先生をからかってはいけません!
しろ
第1話 新しい生徒
ステージに上がると、夢か現実かいつもわからなくなる。
みんなが俺の名前を呼んでくれるし、ファンサで手を振っただけで会場が盛り上がる。
『好き』や『約束』といった言葉を発すると、殺傷能力があるのかと思えるほどの歓声があがる。
メンバーカラーの5色のサイリウムが輝いているのが正直に言うと眩しくて、でもそれが嬉しい。
五万か、十万か、はたまたそれ以上か。数えきれない人が俺を見てくれている。
ただ、俺にはそれはどうでもよかった。たった一人。彼女がいれば。
***
「それじゃ、坂田さん。明日の午後5時半からお願いします。」
上司の飯田さんが電話を切ったことを確認し、私はカレンダーに予定を書き込む。
明日から新しい生徒か!
大学二年生の坂田菜々美は学費や生活費を賄うために家庭教師のアルバイトをしていた。自身がトーダイ生というブランド力があってか、生徒に恵まれているのか、去年担当した四人の生徒も一人はトーダイ、もう一人はワセダに合格した。(私の教え方が上手いのだと思いたい。)
家庭教師三年目にして、それなりの実績が評価され待遇や給料はだいぶ良い。
そして明日から、新しい生徒を担当することが決まった。
生徒の志望大学や詳細はあまり聞かされておらず当日話し合うように指示されたが、先方が私を指名したようなので行くしかない。
今年もバシバシ実績を稼いで、少しでも貯金を増やしてやる!
翌日
指示された住所は都内のタワーマンションだった。
二重ロックの高級タワマンで、金持ちの子供だと確信する。これはもしかして、海外進学か?と期待しながら依頼された510号室へ向かった。
気を引き締めてインターフォンを押し、戦闘体制に入った。
「家庭教師の坂田です。」
「はーい。」
感じの良い女性が私を迎えてくれるのであった。
上原と名乗るその女性は、落ち着いた綺麗な女性だった。
生活感のない整ったリビングに案内され、私に依頼の詳細を告げられた。
「うちの息子を、今年中に高校卒業させてほしいんです。」
ほお。浪人させるなということか。
「どのような進路を?」
「彼、留年危機なんです。今年中に高校卒業しなきゃマズいのに。」
ほぉ?親がこれなら、子も留年危機かもしれないが。
「つまり…?」
そう尋ねた瞬間にリビングに青年が入ってくるのであった。
…?なんか、見覚えのある少年だ。身長が高くて、顔がシュッとしていて、目元がイケメン。
「初めまして。上原
聞いたことがある名前だ。もしかして。
「一応、エナジークルーのセンターやってます。」
担当生徒は、未来の国民的アイドルグループのセンターになる少年でした。
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