奇譚集積場
洲央
第1話:笑顔おじさん
ここ最近ずっと見る夢について書く。
スマホをこちらに向けてニヤニヤと不気味な笑顔を浮かべる見知らぬおじさんが夢に出てくる。
彼はやせ形で身長は160㎝半ば、茶色いTシャツにベージュのズボンを穿いていて、これといって特徴のない髪型と顔つきの50代くらいの男性だ。
ただ、いつもニヤニヤとこちらを嘲るような、見下すような、厭~な笑顔を浮かべている。
その人が、私にスマホを向けながら、「被災者で~す」と茶化すように言いつつ、2メートルくらいの距離を保って撮影してくるのだ。
やめさせようと怒って近づいていくと、「まあまあ」とへらへら言いながら身を引くのだが、スマホは構え続けているし、厭な笑顔もなくならない。
むしろ、嫌がる私を見てもっと嬉しそうに口元を歪めるのだ。
被災者というのも何のことか分からないし、彼が撮影している目的も分からない。
ただただ不快で、厭な気持になる。
夢ではいつも、私たちは小学生の頃に暮らしていたアパートの駐車場にいる。
おじさんから逃げるようにアパートに入り、三階にある自室に向かって階段を駆け上がる。
部屋にはいる時におじさんが来ないよう、私はものすごく急ぐ。
だが、おじさんは急がず、しかし私にある程度危機感を感じさせるくらいの速度で少し遅れてやって来る。
部屋に入ってドアのカギをガチャッとかけたタイミングで、おじさんは必ずドアノブをガチャガチャと激しく鳴らす。
さらにはピンポンを一定の感覚で連打する。
私が覗き穴からおそるおそる覗くと、「わかっているよ」とでも言わんばかりの笑顔でスマホを穴に向けてくる。
そして、「アピールアピールアピール!」と連呼しながら、グリグリグリグリと、覗き穴の周辺を棒か何かで何度も丸く擦るのだ。
その棒は鉛筆のようなものらしく、おじさんが去ってから覗き穴の周囲を見ると、真っ黒い線が何周もしている。
私は次こそ警察を呼ぶべきかどうか迷い、夢はそのままループする。
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これが「笑顔おじさん」の夢である。
この話を読んで、もし夢に「笑顔おじさん」やその亜種が出たら、どんな感じだったか作者まで教えてほしい。
また、所詮夢なのだから気にすることではないが、最後のぐるぐる線については身に覚えがある。
おそらくこれは映画『きみの色』を見た時に冒頭で「STORY inc.」の画像が出てきた際、「O」部分がこうしてぐるぐるで表現されていたものに影響されているのだろう。
笑顔おじさんの夢を初めて見たのも、『きみの色』を初めて見た日の夜だった。
ただ、なぜこの夢がその後も続いているのかだけは分からない。
次こそ警察に通報が間に合ってほしいものである。
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