4、夜明け前

 コンテナだけの殺風景な部屋。この状態だと、引っ越してきたのか、引っ越すのか分からないな。


 入学式、入社式、桜、4月はどうもこうして慌ただしいのか。


 これから一人。仕事に関するものを、とりあえず出しておいて。後々必要そうなものは、直接コンテナからでいいな。


 コンテナをテーブル代わりにするのって、どうぶつの村へ引っ越すあのゲームっぽさがある。

 あの主人公は本当に何もない状態でのスタートだけど、こっちは仕事が決まってるし、実家から物を持ってきてる分、イージーかな。


 散らかってても一人だから、怒られない。煩くない。

 何時に何をしようが、自由。


 窓を開けてベランダ。明るくなるには、1日が始まるには少し早い。

 手首につけていた通信機器に連絡が入った。人差し指、スライド、動きを読み取り連絡が再生される。

 3D映像だった。母さんから。〝規則正しい生活をすること、それだけは守ってね〟 だってさ。母さんの声が広がった。


 太陽が覗いてきた。


 コンテナだらけの部屋。俺がやんなきゃ一向に片付かない部屋。


「ちゃんとやるって」


 こんな口答えも、今は届かない。


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