第25話:8月20日(木)お母さんとクッキーを作りました
ラジオ体操に行ったらセミが鳴いていないことに気が付きました。
キャンプ場では鳴いていたけれど、八蛇町ではもうセミの季節が終わっちゃったのかもしれません。
セミは何年も土の中で成長して、大人になったら地面に出てきます。
それから一週間くらいで死んじゃいます。
図書館で読んだ本には一か月近く生きることもあるって書いてあったけど、とにかく夏が終わる前に死んじゃうってことです。
セミが鳴くのは交尾の相手を見つけるためだけど、それが終わったらもう死ぬしかありません。
木から落ちてひっくり返っているセミが、水上神社にもたくさんいました。
中には生きているのもいたけど、気力が残っていない感じがします。
セミを見ていると生きるということについて考えてしまいます。
人間はセミみたいにはっきりと目的をもって生きているわけじゃないと思います。
でも、みんな幸せになりたいと願っているんじゃないでしょうか。
私も、家族や友達も、みんな幸せに生きられればいいなあって思います。
それにしても、もうセミの声が聞こえないのは何だかさびしいです。
もうすぐ夏が終わります。
午前中は勉強をして、ドリルをぜんぶやりました。
何だか身体が軽くなったような気がします。
ラジオ体操の時に聞いたら、さっちゃんと巴ちゃんは二人ともこれからラストスパートだそうです。
旅行とかに行っててぜんぜん宿題が終わってないって言ってました。
スイッチでチャットしたら、ひまりちゃんはあと少し残っていて、文乃ちゃんは夏休みの最初の一週間でぜんぶ終わらせたそうです。
絵理ちゃんは先週海外旅行に行く前にぜんぶ終わらせたって言ってました。
お父さんから終わらせないと海外につれて行かないって言われて必死にやったって。
お昼にお母さんが帰ってきたのでソーメンを食べました。
お姉ちゃんは午後になるとプールへ行ってしまいました。
私の誕生日にデパートでちゃっかり新しい水着を買ってもらっていたのです。
ご飯の後、家庭科の授業で作ったカエルのアップリケつきのエプロンをつけてお菓子作りを開始しました。
何を作ろうかお母さんと相談して、失敗が少ないラングドシャを作ることにしました。
使うのはバター、薄力粉、粉糖、卵白です。
まずは手を洗って材料を量ります。
バターは昨日道の駅で買ってきたものを四十グラムバターナイフで切り取って調整します。
粉糖と薄力粉も四十グラム、卵白は一つ分です。
お母さんはこの間にオーブンの百七十度に余熱してくれています。
お菓子作りではこういう同時進行が大事になるのです。
お湯の上に浮かせたボールの熱でやわらかくしたバターを粉糖と混ぜます。
バニラエッセンスを少々加えたら、そこに卵白を加えてさらに混ぜます。
卵白は三、四回に分けて入れ、分離しないようにその都度しっかりと混ぜます。
最後に薄力粉を加えて混ぜまくります。
お菓子作りは混ぜる工程が多くて、かなりの力仕事です。
お菓子職人さんは男性が多いらしいのですが、分かる気がします。
お母さんは「泡立て器使ってもいいのよ?」と電動泡立て器を机の上に出してきました。
だけど、ラングドシャくらいならやれるって言ってがんばってヘラを使ってやりました。
キッチンペーパーの上に円を描くようにしぼって並べたら、十二分焼いて完成です。
とう明な袋に入れてラッピングしたらお店の商品みたいになりました。
これだけでも家庭科の宿題は完了だけど、お母さんが「もう一品作ろっか」とココアクッキーを出してきました。
「ココアクッキーマフィン。割と簡単だけどおいしいんだよ」
お母さんは手作りのお料理手帳・お菓子編のページを開いて私に見せてくれました。
「やってみたい!」
「よぉし、始めよう!」
まずはオーブンを百八十度に余熱します。
私は市販のココアクッキーを半分に折って、四枚くらいは粉々にしました。
バターを八十グラム溶かして、砂糖六十グラム、とき卵ニ個、牛乳百ミリリットルを順番に混ぜながら入れていきます。
そこにホットケーキミックス三百グラムと砕いたクッキーを入れて切る感じで混ぜます。
型に油をぬったら生地を流し込んで、半分にしたクッキーを二、三枚突きさします。
あとは二十分焼けば完成です。
こんがりと色がついて、やわらかいマフィン部分とサクサクのクッキー部分がちょうどいい感じに焼けました。
お姉ちゃんがイギリスで買ってきた紅茶のあまりをいれて、お母さんといっしょにティタイムを楽しみます。
キャンプであまったマシュマロも焼いて、とかしたミルクチョコレートでフォンデュしました。
ぜったい太っちゃうねって二人で話しながら、お腹いっぱいになるまで食べちゃいました。
お父さんとお姉ちゃんの分を確保したら、あとはラッピングしてお友達に配ります。
ビニールにヒモやリボン、シールでかわいい飾りをつけて、あて名を小さなカードに書きました。
みんな喜んでくれるといいなぁと思います。
その後は夕食までピアノをひいていました。
ちょっとひかないとすぐ下手になるので、できるだけ毎日ひきたいと思います。
ご飯の後、お父さんとお姉ちゃんにお菓子を見せたら「おいしい」ってたくさん食べてくれました。
「今度私ともチーズケーキ作ろうね」ってお姉ちゃんと約束したので楽しみです。
明日は文乃ちゃんと図書館で会う約束をしています。
新しく買ってもらったお洋服を着ていこうと思います。
おやすみなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます