の方がマシなんじゃないですか!?」


キールは縋るように言うも


(いやぁ、これあと1週間は治らんと思うぞ、普通はかけ直しで持続させるから1週間とか関係ないんだが、すぐに解くのは考えてないなぁ)


その言葉にキールは絶望する


「1週間て・・・卒業試験1週間後なんですけど」


キールの受難は始まったばかりだ

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